34-20975
  • Record Karte
  • JP 東芝音楽工業株式会社製 赤盤
    • 1952年ロンドン、キングスウェイ・ホール録音。
    • 本盤は「くるみ割り人形」も収録。〝チャイコフスキーの三大バレエ組曲を完全に収めた、録音時間最長の豪華な組み合わせ〟。
    • 輸入メタル使用盤。
    • 帯付き。
誰れが聞いても絶対にココロひかれる演奏 ― チャイコフスキーと言えば、その旋律は素晴らしいが作品の構造が弱いと言うことで常に「二流作曲家」扱いをされてきました。しかし、私たちが音楽を聞いてまず最初に心惹かれるのは「構造」でもなければ「精神性」でもありません。「旋律」に酔わされるのです。作曲家が美しい旋律を作り、それを演奏家がこの上もなく美しく歌い上げれば、聴き手はそれにのっかっているだけで、それはココロふるわせるものになるはずです。ヘルベルト・フォン・カラヤンもチャイコフスキーも聞き手を満足させることを心得た音楽家として相性が良く、カラヤンがレコードで残したチャイコフスキーは、どれを聞いても素敵です。組曲《眠りの森の美女》がメインだけに、更に旋律の歌わせ方にオーケストラ・サウンドの醍醐味が上乗せされてもっと素晴らしい。第1曲《序奏とリラの精》の劇的でありながら、後半(リラの精)の華やかなオーケストレーション、第2曲《パ・ダクション》の豪勢な音の饗宴、第4曲《パノラマ》の《白鳥の湖》のどの音楽よりも湖面を静かに泳ぐ白鳥の様を描いたような滑らかで静かな音楽などに魅了されます。もう、この手の曲はカラヤンの独壇場。カラヤンは若いころアーヘンやウルムと云った地方の名もない歌劇場で苦労したことが、その後の止揚するステップの糧となっていたと語っているが、感受性に富んだ若い時にこうした職人気質を身につけたことが、本来持つ才能と伴に、有機的に結びつき細部まで緻密に磨き抜かれたカラヤン芸術を支えたと云ってもよいのではないか。このカラヤン美学はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団といった2大最高峰のオーケストラとの録音盤で大きく開花するが、この一連のフィルハーモニア管弦楽団との〝颯爽〟たる演奏でも既にカラヤン美学が開花している。ベルリン・フィルやウィーン・フィルなどの超一流のオーケストラとの録音がいまでも愛され続けられる音盤の中心ですが、1950年代のフィルハーモニア時代の音盤にも魅力溢れるものが少なくないように思います。その中、ドイツ・グラモフォン盤にない魅力が本盤には有ります。こんな演奏聴いてしまうと、是非とも全曲盤を聴きたいと欲も感じますが、レコードの音楽だけで見事にバレエの虜になりました。
現在ではバレエの代名詞のようになっているバレエ音楽《白鳥の湖》作品20は、初演の時にはとんでもない大失敗で、その後チャイコフスキーがこのジャンルの作品に取りかかるのに大きな躊躇いを感じさせるほどのトラウマを与えました。今となっては、その原因に凡庸な指揮者と振り付け師、さらには全盛期を過ぎたプリマ、貧弱きわまる舞台装置などにその原因が求められていますが、作曲者は自らの才能の無さに原因を帰して完全に落ち込んでしまったのです。とにかく大切なのはプリマであり、そのプリマに振り付ける振り付け師が一番偉くて、音楽は「伴奏」の域を出るものではなかったのです。ですから、伴奏音楽の作曲家風情が失敗の原因を踊り手や振り付け師に押しつけるなどと言うことは想像もできなかったのでしょう。再演の機会があればスコアは見直され、磨き上げられていくのですが、意気消沈したチャイコフスキーは楽譜をお蔵入りしてしまう。チャイコフスキーの評判が決定した後の組曲《くるみ割り人形》作品71aはバレエ全曲を完成する前にオーケストラ(演奏会用)ピースとして作曲。ところが《白鳥の湖》は踊りのみが主役で、音楽はその踊りに対する伴奏にしかすぎなかった従来のバレエのあり方を変えたことだけは間違いありません。