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NL PHILIPS 6514 275 ピーナ・カルミレッリ イ・ムジチ合奏団 ヴィヴァルディ・「四季」

  • Record Karte
  • NL 赤地にホワイトロゴレーベル, 1982年の優秀録音です。
    • 演奏:イ・ムジチ合奏団。
    • 独奏とリーダー:ピーナ・カルミレッリ
    • 曲目
      ヴィヴァルディ/協奏曲集「四季」
    • 1982年7月21〜24日スイス、ラ・ショー=ド=フォンにあるサル・ド・ムジークでの録音
    • この音楽ホールは、1960年代から主にフィリップスが録音用に使い始め、イ・ムジチ、イタリア弦楽四重奏団、グリュミオー、シェリング、ヘブラー、ホリガー、アラウらの名盤・名録音を通じて、レコード・ファンには「名録音の代名詞」としてお馴染みの会場です。静寂が保たれたホール内にしっとりとした情感を漂わせるサウンドが展開される。

《鶴屋百貨店「イタリア展」(2025年5月1日〜12日開催)》便乗優秀録音レコメンド、イタリアを耳で感じる100年名盤セレクション

四季の魅力を歌いつくした、すべての頂点に立つ四季の名レコード誕生

バロック音楽ブームの火付け役であり、ヴィヴァルディの《四季》を大ヒットさせたイ・ムジチはオランダPHILIPSに ― LPレコード時代には6回録音しているそうですが、そのなかで選ぶ代表作はフェリックス・アーヨ、ロベルト・ミケルッチ、そしてこのピーナ・カルミレッリ盤か。

イ・ムジチによる4回目の録音で、初のデジタル録音となった《四季》。どの盤もそれぞれ素晴らしく甲乙つけ難いのですが、しなやかで気高いカルミレッリ盤は特に評価の高い一枚といえます。1949年にはボッケリーニ五重奏団、1954年にはカルミレッリ弦楽四重奏団を創設し、ヨーロッパ各地で演奏活動や録音を行った、ピーナ・カルミレッリ(Pina Carmirelli, 1914.1.23〜1993.2.26)が1973年から1986年までコンサートミストレスを務めていた時代の、イ・ムジチ合奏団によるデジタル録音。
イ・ムジチ合奏団もカルミレッリの時代になって、古楽奏法の影響を受けてか響きが和らいだ反面、鮮烈な印象は薄らいできました。
リーダーになるとしては、カルミレッリ女史は当時68歳という年齢ですが、仕上がりは晴朗で瑞々しく、適度に締まっている。ソロは品がよく、他楽器との協調が身上。明晰さと透明感あるアンサンブルがいっそう活きており、くわえてデジタル録音のよさが手伝い、各パートの動きもクリアな、表現力の幅広さを実感させられる。

四季の魅力を歌いつくした、すべての頂点に立つ、永遠の名レコード誕生〜イタリアそのものを、ずばり感じさせるすばらしい演奏。

本盤はピーナ・カルミレッリ以下、ヴァイオリン6、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス2の12人編成。カルミレッリの独奏は細身で美しい。合奏も引き締まる。バロック演奏などで聴かせる明晰さと透明感あるアンサンブルがいっそう活きており、表現力の幅広さを実感させられる。
ところで、この《四季》は、近代のヴァイオリン協奏曲の様式で作曲されているが、このカルミレッリ盤は、いままでの演奏とはやや異なり、ヴァイオリン協奏曲と合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)との中間をいくようなかたちで演奏されているのが大きな特色といってよい。
それに、この曲の持つ楽しい標題性を、かなり忠実に再現しているのも、当然のことながら、大変興味深い。それは、『夏』や『秋』の部分をお聞きになれば、よくお分かりになると思う。いずれにせよ、イタリアそのものを、ずばり感じさせる、すばらしい演奏である。
録音はスイスのラ・ショー=ド=フォン(名録音の代名詞 La Chaux-de-Fonds ― スイス北西部、ジュラ山脈の麓のフランス国境近くに位置する小さな町ラ・ショー=ド=フォンにある音楽ホール、サル・ド・ムジークは1955年に開館した約1,200席を擁する室内楽向けのホールで、1962年にはアメリカの建築士レオ・ルロイ・バラネクが「ホールのどこに座っていても、ステージ上で針が落ちる音さえ聴こえる」と評し、世界で最も優れたホールの一つにあげているほど)で。スッキリ爽やかな音が気持ちよい。カルミレッリの豊かな表現とイ・ムジチならではのしなやかで歯切れのいい演奏が組み合わさった名盤。

