1月27日
イタリアの作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディが没した日(1901年1月27日)。同じ年に生まれたリヒャルト・ワーグナーと、共にオペラの世界を拡張し、後世に残り続ける「名作」を作曲した。ヴェルディは《マクベス》、《リゴレット》、《アイーダ》、《オテロ》、《ファルスタッフ》など、現代でもオペラ公演で演奏機会が非常に多い、人気作品である。
Il Trovatore
前略。
1851年に『リゴレット』を初演、成功させた38歳のヴェルディの作曲の筆はそこからしばらく止まる。1839年の『オベルト』以来、年間1作以上のペースで作曲を続けてきた彼にとっては珍しい事態だった。サンターガタでの農園購入とその経営など、作曲以外の雑事に忙殺されていたのも事実だったが、作曲家としてどうにかこれからの暮らしには困らない収入も得て、この頃の彼はどこの劇場の委嘱も受けず、自ら選んだ題材を好きなだけ時間をかけてオペラ化することができる大家ならではの作曲作法が可能となっていた。そしてそうした自己の選択による作品が、この『イル・トロヴァトーレ』である。
歌劇『イル・トロヴァトーレ』の原作『エル・トロバドール』はスペインの劇作家グティエレスによって書かれ、1836年にマドリードで初演された舞台劇であった。中世の騎士物語、男女の恋愛、ジプシー女の呪い、といった雑多なテーマを盛り込んだこの複雑な舞台劇をヴェルディがどうやって知ったのか、今日でもはっきりしていない。初演は、ヴェルディのそれまでのどのオペラと比べても大成功といって良いものだった。世界各都市での再演も早く、パリ(イタリア座でのイタリア語上演)は1854年、ロンドンとニューヨークが1855年である。またフランス語化しグランド・オペラ様式化した『ル・トルヴェール』(Le Trouvère)は1856年にオペラ座で上演されている。ヴェルディ自身はのちに「西インド諸島でもアフリカの真ん中でも、私の『イル・トロヴァトーレ』を聴くことはできます」と豪語している。
歌劇『イル・トロヴァトーレ』の原作『エル・トロバドール』はスペインの劇作家グティエレスによって書かれ、1836年にマドリードで初演された舞台劇であった。中世の騎士物語、男女の恋愛、ジプシー女の呪い、といった雑多なテーマを盛り込んだこの複雑な舞台劇をヴェルディがどうやって知ったのか、今日でもはっきりしていない。初演は、ヴェルディのそれまでのどのオペラと比べても大成功といって良いものだった。世界各都市での再演も早く、パリ(イタリア座でのイタリア語上演)は1854年、ロンドンとニューヨークが1855年である。またフランス語化しグランド・オペラ様式化した『ル・トルヴェール』(Le Trouvère)は1856年にオペラ座で上演されている。ヴェルディ自身はのちに「西インド諸島でもアフリカの真ん中でも、私の『イル・トロヴァトーレ』を聴くことはできます」と豪語している。
本盤は1976年9月ロンドン、キングズウェイ・ホール録音。70年代のデッカ契約歌手のオールスター・キャストで録音された歌劇『イル・トロヴァトーレ』はバレエ付きオリジナル版ですが、この時代の記録として貴重なものです。やはり聴きどころは全盛期のパヴァロッティ。リチャード・ボニングの奥様ジョーン・サザーランドも全盛期は60年代と言われますが、まだまだ素晴らしい声を聴かせてくれます。
そして、ルチアーノ・パヴァロッティの歌唱はファンの期待を裏切ることがないだろう。タイトル・ロールであるマンリーコ役の最大の聴かせどころである第3幕第2場は、パヴァロッティの独壇場であり、マンリーコのロマンツァから幕切れのカヴァレッタまで一気に聴かせてしまう。3大テノールと言われるパヴァロッティを聴くには、迷わずにこのオペラ全曲盤をお薦めしたい。「キング・オブ・ハイC」の別名を採るパヴァロッティならではの歌唱である。
様様な録音のある中で、独特の様式感を感じる演奏だった。往年のオペラ劇場で喝さいを浴びるプリマドンナやウォーモの演奏はきっとこうだったのだろうとしばし陶酔の世界に浸ることができる面白い演奏だ。