台本を一部変更したり、曲順の変更や一部削除も行った上演が現在のクラシック・バレエを代表する作品です。それが、音楽、振付、題材の3拍子が揃った究極のバレエとされています。演奏会用組曲としてコンサートで演奏されるのは『情景(第2幕)』、『ワルツ(第1幕)』、『小さな白鳥たちの踊り(第2幕)』、『情景と白鳥の女王の踊り(第2幕)』、『ハンガリーの踊り〜チャルダーシュ(第3幕)』、『情景・終曲(第4幕)』の6曲。ヘルベルト・フォン・カラヤンは、チャイコフスキーの3大バレエ音楽「白鳥の湖」「眠りの森の美女」「くるみ割り人形」の録音を、組曲でそれぞれ生涯に4回行っている。エルネスト・アンセルメがイギリス・デッカで〝3大バレエ抜粋〟として、LPレコード1枚でリリースしたことに始まって、以来CDでは、この3大バレエ組曲を一枚に整えてしまっているケースが多いが、LPレコード初出は「くるみ割り人形」は別にして、4回とも「白鳥の湖」と「眠りの森の美女」のカップリングでリリースされた。レコードの収録時間が関係しているとは思われず、敢えてそうする考えはわたしもわかるところがある。録音・発売の年代順に整理してみるとフィルハーモニア管弦楽団と1952年のモノラル録音と1959年のステレオ録音、1965年のステレオ録音はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、1971年のステレオ録音はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団となる。それぞれのオーケストラとは、ロンドンのキングスウェイ・ホール、ウィーンのゾフィエンザール、ベルリンのイエス・キリスト教会が録音場所で、イギリスEMI、デッカ、ドイツ・グラモフォンのマイクセッティングの特色も比較愉しめる。どれも発売当時のレコードの売れ行きは好調だったが、特に2度目のEMIのステレオ盤は人気を集めたようだ。
一方、「くるみ割り人形」の初出LPカップリングは、それぞれフィルハーモニア管との1952年モノラル録音がヘンデルの「水上の音楽」組曲、1961年のステレオ録音はウィーン・フィル盤でグリーグの「ペール・ギュント」第1組曲・第2組曲からの抜粋が組み合わされ。1966年のステレオ録音だったベルリン・フィルハーモニー管弦楽団盤がチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」、最後の1982年のデジタル録音となったベルリン・フィル盤が幻想的序曲「ロメオとジュリエット」という様に、オーケストラ(演奏会用)ピースとして自発的に作曲された「くるみ割り人形」が純然たる管弦楽組曲として、チャイコフスキーの意図を含んでいるようであった。ただカラヤンは実際のコンサートでは、この3大バレエ音楽を全曲も含めプログラムに取り上げていない。作曲家の仕事を尊重すべき高みに引き上げたのはレコードの世界的普及だった。英EMIの偉大なレコード・プロデューサー、ウォルター・レッグは正に基準となるようなレコードを作ることを信条に働いていた。レコード会社に主導権のあった時代である。オーケストラや指揮者は各レコード会社と専属関係にあった。そこにまたとないパートナーを得ることになる。そして、それはレコードを愛する私たちにも嬉しい事だった。戦後ナチ党員であったとして演奏を禁じられていたヘルベルト・フォン・カラヤンの為に、1945年、レッグは自ら創立したフィルハーモニア管弦楽団を提供し、レコード録音で大きな成功を収めた。それから10年、ウィーンやベルリンでの演奏が出来ずに、レコードだけで音楽を創りあげるだけの年月をカラヤンはおくる。1954年にドイツ音楽界に君臨していたヴィルヘルム・フルトヴェングラーの急逝にともない、翌55年にカラヤンは、ついにヨーロッパ楽壇の頂点ともいえるベルリン・フィルの首席指揮者の地位に登りつめた。ここでレッグとカラヤンの関係は終止符を打つが、この約10年間に残したレッグ&カラヤン&フィルハーモニアのレコードの数々は、正に基準となるようなレコードであったと断言出来る。演奏はオーケストラに合奏の完璧な正確さを要求し、音を徹底的に磨き上げることによって聴衆に陶酔感をもたらせ、さらにはダイナミズムと洗練さを同時に追求するスタイルで、完全主義者だったレッグとうまが合ったのは当然といえば当然で、出来栄えも隙が無い。決して手抜きをしないのがカラヤンの信条であったという。
