NL PHILIPS 835 392AY ヘブラー&ディヴィス ロンドン響 モーツァルト・ピアノ協奏曲13&11番
通販レコード→英 レッド・ラベル銀文字盤

NL PHIL 835 392AY ヘブラー&ディヴィス モーツァルト・ピアノ協奏曲13&11番

商品番号 34-10685

密閉されたフラスコの中で丁寧に醸成されたブランデーのような趣きがある予定調和の世界。この上なく、精緻なモーツァルト ― どうしても奏者側の思い入れが少なからず混入してしまうので、それではモーツァルトの天国的な音楽が地上に降りて来てしまいます。》ヨーロッパ屈指の家電&オーディオメーカーであり、名門王立コンセルトヘボウ管弦楽団の名演をはじめ、多くの優秀録音で知られる、フィリップス・レーベルにはハスキルやグリュミオー、カザルスそして、いまだクラシック音楽ファン以外でもファンの多い、「四季」であまりにも有名なイタリアのイ・ムジチ合奏団らの日本人にとってクラシック音楽のレコードで聴く名演奏家がひしめき合っている。創設は1950年と後発だが、オランダの巨大企業フィリップスが後ろ盾にある音楽部門です。ミュージック・カセットやCDを開発普及させた業績は偉大、1950年代はアメリカのコロムビア・レコードのイギリス支社が供給した。そこで1950年から60年にかけてのレコードには、米COLUMBIAの録音も多い。1957年5月27~28日に初のステレオ録音をアムステルダムにて行い、それが発売されると評価を決定づけた。英DECCAの華やかな印象に対して蘭フィリップスは上品なイメージがあった。イングリッド・ヘブラーほど、その主要レパートリーをモーツァルトに特化して演奏をし続けているピアニストは稀であるといえよう。ヘブラーのモーツァルトは密閉されたフラスコの中で丁寧に醸成されたブランデーのような趣きがあり、こんなにレコーディングと生の印象が変わらないピアニストはあまり他に類例がないかもしれません。ヘブラーの作り込まれたモーツァルトは予定調和の世界であり、これ以上ないほどに精緻に作り込まれたものです。その虚無的なほどに禁欲的なヘブラーの演奏は、意外性のない面白みに欠けるという感想も出るだろう。かつてのモーツァルト演奏を振り返りながらヘブラーを聴くと、現在のモーツァルトのピアノ協奏曲を弾くピアニストの演奏は随分様変わりしました。大きく変わったのは繰り返しに際しエンベリッシュメントを加えるのが普通になったことです。それに慣れてしまった耳には、緩徐楽章においても何の装飾も加えないヘブラーの演奏には少々違和感を覚えるものです。彼女自身モーツアルトと同じ墺太利出身と云うことも関係しているのかもしれません。マイセンの陶磁器を思えばいいでしょう。マイセンの魅力に等しく、ヘブラーだけの閉じられた世界ならではの魅力が感じられます。こうした手工芸品のようなモーツァルトがこの世に存在したことは、たいへん幸せなことだと思います。音楽性と技巧をひたすらモーツァルトの音楽に奉仕させるという姿勢を貫いている。その潔さとあくまでも古典派の音楽へのアプローチとしての自由自在な表現が円熟期を迎えた彼女の到達しえた解釈なのだろう。ただここでのモーツァルトは決して枯淡の境地的なものではなく、むしろ清冽な響きで奏でた瑞々しい音楽が印象的だ。サー・コリン・デイヴィスは、1927年イギリスのウェイブリッジ生まれ。1957年から本格的指揮者となりロンドン交響楽団、ロイヤル・オペラ・ハウス、BBC交響楽団、イギリス室内管弦楽団といった有数のオーケストラを指揮し特にモーツァルトやシベリウス、ベルリオーズといった作曲家の作品を得意とし数多くの名盤を残しました。1967年BBC交響楽団の首席指揮者、1971年ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督、そして1982~1992年バイエルン放送交響楽団の首席指揮者、1995~2006年ロンドン交響楽団の首席指揮者を務めてきました。また1977年にはイギリス人として初めてバイロイト音楽祭で指揮しています。またボストン交響楽団の首席客演指揮者やシュターツカペレ・ドレスデンの名誉指揮者でもありました。デイヴィス自身「モーツァルトは人生そのもの」という言葉の通り、デイヴィスは、モーツァルト作品に内包するドラマやパトスを表出することのできる数少ない音楽家でもありました。この時期にフィリップスに録音した類まれなモーツァルティアンの名演奏は、そのほとんどが綿密に制作されたセッション録音である点も大きな特徴です。ロンドン交響楽団はワトフォード・タウン・ホールなど、ヨーロッパでも最も音響効果のよいホールで収録されており、そのバランスの取れたヨーロピアンな完熟のサウンドは、この時期のデイヴィスの音づくりを忠実に反映したものと言えるでしょう。そうしたデイヴィスの万全なサポートを得た一連のフィリップスの録音は、20世紀モーツァルト演奏の金字塔と言えるでしょう。久しぶりに聴いたヘブラーのすっきりとしていながら味わいの深い一昔前のモーツァルト演奏には、奏者のマニエリスムが強く表面に出されるようになった現在の演奏にはない新鮮さが感じられます。加えて当然ながら録音は素晴らしい、永遠に定番として君臨すると思います。
関連記事とスポンサーリンク