• 7月10日
    ポーランドのヴァイオリニスト、ヴェニヤフスキが誕生した日(1835年)。パガニーニやサラサーテと同時代に生まれ、いわゆるヴィルトゥオーゾ(卓越した技術を持った演奏家)であった。作曲も手がけ、その作品は今日のヴァイオリニストたちの重要なレパートリーとなっている。

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  • AU CORONET KLC666 アイザック・スターン ヴィエニャフスキ&サン=サーンス&ラヴェル・ヴァイオリン協奏曲

  • ヴィンテージ盤レコード→AU(オーストラリア)/パープル金文字盤(PURPLE WITH GOLD LETTERING)。レコード盤重量150g、スタンパー番号1D/2G。Columbia Masterworks ‎– ML 5208 でリリース。
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    1. Wieniawski - Isaac Stern And The Philadelphia Orchestra ‎– Violin Concerto No. 2 In D Minor
      • Side-A
        1. Wieniawski: Concerto No. 2 In D Minor, Op. 22 (For Violin And Orchestra)
      • Side-B
        1. Saint-Saens: Intro. And Rondo Capriccioso, Op. 28
        2. Ravel: Tzigane
    2. ユダヤ人の家系で、ポーランドのヴァイオリニスト。イタリアのパガニーニ、スペインのサラサーテと並んで“19世紀の三大ヴァイオリニスト”と称されるヘンリク・ヴィエニャフスキは、ピアノのショパンと同様、ほとんどヴァイオリン曲しか書かず、自国の舞曲マズルカやポロネーズを用いて多くのヴァイオリン曲を残したことから、「ヴァイオリンのショパン」と呼ばれました。
    3. その創作の頂点に位置するのが、《ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ短調》です。ヴィエニャフスキ自身が独奏を務めて初演したこの作品は、超絶技巧を誇示するだけの協奏曲ではありません。華麗な重音、重音トリル、人工フラジオレット、目もくらむようなアルペッジョなど、名人芸の限りが尽くされながら、それらはすべて豊かな歌心を際立たせるために用いられています。技巧と旋律美が見事に融合した、ロマン派協奏曲の傑作です。
    4. とりわけ第2楽章《ロマンス》は、オペラのアリアを思わせる甘美な旋律が切れ目なく歌い継がれ、独奏ヴァイオリンがまるで人間の声のように語りかけます。その夢見るような余韻はそのまま終楽章へと引き継がれ、ジプシー風(ア・ラ・ジンガラ)の情熱的な舞曲へ一気になだれ込みます。第1楽章の旋律を回想する巧みな構成も、この作品の完成度を高めています。
    5. ポーランド人作曲家でありながら、この作品には北欧音楽を思わせる澄んだ叙情や、ひんやりとした透明感が漂います。深い哀愁と気品を湛えた旋律は、ブラームスやチャイコフスキーとは異なる抒情世界を築き上げ、聴く者の心に静かな余韻を残します。
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    7. 北欧の感傷を浮かべた名曲は、この作曲家の代表作の一つ。ロマン派音楽の時代で最高のヴァイオリン協奏曲の一つであり、官能的かつ感動的な旋律と和声によって、記憶に残りやすい作品となっている。
    1. 北欧の感傷を浮かべた名曲。