端整かつ流麗という二つの要素を備えたカルミレッリが魅了する〝ロマンティックな四季〟

〝イ・ムジチ〟はイタリア語で音楽家たちの意味。1952年、ローマ聖チェチーリア音楽院の卒業生12名によって結成。当初から指揮者を置かない方針をとり、後続の室内アンサンブルのモデルとなる。
世界的に人気を博したのは、1959年に録音したヴィヴァルディの『四季』の大ヒットからで、バロック・ブームを作った。切れ味のいい輝かしい演奏が人気で、来日も多い。『四季』といえば、イ・ムジチ合奏団の演奏というのが、いまや通り相場になっている。
このデジタルで録音された4回目のヴァイオリン独奏者は、1973年からこの合奏団のコンサートマスターをつとめているピーナ・カルミレッリ(1914年生まれ)で、彼女は1937年にクレモナで開かれた、ストラディバリウス没後200年記念ヴァイオリン・コンクールで優勝して以来、ピアニストのルドルフ・ゼルキンとともに、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを演奏したり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と協奏曲を演奏するなど、独奏者として、また室内楽の演奏者として活躍した。その後、イタリアが誇るこのイ・ムジチ合奏団の大黒柱となったのだった。
なおカルミレッリは『ボッケリーニのメヌエット』で有名なハイドン夫人、イタリア古典派の大作曲家、ルイジ・ボッケリーニ(1743〜1805, 同時代のハイドン、モーツァルトに比して現在では作曲家としては隠れた存在であるが、ウィーンの宮廷楽団で活躍した音楽一家の名門。バッハとベートーヴェンの間を埋める、モーツァルトの裏側的存在。成功者としてはボッケリーニが表だが。モーツァルトがウィーンに憧れを抱く時期、25歳でスペインの宮廷に招かれドン・ルイス皇子付き奏者兼作曲家となり、併行してブランデンブルク辺境伯にも作品を送っていた。ピアニストとして、作曲家であり指揮者として注目されることを目論んでいたモーツァルトとは対象的に、ボッケリーニ自身がチェロのヴィルトゥオーソであったため、自らを主演奏者とする形式性より即興性を生かした音楽を作ったこと、弦楽四重奏曲と、とりわけ弦楽五重奏曲では抜きん出た量と質を誇っているが、ボッケリーニの音楽史上の功績としては室内楽のジャンル確立が挙げられる。これは同時代のハイドンの作品群を凌駕している。)の家系を引く名家の出身で、その作品の発展にも熱心で、メンバーの一人がボッケリーニの初版コレクションを買い取ったことがきっかけで結成された、ボッケリーニ五重奏団のリーダーとしても活躍した。実際ソリストとしての彼女の演奏は、かなり古風なスタイルで、ロマンティックな表現力は抜群のものがあり、その反面ピッチのとり方など、往年のヴァイオリニストに共通する一種独特のものがある。
だがイ・ムジチのコンサートマスターとしては、アンサンブルのスタイルに溶け込み、決して自己のスタイルに固執することはなかった。このあたりが若手では真似の出来ない、ベテランらしい幅広さであろう。

イ・ムジチの明るく均整の取れたサウンドで、弦楽合奏の魅力を堪能させる。

イ・ムジチの《四季》のレコード売り上げは、1976年に100万枚を突破し、その他のレコードを合わせると1977年、イ・ムジチ創立25周年には何と1000万枚を突破するという、大記録を達成したのである。更に1983年の第10回の来日では、大阪で通算200回の公演回数を迎え、イ・ムジチの人気を決定づけたのである。この時の演奏会にわたしは二晩通っている。
14年間のカルミレッリの後を受けて、コンサートマスターに就任したのは、若いフェデリコ・アゴスティーニとなった。イ・ムジチのメンバーだったフランコ・グッリの甥で、アッカルドに学んだ優等生で、入団前はリサイタリストとして、室内楽奏者として活躍していたという。アゴスティーニの時代を迎えたイ・ムジチは、すっかり世代交代を果たして、創立以来のメンバーは、ヴァイオリンのワルター・ガロッティのみを数えるだけになってしまった。
1987年来日公演中にイ・ムジチの《四季》は、クラシックのレコード界では空前の200万枚の売上を達成し、更に1988年にアゴスティーニの独奏で、通算5度目の《四季》の録音を実現させ、日々その記録を更新中である。
カルミレッリのロマンティックな演奏から、アゴスティーニの時代になってのイ・ムジチは、再びあのアーヨの時代を彷彿とさせるような、若々しい活力と情熱を聴かせるようになった。