そして、ルチアーノ・パヴァロッティの歌唱はファンの期待を裏切ることがないだろう。タイトル・ロールであるマンリーコ役の最大の聴かせどころである第3幕第2場は、パヴァロッティの独壇場であり、マンリーコのロマンツァから幕切れのカヴァレッタまで一気に聴かせてしまう。3大テノールと言われるパヴァロッティを聴くには、迷わずにこのオペラ全曲盤をお薦めしたい。「キング・オブ・ハイC」の別名を採るパヴァロッティならではの歌唱である。
様様な録音のある中で、独特の様式感を感じる演奏だった。往年のオペラ劇場で喝さいを浴びるプリマドンナやウォーモの演奏はきっとこうだったのだろうとしばし陶酔の世界に浸ることができる面白い演奏だ。
Bonynge, National Philharmonic Orchestra, Pavarotti, Sutherland, Horne, Wixell, Ghiaurov – Verdi, Il Trovatore
デッカ契約歌手のオールスター・キャスト
第一級の人気作品にしては主役たちの描き方も不徹底なところがあり、様々な声域の名歌手を揃えなければならない。その点、豪華な歌手時代の貴重な名録音です。
「マリア・カラスのヴェルディ・ヒロイン」に25日朝に『若い時は理解し難いものでしたが、時代を超えてオーディオ装置と思考の変化で、最近やっと良さが解るようになりました。』とメッセージを受けましたが、カラスが圧倒的なディーヴァとしてベルカントの多くを復活させた試み。それでも、ロッシーニの復興がクラウディオ・アバド指揮による一連の録音ではじまるまで待たなくてはいけませんでした。
ベッリーニのオペラ「ノルマ」で圧倒的な歌唱を残したカラスであっても、ベッリーニに関しては原典に遡っての検証はほとんど行われていなかったこと。上演やレコーディングも復興というよりも、修復、あるいは再構築といったものでした。
さて、ジョーン・サザーランドもポスト・カラスの一人であり、カラスが取り組めなかったものへにも食指を伸ばした一人。そして何しろ、リチャード・ボニングはグノーのオペラ「ファウスト」の録音が出世作となった指揮者です。カラスの劇的な役柄との一体感。それは、何人をも納得させるそれでしたが、サザーランドもモンセラート・カバリエも強固な声であっても、そうした強さではなく、もっと声楽的な美しさといった方面を追求していきました。
特に高音の魅力。カラスにとっては「ノルマ」、プッチーニのオペラ「トスカ」があり、サザーランドにはヘンデルのオペラ「セミラーミデ」、そして、本盤でも共演したマリリン・ホーンもまた大いなる誤解を受けた歌手が集っています。
1926年生まれのサザーランド、それはカラスとは3歳しか違わず、活動期間の驚異的な長さ、結局、オペラにしろ、しばし指摘された歌詞の分かりにくさは、歌のフォルムを優先するというところからきたものでしたし、まず突出した能力の高さは残された録音だけを聴いても分かるものです。
1853年にローマのアポロ劇場で初演されたヴェルディのオペラ『イル・トロヴァトーレ』は、このあとに書かれた『椿姫』とまではいかないにしても、ヴェルディの人気オペラのひとつです。ただし第一級の作品にしては台本が複雑な15世紀のスペインの因縁話で、主役たちの人間関係の描き方も不徹底なところがあるのと、その主役にさまざまな声域の名歌手を揃えなければならないという点で、なかなか優れた舞台や録音が出てきません。
その点、サザーランド、ニコライ・ギャウロフなど豪華な顔ぶれと、サザーランドの夫君ボニングの精妙な指揮によった本アルバムは、この時代の記録として貴重なものです。1970年代のデッカ契約歌手のオールスター・キャストで録音された『イル・トロヴァトーレ』ですが、やはり聴きどころは全盛期のルチアーノ・パヴァロッティ。ボニングの奥様サザーランドも全盛期は60年代と言われますが、まだまだ素晴らしい声を聴かせてくれます。加えて、バレエ付きのオリジナル版での録音。ボニングの魅力はこうした作品をオリジナル版で演奏するこだわりにある。
ベッリーニのオペラ「ノルマ」で圧倒的な歌唱を残したカラスであっても、ベッリーニに関しては原典に遡っての検証はほとんど行われていなかったこと。上演やレコーディングも復興というよりも、修復、あるいは再構築といったものでした。