1950年代後半から石油ショック前の70年代前半までの国内初期盤はフラット盤も有り重量も180㌘前後と重く、深溝。ジャケットも丁寧にコーティング。後年再発盤は、時代と共にプレス機の仕様変更、コスト的にも当時の手作り的な手間をかけることが出来ず、ジャケットも簡素な味気ないカラーコピー的作りになってしまいました。
音質も、当時の録音はアナログテープでしたから、60年以上も経過した昨今、当時の音質のまま残ってなどいる訳が無く、デジタル補正を繰り返し全く別の音質になってしまいました。英国オリジナル盤とまでいかなくとも、まだテープの経年劣化が少なく最近の再発盤よりはオリジナル盤に近いと、聴けば新たな思いを持てます。
レコードは磁気テープと違い経年変化や劣化は無く、無傷であれば当時の音が其の儘楽しめる長所有り、プラスして半世紀前高価入手難欧米真空管オーディオ、プレーヤーも円高で入手し易くなり、聴くと半世紀前使用していた貧粗国内装置では再生し切れず「低評価に放置されていた国内最初期盤」に「こんな良い音刻まれていたのか!!!」と吃驚すると思います。
まだマスターテープが新鮮で状態で制作・録音された時代と同じ空気を感じられるのが初期盤収集の楽しみ。アナログ的で引き締まった密度のある音と音色で、楽音も豊か。情報量が多く、対旋律の細部に至るまで明瞭に浮かび上がってくる。高域は空間が広く、光彩ある音色。低域は重厚で厚みがある。オーケストレーションが立体的に浮かび上がる。モノクロではなくこんなにカラフルで立体的か等々、ハンドメードの余韻が感じられます。
是非英国オリジナル盤EMI WHITE&GOLDやCOLUMBIA BLUE&SILVER盤所有する方、比較試聴して頂きたい。往年のまさに定盤中の定盤として一世を風靡した盤の日本国内初出盤。半世紀以上前制作盤とは思えない状態と豪華装丁には驚かれるとおもいます。今でも一級のオーディオファイル盤であると断言できます。高価な英国EMI盤WHITE&GOLDに負けないと。
名称時代推移として1955年10月東芝の前身、東京芝浦電気が音楽レコード事業に参入。同社がレコード事業を開始後の数年間は、英EMI、米キャピトル原盤の音源は本国からの輸入メタル原盤からプレスしたソフトが多かった。1960年10月音楽レコード事業部門が分離独立して東芝音楽工業株式会社が設立。1971年10月静岡県御殿場市に最新鋭の生産機能を取り入れた御殿場工場開設。1973年10月キャピトルEMIが資本参加、東芝イーエムアイ株式会社(東芝EMI)と改称。以上凡そのお手元のLPプレス時期御理解頂けると思います。
カラヤン&po チャイコフスキー 三大バレー来日記念盤(輸入メタル使用盤)(帯付) 東芝(赤盤) AA7394
AA7394

プロダクト・ディテール(日本オリジナル盤)

  1. オーケストラ
    フィルハーモニア管弦楽団
  2. 指揮者
    ヘルベルト・フォン・カラヤン
  3. 作曲家
    ピョートル・チャイコフスキー
  4. 曲目
    1. 白鳥の湖
    2. 眠れる森の美女
    3. くるみ割り人形
  5. 録音年、録音場所
    1952年ロンドン、キングスウェイ・ホール録音
  6. レーベル
    東芝音楽工業
  7. レコード番号
    AA7394
  8. 録音種別
    STEREO
  9. 製盤国
    JP(日本)盤、赤盤
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