ようやく〝バッハ無伴奏〟の本命に出会えたと感じた!
ピエール・フルニエ ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 無伴奏チェロ組曲1-2番 DE ARCHIV 198 186
- Record Karte
- DE SILVER WITH BLACK LETTERING, STEREO 1枚組, 110㌘重量盤.
1960年12月20、21日(1,2番)ハノーファー、ベートーヴェンザールでの、カール=ハインツ・シュナイダーによるセッション・ステレオ録音。優秀録音、名演、見開きジャケット。半世紀以上前の録音ですが昨日録音したような新鮮さ、この再発盤でも十分に伝わってきます。
格調の高さ・気品 ― 「ようやく〝バッハ無伴奏〟の本命に出会えた」と感じた。
― その流麗且つ気品溢れる演奏スタイルから「チェロの貴公子」と呼ばれ、20世紀の名チェリストとして名を馳せたピエール・フルニエ(1906〜1986)。彼の数々の録音のなかでも特に名盤の誉れ高い、ヨハン・ゼバスチャン・バッハの無伴奏チェロ組曲。
再び、ピエール・フルニエによる無伴奏チェロ組曲の演奏を聴き、「ようやく〝バッハ無伴奏〟の本命に出会えた」と感じた。この曲を鑑賞する上での大前提として、耳にする機会のあまりにも多いパブロ・カザルスにはじまり、ヤーノシュ・シュタルケルを音楽教室の音楽担任のコレクションで聴き、個人的に最初のコレクションとなったのはミーシャ・マイスキーと、いくつかの録音を聴いてきたが、曲の中で深呼吸できるような落ち着いた演奏は、これが初めて。最初に聴いたフルニエが、どの録音時のものかはわからないけど、今まで聴いてきたものはそれぞれ工夫と意匠を凝らしていることは感じるが何やらスムーズにサラサラ流れていく。その点でカザルスはゴツゴツ野太いのと、普偏盤なのですが。バッハの楽譜に対峙しているという印象がぬぐえず、バッハの遊びに浸りたいという気になれなかった。それでも、演奏の多様性を可能にするバッハの奥深さと難しさは考えさせられます。
フルニエの無伴奏はというと、変に考えさせずにバッハの音楽に身を浸すことができると感じている、さっぱりとして、同時に温かみのある演奏です。彼がギターの巨匠アンドレス・セゴヴィアに影響を受けたと言っていることが意外ですし、大変興味深い話です。
フルニエが音楽の特質を大事にし、それを損ねないようにしながら自らの芸風を存分に発揮していることは一聴すれば直ちに気づくことが出来ると思います。そこがフルニエを聴く要素の強い演奏ですが、聴き逃すことのできない演奏であることは確かだと思います。フルニエは実に上手い。
しかも彼の特質、迫力あるロングトーンや豪快なボーイングによって聴き手を圧倒するのではなくて、密やかな静けさや、チェロ独自のなんかまろやかな美音を味わうものとなっている。すなわち格調の高さ・気品は一貫して保たれており、それが本盤の独自の存在価値になっているように思います。
いくつかあるフルニエの「無伴奏チェロ」の中でも演奏・音質の両面で最高傑作。何度も再販され、LP、CD、SACD、復刻LPやハイレゾ配信まで発売されていることが、時代を超越したフルニエの名演奏とその録音の優秀さを証明している。
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