間違いなく世界で一番美しい室内合奏団だ―トスカニーニ

前期バロック時代の音楽。現在の協奏曲のスタイルを発見した、イタリアの作曲家、アントニオ・ヴィヴァルディ作曲の「和声と創意への試み 作品8」(Il cimento dell'armonia e dell'inventione)の全12曲。ヴィヴァルディは24曲で構想していたが挫折。1724年から1725年頃にオランダ、アムステルダムの出版社ル・セーヌから6曲ずつ2巻に分けて出版された。大ヒットした「四季」(Le quattro stagioni)は、その第1番から第4番までの4曲です。第5番は『海の嵐』。第6番『喜び』、第7番『ピゼンデル氏のために』、第10番『狩』の名前がついています。また、それらは単独で演奏や録音もされます。ピエモンテの貴族カルロ・ジャチント・ロエロ伯爵の趣向に合わせた曲集なので、すべての曲にストーリーをつけようとしていたのかもしれない。
ヴィヴァルディの名前はクラシック音楽史ではでてこないので、1950年代にはバッハ作曲として聞かれてもいたが、戦前のクラシックファンも蓄音機で聴いていたミーシャ・エルマンのSPレコードがある。わたしが知るヴィヴァルディ作曲とあるレコードは、それ限りですが。ヴァイオリン協奏曲の体はとっていたものの、複数の楽曲から取り合わせた演奏でした。原曲は検証してませんが、ナタン・ミルシテイン(Columbia 17070、F.デイヴィッド編曲)、ヤッシャ・ハイフェッツ(RCA 1810、1937年、アドルフ・ブッシュ編曲)もSPレコード録音している。
ヴィヴァルディの自筆譜をみることが出来るように成ってからも、「四季」は、筆写譜で演奏されていたもので、ヴィヴァルディの意図していた録音は2,000年になってから。それでも、原典演奏をアピールしていたホグウッドでも、筆写譜を重視していた。このイ・ムジチ合奏団の演奏で採用したのは、ヴィットリオ・ネグリの編曲によるもの。その経緯はアーヨ盤にネグリが書いたライナーノートにある。
オランダ・フィリップス社専属の看板アーティストのレコードを制作、録音ディレクターを手掛けていたヴィットリオ・ネグリは音楽学者としても知られており、指揮者でもあった。バロック音楽を専門とし、楽譜の校訂者、研究者として知られる彼は、これら4曲を「四季」と称したレコードの録音をイ・ムジチ合奏団に推した。

イ・ムジチ合奏団の〝四季〟は、都会的でゴージャスな響き。

― 新型コロナウイルスは私たちに新しい生活様式を求めていますが、健康体の人の細胞が不治の病と言われていた病気を治すことができるようになったことから、病気を持っている人の血液が新型コロナウイルスに感染して深刻な状態にあった男性の命を救うといった感動も見せてくれました。
さて、イ・ムジチ合奏団(I Musici)は1952年に、ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミアの卒業生12名が集まって結成。イタリアや世界のバロック音楽界における最も名高い楽団のひとつであり、日本での人気も高い。
初来日は1963年。プログラムは日本側プロダクションから《四季》をすべての公演に入れるように要望されたそうだ。
楽団としては指揮者を置かず、楽員全員の合議で音楽を作り上げる形式を採る。8人のコンサートマスターが歴任し、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集《四季》の録音を度々行っている。2022年3月4日、9種目(2021/4/26〜29ローマ、サン・ロレンツォ・ダ・ブリンディジ教会で録音。結成時のメンバーの一人モンセラート・セルヴェラを母にもつ、マルコ・フィオリーニが結成時と同じ12名編成のコンサーマスターを務める。)をリリースしている。
日本で発売する時にレコードの帯に、〝イ・ムジチの四季〟と筆文字で書いたのは営業担当者だった。
ところで、このレコードの帯は日本独特の発明といえる。昭和30年代登場したLPレコードでは裏表紙に日本語で曲名、演奏家名を印刷していたが帯の簡単な説明や、宣伝文句は購買の助けとなった。
この〝イ・ムジチの四季〟はLPレコード時代のリリースに6種類ある。まずは、創設3年後の1955年に、初代コンサートマスターのフェリックス・アーヨの元で録音したモノラル盤。これは流麗ながらも引き締まった演奏だ。当時22歳のアーヨのソロも同様で、アンサンブルは今聴いても高水準。そして当盤最大の妙味は、アルトゥーロ・トスカニーニに絶賛された創設当時の覇気漲るサウンドを聴けることにある。演奏時間は6種の中で最も短い。対する最長は同じアーヨの1959年盤。アーヨの2枚が最短と最長なのは些か興味深い。これがイ・ムジチ人気に火を付けた。こちらは〝最新技術〟のステレオ録音盤だということで、東京オリンピックに向かって生活様式が新しくなり始めた都会化ブームにアピールした。「春」冒頭を聴けば一目(耳)瞭然。なめらかで角のとれたフレージング、艶やかさを増したアーヨのソロは流麗かつ豊麗でしかも爽快な、イタリアの陽光輝く《四季》である。鶴屋百貨店の鶴屋クラシックサロンで、2018年4月29日に「熊本城天守閣が再建された時の名盤レコードを使って ― 協奏曲の発展を聴く」と題して熊本地震復興を応援する名曲鑑賞会で選んだのがこれで、特別に注意して聴いてもらった「秋」は秋らしく落ち着きがあり、「冬」は冬らしく表情が厳しい。これぞまさしく四季。そして、〝イ・ムジチの四季〟のメタモルフォーゼが始まっている。それは、既存へのアンチテーゼ、ロック音楽のムーヴメントと共通する。