さて、ジョーン・サザーランドもポスト・カラスの一人であり、カラスが取り組めなかったものへにも食指を伸ばした一人。そして何しろ、リチャード・ボニングはグノーのオペラ「ファウスト」の録音が出世作となった指揮者です。カラスの劇的な役柄との一体感。それは、何人をも納得させるそれでしたが、サザーランドもモンセラート・カバリエも強固な声であっても、そうした強さではなく、もっと声楽的な美しさといった方面を追求していきました。
特に高音の魅力。カラスにとっては「ノルマ」、プッチーニのオペラ「トスカ」があり、サザーランドにはヘンデルのオペラ「セミラーミデ」、そして、本盤でも共演したマリリン・ホーンもまた大いなる誤解を受けた歌手が集っています。
1926年生まれのサザーランド、それはカラスとは3歳しか違わず、活動期間の驚異的な長さ、結局、オペラにしろ、しばし指摘された歌詞の分かりにくさは、歌のフォルムを優先するというところからきたものでしたし、まず突出した能力の高さは残された録音だけを聴いても分かるものです。
1853年にローマのアポロ劇場で初演されたヴェルディのオペラ『イル・トロヴァトーレ』は、このあとに書かれた『椿姫』とまではいかないにしても、ヴェルディの人気オペラのひとつです。ただし第一級の作品にしては台本が複雑な15世紀のスペインの因縁話で、主役たちの人間関係の描き方も不徹底なところがあるのと、その主役にさまざまな声域の名歌手を揃えなければならないという点で、なかなか優れた舞台や録音が出てきません。
その点、サザーランド、ニコライ・ギャウロフなど豪華な顔ぶれと、サザーランドの夫君ボニングの精妙な指揮によった本アルバムは、この時代の記録として貴重なものです。1970年代のデッカ契約歌手のオールスター・キャストで録音された『イル・トロヴァトーレ』ですが、やはり聴きどころは全盛期のルチアーノ・パヴァロッティ。ボニングの奥様サザーランドも全盛期は60年代と言われますが、まだまだ素晴らしい声を聴かせてくれます。加えて、バレエ付きのオリジナル版での録音。ボニングの魅力はこうした作品をオリジナル版で演奏するこだわりにある。
1970年代のデッカ契約歌手のオールスター・キャストで録音された『イル・トロヴァトーレ』。バレエ付きのオリジナル版での録音。
リチャード・ボニング(Richard Bonynge)は1930年、オーストラリアのシドニー生まれの指揮者。ジョーン・サザーランドとのおしどり夫婦は有名。
ドイツ系のレパートリーは中心には据えていないが、モーツァルトやウィンナオペレッタには比較的熱心であり、DECCAには夫人とのオペラ録音があります。 一方、バレエ音楽の指揮も得意としており、DECCAには珍しい曲目を含めて多数のバレエ音楽録音があります。
生地でピアノを学び、14歳でグリーグのピアノ協奏曲を弾いてデビュー、ピアニストへの道を歩んでいた。1950年に渡米、ロンドンの王立音楽院に留学、ロンドンでピアノのリサイタルを開く一方、同じオーストラリアから王立音楽院に留学していたソプラノ歌手、サザーランドとの出会いによってオペラの世界に魅せられ、指揮者に転向する。1954年、名ソプラノ歌手サザーランドと結婚、伴奏者兼ヴォイス・トレーナーを務めながら、ベル・カント・オペラの研究を続ける。この方面で忘れられていた作品の復活蘇演に尽力している。
またワーグナー・ソプラノを目指してソプラノ歌手を目指したサザーランドにコロラトゥーラに転向するよう助言したのもボニングで、ロイヤル・オペラ・ハウスが夫人サザーランドにワーグナーやリヒャルト・シュトラウス作品の役を与えようとした時、ボニングは歌劇場当局に抗議したという。
1962年にローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団で指揮デビュー、1963年にはヴァンクーバー歌劇場でグノーの歌劇『ファウスト』を振ってオペラ・デビュー、さらにその翌年にはロンドンのコヴェントガーデン王立歌劇場、国際的な活動を開始し、オペラ指揮者として不動の地位を獲得する。1970年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビュー、ヴァンクーバー歌劇場を経て、1976~85年シドニー歌劇場の音楽監督を務めた後、フリーとして活躍、バレエのスペシャリストとしても知られている。1975年にメトロポリタン歌劇場に帯同して初来日、1978年にもサザーランド夫人のリサイタルの伴奏指揮者として再来日している。