    2. ― アイザック・スターンの名を見つけると、私は必ず映画「ミュージック・オブ・ハート」を思い出す。メリル・ストリープ演じる女性の音楽教師が、スラム街の学校に通う子供達に悪戦苦闘しながらヴァイオリンを教え込み、最後には地域の支持を獲得することに成功、お別れの発表会をカーネギー・ホールで行うという実話に基づいたストーリーである。このカーネギー・ホールのシーンでスターン自身が登場し、子供達と一緒に演奏をするのである。暖かい人柄が滲み出て、何回見ても飽きない。ユダヤ系のヴァイオリニスト、スターン(Isaac Stern)は、アメリカで活躍したヴァイオリニスト。1920年7月21日、当時ロシアだったウクライナのクレメネツに生まれ、1歳2ヶ月の時、家族に連れられサンフランシスコに移住する。母親から音楽の早期教育を受け、1928年サンフランシスコ音楽院に入学、ヴァイオリンをナフム・ブリンダーに学んだ。1936年2月18日にサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番を、モントゥ指揮サンフランシスコ交響楽団と共演してデビューを果たした。初演後、初演者と作曲者の恋愛関係から演奏される事のなかったバルトークのヴァイオリン協奏曲第1番を初演者の依頼によって再演奏し、世界に知らせた。新進演奏家の擁護者でもあり、なかでもイツァーク・パールマン、ピンカス・ズーカーマン、シュロモ・ミンツ、ヨーヨー・マ、ジャン・ワンはスターンの秘蔵っ子たちで、しばしば共演を重ねてきた。1960年には、カーネギー・ホールが解体の危機に見舞われた際、救済活動に立ち上がった。そのため現在、カーネギー・ホールのメイン・オーディトリアムはスターンの名がつけられている。またユダヤ人としてイスラエルに強い共感を示し、ユダヤ人を題材にしたミュージカル映画『屋根の上のバイオリン弾き』では劇伴のヴァイオリンソロを担当している。一方で、中東和平を推進したイスラエルのバラク政権を支持した事や、ドイツ人との和解に努めた事も注目される。2001年9月22日、その11日前に発生したアメリカ同時多発テロ事件で全米が騒然とする中、その渦中にあったニューヨークで心不全の為、亡くなった。そのスターンがヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第2番を弾いたのがこのレコードである。
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  1. ## シャガールの空と、臍のない恋人たち
  2. 今日、鑑賞するアナログレコードは、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮、リムスキー=コルサコフ作曲《シェヘラザード》。演奏はパリ管弦楽団。1974年にEMIへ録音された名盤であり、クワドラフォニック仕様のオリジナル盤である。
  3. このレコードは、音楽そのものと同じくらい、そのジャケットでも知られている。表紙を飾るのは、ロシア生まれの画家 Marc Chagall の幻想的な絵画だ。深い青の空間を漂うような黄色い大きな鳥のような存在、豊満な女性像、そしてその足元で抱き合う若い男女。夢と現実、神話と恋愛が溶け合ったような、いかにも《シェヘラザード》にふさわしい世界が広がっている。
  4. 私がこのレコードを手に取ったのは、小学生の頃だった。
  5. ちょうど、自分のお腹が友達と違うことを理解し始めた時期である。
  6. 水泳の更衣室だったのか、あるいは体育の着替えだったのか、正確には覚えていない。ただ、ある日ふと気付いた。
  7. みんなのお腹には臍がある。
  8. そして、私にはない。
  9. 幼い子どもにとって、「みんなと違う」という事実は、時として大きな謎になる。なぜ自分だけ違うのだろう。何が違うのだろう。そんな疑問を抱えながら、本や絵画や音楽の中に、自分と似た存在を探していた気がする。
  10. だから、そのシャガールのジャケットを見たとき、私は妙に惹きつけられた。
  11. 黄色い大鳥の足元で抱き合う若い男女。
  12. もちろん絵画の細部が明瞭に描き込まれているわけではない。しかし幼い私は、不思議な確信を抱いた。
  13. この二人には臍がない。
  14. ただそれだけの理由で、このレコードを何度も眺めた。
  15. 音楽についての知識など何もなかった。
  16. 《シェヘラザード》という題名も知らなければ、アラビアンナイトも知らない。
  17. けれど針を落とした瞬間、スピーカーから流れ出した音に驚いた。
  18. 低弦がうねる。
  19. 金管が咆哮する。
  20. その上を、ヴァイオリン独奏が妖しく舞う。
  21. まるで色彩そのものが音になったようだった。
  22. 子どもの私は、それを「肉感的な音」と感じた。
  23. もちろん当時はそんな言葉を持っていなかった。しかし身体のどこかが熱を帯びる感覚だけは確かにあった。
  24. 音楽が耳だけではなく、胸や背中や腕や脚の内側まで響いてくる。
  25. 生きていることそのものを揺さぶるような力があった。
  26. 改めて聴き返してみると、このロストロポーヴィチ盤の魅力は、その圧倒的な雄弁さにある。
  27. 指揮者ムスティスラフ・ロストロポーヴィチは、もともと20世紀を代表するチェリストとして知られるが、この録音では音楽を語ることへの情熱が全編から噴き出している。
  28. オーケストラは決して無機質に整えられていない。
  29. むしろ感情を隠そうとしない。
  30. 旋律は歌い、ためらい、ため息をつき、ときに燃え上がる。
  31. 第1楽章の海原の広がりも、第2楽章の冒険譚も、第4楽章の祝祭も、どれもが濃厚な色彩をまとっている。
  32. そして何より美しいのは、第3楽章《若い王子と王女》である。
  33. 弦楽器が紡ぐ甘美な旋律は、シャガールの絵画の中で抱き合う恋人たちそのもののように感じられる。
  34. ロストロポーヴィチは、この楽章を恥ずかしがらない。
  35. 遠慮もしない。
  36. 恋の美しさを徹底的に歌い上げる。
  37. だからこそ、そのロマンティシズムは現代の耳には少々過剰に感じられるほどだ。
  38. だが、その過剰さこそが魅力なのである。
  39. 《シェヘラザード》という作品は、本来、理性よりも想像力の音楽なのだから。
  40. 思えば、このレコードは私に二つの扉を開いてくれた。
  41. ひとつは音楽への扉である。
  42. 音楽とは単なる音の並びではなく、人の心を揺さぶり、人生の記憶と結びつき、何十年も後に再び感情を呼び覚ますものなのだと教えてくれた。
  43. そしてもうひとつは、生命への興味の扉だった。
  44. なぜ人の身体は違うのか。
  45. なぜ私は私なのか。
  46. なぜ美しいと感じるのか。
  47. そんな問いは、音楽とは無関係に見えて、実はどこかでつながっている。
  48. シャガールの空を漂う鳥も、抱き合う恋人たちも、シェヘラザードのヴァイオリンも、幼い日の私には同じ謎の一部だった。
  49. レコードを回しながら、私は知らず知らずのうちに、その謎へ手を伸ばしていたのである。
  50. 今でもロストロポーヴィチ盤を聴くと、最初に思い出すのはアラビアンナイトの宮殿ではない。
  51. シャガールの描いた夢の空と、その足元で抱き合う臍のない恋人たちを見つめていた、小学生の私の姿なのである。

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