〝モーツァルトの再来〟 ― と呼ばれる程の神童ぶりだったコルンゴルトもまた、映画「スター・ウォーズ」シリーズの音楽を担当したジョン・ウィリアムズにも大きな影響を与えている。コルンゴルト作曲の映画音楽「嵐の青春」は、一聴すればすぐにわかるほどスター・ウォーズのメイン・タイトルに似ている。ウィリアムズ自身も「エピソード1/ファントム・メナス」の楽曲「パナカと女王の護衛たち」は、コルンゴルトへのオマージュと言っており、コルンゴルトが音楽をつけた映画「シー・ホーク」や「ロビンフット」などの活劇音楽を彷彿させる。ハリウッド映画の名曲シリーズ「Classic Film Score」として次々と発売されたレコードの ― 一昨日の『風と共に去りぬ』と昨日の『情熱の航路』を含め ― 愛聴者は多い。それらで説明してきたように、指揮者がプロデューサーとして本盤とつながっている縁に感謝したい。コルンゴルト23歳の時の傑作オペラ『死の都』は、かつてはマイナーな存在でしたが、有名な第1幕のアリア「マリエッタの歌」が、1987年製作・公開のイギリスのオムニバス映画『アリア』やダニエル・シュミット監督が1974年、スイス・フランス映画『ラ・パロマ』中盤で、青い山並みを背後にして歌われる場面での抗いがたい魅力が話題になり、近年では実演での上演回数も増え、ライヴ録音やライヴ映像作品も増えてきました。しかし、音質条件が格段に良いセッション録音となると、本盤は作品を把握するのに最適な名盤としてのポジションは揺るぎそうにありません。これには好調なときのエーリッヒ・ラインスドルフならではの完全主義的なアプローチが功を奏して、歌に絡むオーケストラ・パートの雄弁なことでも、競合ライヴ盤を大きく引き離しています。名匠ラインスドルフの指揮のもと、アナログ完成期の1975年に行われた本盤は、主役級に表現力だけでなく正確な歌唱を行える人材が集められ、ルネ・コロとキャロル・ネブレットの織りなす端正で味わいのある歌唱は実に甘美で、オーケストラの雄弁なサウンドと共に陶酔的な美しさをもたらし、どんな細部も崩れることのない高水準な演奏が展開されているのが特徴です。
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- パウル:ルネ・コロ(テノール)、マリエッタ/マリー:キャロル・ネブレット(ソプラノ)、フランク:ベンジャミン・ラクソン(バリトン)、ブリギッタ:ローゼ・ヴァーゲマン(メッゾ・ソプラノ)、フリッツ:ヘルマン・プライ(バリトン)、ジュリエット:ガブリエーレ・フックス(ソプラノ)、リュシエンヌ:パトリシア・クラーク(ソプラノ)、ガストン/ヴィクトリン:アントン・デ・リッター(テノール)、アルベルト公爵:ヴィリー・ブロックマイヤー(テノール)、テルツ少年合唱団、バイエルン放送合唱団、1975年6月ミュンヘン、バイエルン放送局コンサートホール録音。
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