CDを開発したPHILIPS社のCD第1号は、1982年録音のイ・ムジチ合奏団による「四季」。


オーボエなど木管楽器の温かみのある音。


英DECCAの華やかな印象に対して蘭フィリップスは上品なイメージ。〝響きの美しさ〟よりもオーケストラの音の重量感としてのバランスが見事。

ヨーロッパ屈指の家電&オーディオメーカーであり、名門王立コンセルトヘボウ管弦楽団の名演をはじめ、多くの優秀録音で知られる、オランダ・フィリップス・レーベルにはクララ・ハスキルやアルテュール・グリュミオー、パブロ・カザルスそして、いまだクラシック音楽ファン以外でもファンの多い、「四季」であまりにも有名なイタリアのイ・ムジチ合奏団らの日本人にとってクラシック音楽のレコードで聴く名演奏家がひしめき合っている。
イギリス・グラモフォンやイギリスDECCAより創設は1950年と後発だが、オランダの巨大企業フィリップスが後ろ盾にある音楽部門です。ミュージック・カセットやCDを開発普及させた業績は偉大、1950年代はアメリカのコロムビア・レコードのイギリス支社が供給した。そこで1950年から60年にかけてのレコードには、アメリカCOLUMBIAの録音も多い。
1957年5月27~28日に初のステレオ録音をアムステルダムにて行い、それが発売されると評価を決定づけた。英DECCAの華やかな印象に対して蘭フィリップスは上品なイメージがあった。
1979年11月、フィリップス社初のデジタル録音が行われる。初のデジタル録音はコリン・デイヴィス指揮の「展覧会の絵」ほか。フィリップスは1982年10月21日コンパクト・ディスク・ソフトの発売を開始する。ヘルベルト・フォン・カラヤンとのCD発表の華々しいCD第1号は、イ・ムジチ合奏団によるヴィヴァルディ作曲の協奏曲集「四季」 ― CD番号:410 001-2。1982年7月のデジタル録音。デジタル時代の初期レーベルは、アナログ録音盤と同じ赤地にホワイト・ロゴですが、後になるとシルバー・レーベルに移行していくことになる。
現在は、フィリップス・サウンドを継承してきたポリヒムニア・インターナショナルが、これら名録音をDSDリマスタリングし、SACDハイブリッド化しています。

ヴィンテージレコードの写真

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プロダクト・ディテール(オリジナル盤)

  1. レーベル
    PHILIPS
  2. レコード番号
    6514 275
  3. 作曲家
    アントニオ・ヴィヴァルディ
  4. 楽曲
    協奏曲集「四季」
  5. アンサンブル
    イ・ムジチ合奏団
  6. リーダー、独奏者
    ピーナ・カルミレッリ
  7. 録音年月日
    1982年7月21〜24日
  8. 録音場所
    スイス、ラ・ショー=ド=フォンにあるサル・ド・ムジーク
  9. 録音種別
    STEREO DIGITAL
  10. 製盤国
    NL(オランダ)盤
  11. レーベル世代
    赤地にホワイトロゴレーベル


CDはアマゾンで購入できます。


アルビノーニのアダージョ~バロック名曲集
イ・ムジチ合奏団
ユニバーサル ミュージック
2016-04-06


イ・ムジチの「四季」~オリジナル・ジャケット・コレクション
イ・ムジチ合奏団
ユニバーサル ミュージック
2013-10-12


String Quartets
Carmirelli Quartets
Polygram Records
1990-07-25


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