9月14日

イタリア生まれのパリで活躍した作曲家、ケルビーニが生まれた日(1760年)。作曲の腕前はベートーヴェンが「当代一のオペラ作家」と評すほど。また教育面でもパリ音楽院の院長として指導に尽力した。対位法の教科書を執筆し、後にドビュッシーやラヴェルも同書で学び、現代でもなお多くの対位法学習者に支持されている。
34-20231

GB EMI ASD3073 リッカルド・ムーティ アンブロジアン・シンガーズ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 ケルビーニ レクイエム ニ短調

GB WHITE&BLACK STAMP DOG, STEREO 130㌘重量盤, Release 1975, Stamper 5/5.

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  • 1973年9月24,28,29日ロンドン、オール・セインツ教会、トゥーティングでのステレオ録音。

ベートーヴェンが「当代一のオペラ作家」と評した腕前。

 ―  ルイージ・ケルビーニは、イタリア出身のフランスの作曲家・音楽教師。本名はマリア・ルイージ・カルロ・ゼノービオ・サルヴァトーレ・ケルビーニ(Maria Luigi Carlo Zenobio Salvatore Cherubini)。ケルビーニの作品で1797年3月13日にパリで初演された『メデア』は最も有名なオペラでしたが、1820年代にジョアキーノ・ロッシーニの、華々しい声楽の技巧を凝らした輝かしく熱っぽいオペラがパリに上陸すると、古典的な厳粛さをそなえたケルビーニのオペラは、クリストフ・ヴィリバルト・グルックやガスパーレ・スポンティーニらの作品と同様に、時代遅れになった。
しかし『メデア』は、主役を演じられる歌手が間に合えば、時々復活することもある。現代でこの作品の復活に最も貢献したのは、1953年にヴィットリオ・グイの指揮で主役を演じたマリア・カラスのフィレンツェ公演とされる。
彼の理想主義や独立不羈といった気骨や、作品のとりわけ厳粛で高邁な性質のために、当時のパリ音楽院院長であったことが知られるくらいで、錚々たる音楽家からの尊敬を勝ち得た人物であることを想像するのは難しいかもしれません。しかし、モーツァルト、フォーレ、ヴェルディの作品を3大レクイエム、そこにケルビーニとベルリオーズを加えて5大レクイエムと呼んでいます。ロッシーニのフランス進出後にオペラ界での名声が凋落したため、今日さほど著名ではないものの、同時代の人々には高く評価され、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンはケルビーニを、当時の最もすぐれたオペラ作曲家と見なした。またケルビーニが執筆した『対位法とフーガ講座』は、フレデリック・ショパンやロベルト、クララ・シューマン夫妻も用いたほどであった。今日さほど著名ではないものの、ケルビーニはベートーヴェンとそれに続く時代のあいだ ― クロード・ドビュッシーやモーリス・ラヴェルでさえ例外ではありません。― に生きた、音楽の覇者です。
ルイジ・ケルビーニは、多くのオペラと宗教音楽を残しています。有名なのは、マリア・カラスがレパートリーとして、この作品の復活に貢献した「メデア」。ケルビーニのレクイエム2曲や荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)などの宗教音楽をリッカルド・ムーティは熱心に繰り返して録音しています。これだけ多くのケルビーニの曲をムーティが録音したのかは分かりませんが、自ら若いメンバーを対象にした「ケルビーニ管弦楽団」というオーケストラを設立していることから、ケルビーニが好きなのでしょう。モーツァルトやフォーレ、ブラームス、ヴェルディ、ベルリオーズは普段聴きに馴染んでいた頃、ムーティのケルビーニが初体験で、聴いた途端に一目惚れ。かけがえなくなりました。「レクイエム ハ短調」 と 「レクイエム ニ短調」 の2曲のレクイエムと「荘厳ミサ曲 ニ短調」 「荘厳ミサ曲 ホ長調」 「荘厳ミサ曲 ト長調」 の3曲のミサ・ソレムニス。ケルビーニのミサ曲は録音も少ないため、いずれも貴重な音源でしょう。男声合唱の「ニ短調レクイエム」は、モーツァルトと同調で興味を惹かれましたが、ケルビーニ自身の葬儀に演奏されています。ソロはなく合唱とオーケストラの演奏なので、合唱のための美しいハーモニーが多く聴けます。ムーティの演奏は、アンブロジアン・シンガーズのハーモニーを重要視した演奏で聴きごたえがあります。