ドイツ系のレパートリーは中心には据えていないが、モーツァルトやウィンナオペレッタには比較的熱心であり、DECCAには夫人とのオペラ録音があります。 一方、バレエ音楽の指揮も得意としており、DECCAには珍しい曲目を含めて多数のバレエ音楽録音があります。
生地でピアノを学び、14歳でグリーグのピアノ協奏曲を弾いてデビュー、ピアニストへの道を歩んでいた。1950年に渡米、ロンドンの王立音楽院に留学、ロンドンでピアノのリサイタルを開く一方、同じオーストラリアから王立音楽院に留学していたソプラノ歌手、サザーランドとの出会いによってオペラの世界に魅せられ、指揮者に転向する。1954年、名ソプラノ歌手サザーランドと結婚、伴奏者兼ヴォイス・トレーナーを務めながら、ベル・カント・オペラの研究を続ける。この方面で忘れられていた作品の復活蘇演に尽力している。
またワーグナー・ソプラノを目指してソプラノ歌手を目指したサザーランドにコロラトゥーラに転向するよう助言したのもボニングで、ロイヤル・オペラ・ハウスが夫人サザーランドにワーグナーやリヒャルト・シュトラウス作品の役を与えようとした時、ボニングは歌劇場当局に抗議したという。
1962年にローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団で指揮デビュー、1963年にはヴァンクーバー歌劇場でグノーの歌劇『ファウスト』を振ってオペラ・デビュー、さらにその翌年にはロンドンのコヴェントガーデン王立歌劇場、国際的な活動を開始し、オペラ指揮者として不動の地位を獲得する。1970年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビュー、ヴァンクーバー歌劇場を経て、1976~85年シドニー歌劇場の音楽監督を務めた後、フリーとして活躍、バレエのスペシャリストとしても知られている。1975年にメトロポリタン歌劇場に帯同して初来日、1978年にもサザーランド夫人のリサイタルの伴奏指揮者として再来日している。
プロダクト・ディテール(オリジナル盤)
- レーベルDECCA
- 楽曲NL DECCA D82D 3 パヴァロッティ、サザーランド&ボニング ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」
- レコード番号D82D 3
- 作曲家ジュゼッペ・ヴェルディ
- 演奏者
- ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)
- ジョーン・サザーランド(ソプラノ)
- イングヴァール・ヴィクセル(バリトン)
- ニコライ・ギャウロフ(バス)
- マリリン・ホーン(メゾソプラノ)
- ノーマ・バローズ(ソプラノ)
- グラハム・クラーク(テノール)
- ロンドン歌劇場合唱団
- オーケストラナショナル・フィルハーモニック管弦楽団
- 指揮者リチャード・ボニング
- 録音年月1976年9月
- 録音場所ロンドン、キングズウェイ・ホール
- 録音チームレイ・ミンスハル&ケネス・ウィルキンソン、ジェームズ・ロック
- 録音種別STEREO
- 製盤国NL(オランダ)盤
- レーベル世代NARROW BAND ED4
- レコード枚数3枚組
- レコード重量120/120/120㌘
- スタンパー4G/3G 5G/5G 3G/3G
- 製造年1977
- カルテ(オペラ)Chorus Master – Terry Edwards, Concertmaster – Sidney Sax.UK,US盤はLONDON RECORDSからの発売(OSA-13124)。
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