ムーティとフィルハーモニア管弦楽団

リッカルド・ムーティ(Riccardo Muti)は専制君主的なマッチョのイメージがあるが、楽団の美点を十分に発揮させているのが好ましい。
このオーケストラの持つ弦の柔らかさと緻密なアンサンブル、マイルドな金管といった個性はヘルベルト・フォン・カラヤン以来の特徴でしたが、ムーティは在任期間、それらに磨きをかけ、さらに敏感なまでのリズム感と強靭なカンタービレを持ち込んで素晴らしい成果を残した。
それはオットー・クレンペラー亡き後にムーティを後任として選出した、当時のニューが付いていた頃のフィルハーモニア管弦楽団が、歌心あふれる演奏を取り戻す、思えば極めて大胆な決断を行ったものです。
本盤録音時35歳のムーティの熱血かつ、情熱と表現意欲に富んだオーケストラが見事。イギリスのオーケストラとは思えない、強靭なカンタービレと歌をニューが付いていたころのフィルハーモニア管から引き出してます。名門、フィルハーモニア管は当時は低迷期だったと言われるが、本盤では優れたパフォーマンスを示している。

なぜムーティがケルビーニにぞっこんなのか

現代の巨匠で、ケルビーニの蘇演にかけているのがナポリ生まれの熱血漢リッカルド・ムーティ。
イタリア全土から集まった30歳以下の若者で構成され、3年間のみ在籍が認められるユースオーケストラを組織して、ルイージ・ケルビーニ管弦楽団と命名するほど。ムーティがフィルハーモニア管弦楽団にいた頃から構想をあたためてきたというケルビーニ管の誕生は、自分のキャリアの中で得た知識を若い音楽家たちに伝えたいという、ムーティの意思と強い希望に着想を得たものである。
「特に、幸運にも一緒に仕事をしてこれた素晴らしいオーケストラと」築いてきたキャリアの中で得たものを、伝えたいというムーティの意思と希望である。1760年9月フィレンツェに生まれたケルビーニ(1760〜1842)の近年ますます注目を浴びる合唱作品を、ガブリエレ・フェッロの同志と共に、その音楽史上の重要性をアピールすることに情熱を注ぐムーティの思いをしっかり汲んだ、オーケストラの鉄壁なアンサンブルにもご注目。
この曲を指揮するムーティやフィルハーモニア管弦楽団・合唱団は、1981年時点で最早この曲の長所を如何なく引き出す事に成功している。

モーツァルトのレクイエムよりも優れている ― 男声合唱の太く力強いユニゾンがもたらす灼熱感。明快な主張を持つ管弦楽で、馥郁とした香りを放つ。

ルイ16世の処刑を悼んでミサを行うために、ルイ18世の命によって作曲された、厳粛で劇的な名曲『レクイエム ハ短調』(1816年)は、非常に大きな成功をおさめた。
ベートーヴェンは「もしレクィエムを書けと言われたら、ケルビーニの曲だけを手本にしただろう」と言ったというのは、よく知られているが、ベートーヴェンはこの作品をモーツァルトのレクイエムを凌ぐ作品と考えていたし、ハンス・フォン・ビューローはこの作品を「モーツァルトのレクイエムよりも優れている」と評価した。この作品はベートーヴェンだけでなく、エクトール・ベルリオーズ、シューマンやヨハネス・ブラームスにも絶賛されている。なお、ケルビーニ自身がヨーゼフ・ハイドンやヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの支持者だった。

モーツァルト、フォーレ、ヴェルディの3大レクイエムにケルビーニとベルリオーズを加えて5大レクイエム。

機会があれば、こちらも聞いていただきたい「レクイエム」です。

男声合唱と管弦楽のためのレクイエムである。女声は全く使われない。太く力強いユニゾンと、クライマックスで拡張されたコーラスがもたらす灼熱感。そしてぶっきらぼうだが、明確な主張を持つ管弦楽。何より、馥郁とした香を放ち続けながら、うねり、流れ、そして高みでトゥッティによって放たれる、大いなる「祈り」の想い。

「入斉唱とキリエ」ではじまる、全7曲のうち最初の2曲では、あえてヴァイオリンとヴィオラを封印、低音中心の渋い響きとなっている。男声のみのまろやかで豊かな音楽は、華やかさはないものの、暖かくふくよかな響きに魅了される。
ほぼアカペラで歌われる第6曲「ピエ・イエス」から、大きな起伏に富んだ最終曲「アニュス・デイ」。最後は管弦楽だけで永遠の安息を暗示するかのように静かに結ばれる。
この曲は、ベートーヴェンの葬儀の後の追悼ミサでも演奏されたというエピソードからも、当時いかに高い評価を受けていたかがわかろうというものである。

1822年にケルビーニはパリ音楽院院長に就任し、1835年に高弟ジャック・アレヴィの補佐を加えて『対位法とフーガ講座』(Cours de contrepoint et de fugue)を上梓した。
晩年に作曲された、男声合唱と管弦楽のための「レクイエム ニ短調」は、混声合唱のミサ曲を当時のパリ大司教イヤサント=ルイ・ド・ケランが批判し、パリの葬儀ミサでの演奏を禁止した。その結果、74歳のケルビーニは男性の声だけで作曲しましたが、どうやら自身の葬送のために書かれたものであるらしい。実際に1842年、ケルビーニの葬式でも演奏された。
1842年3月15日に81歳でパリに永眠したペール・ラシェーズ墓地の彼の墓の4つ右隣には、ショパンの墓(1849年10月17日没)がある。


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