職人的オペラ達人らしい入魂の序曲集 ― 同時期にメトロポリタン・オぺラによく客演していたチェコ出身の指揮者のクルト・アドラー(1907〜1977)と、似た名前で混同されることもありますが、クルト・ヘルベルト・アドラー(Kurt Herbert Adler, 1905〜1988)はオーストリア出身の指揮者。ザルツブルクやイタリアでアルトゥーロ・トスカニーニの助手を務めましたが、ユダヤ系だったためナチから逃れるためアメリカへ移住。最初、シカゴ・リリック・オペラでアシスタント・ディレクターを務めた後、サンフランシスコ・オペラの合唱指揮者となり、その後、同劇場の音楽監督に就任すると辣腕を振るい、多くの歌手に門戸を開くなど、様々な演目や出演者の改革・強化を行い、またジャン=ピエール・ポネルら才能ある演出家とつながりを深くし舞台のレベル・アップを図るなど、長きに渡って同劇場の活性化に努めました。アドラーは、1953年から1981年までの30年近くもサンフランシスコ・オペラの音楽監督を務めて多忙だったこともあり、録音にはあまり恵まれませんでしたが、デッカにはオペラに関わる序曲集やアリア集の伴奏などをいくつか残していました。珍しいオペラの序曲が6曲収録されている本盤は、マイナー作品や新作紹介にも熱心だったアドラーならではの企画といえるものかもしれません。この職人的オペラ達人らしい入魂の序曲集を聴くことができます。
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Kurt Herbert Adler, National Philharmonic Orchestra – Overture
- Side-A
- ニコライ:歌劇『神殿の騎士』序曲 Overture "Der Tempelritter", Composed By – Otto Nicolai 8:54
- シュレーカー:歌劇『烙印を押された人々』より第1幕への前奏曲 Overture "Die Gezeichneten", Composed By – Franz Schreker 11:30
- ヴォルフ:歌劇『お代官様』序曲 Overture "Corregidor", Composed By – Hugo Wolf 5:26
- Side-B
- ヴェーバー:歌劇『3人のピント』序曲 Intermesso Before Act II Of "Die Drei Pintos", Composed By – Carl Maria von Weber, Gustav Mahler 5:53
- ゴルトマルク:歌劇『マーリン』序曲 Overture "Merlin", Composed By – Karl Goldmark 12:45
- ヘルマン・ゲッツ:歌劇『フランチェスカ・ダ・リミニ』序曲 Overture "Francesca Von Rimini", Composed By – Hermann Goetz 9:55
ステレオ録音黎明期1958年から、FFSS(Full Frequency Stereophonic Sound)と呼ばれる先進技術を武器にアナログ盤時代の高音質録音の代名詞的存在として君臨しつづけた英国DECCAレーベル。第2次世界大戦勃発直後の1941年頃に潜水艦ソナー開発の一翼を担い、その際に、潜水艦の音を聞き分ける目的として開発された技術が、当時としては画期的な高音質録音方式として貢献して、レコード好きを増やした。繰り返し再生をしてもノイズのないレコードはステレオへ。レコードのステレオ録音は、英国DECCAが先頭を走っていた。1958年より始まったステレオ・レコードのカッティングは、世界初のハーフ・スピードカッティング。 この技術は1968年ノイマンSX-68を導入するまで続けられた。英DECCAは、1941年頃に開発した高音質録音ffrrの技術を用いて、1945年には高音質SPレコードを、1949年には高音質LPレコードを発表した。1945年には高域周波数特性を12KHzまで伸ばしたffrr仕様のSP盤を発売し、1950年6月には、ffrr仕様の初のLP盤を発売する。特にLP時代には、この仕様のLPレコードの音質の素晴らしさは他のLPと比べて群を抜く程素晴らしく、その高音質の素晴らしさはあっという間に、当時のハイファイ・マニアやレコード・マニアに大いに喜ばれ、「英デッカ=ロンドンのffrrレコードは音がいい」と定着させた。日本では1954年1月にキングレコードから初めて、ffrr仕様のLP盤が発売された。その後、1950年頃から、欧米ではテープによるステレオ録音熱が高まり、英DECCAはLP・EPにて一本溝のステレオレコードを制作、発売するプロジェクトをエンジニア、アーサー・ハディーが1952年頃から立ち上げ、1953年にはロイ・ウォーレスがディスク・カッターを使った同社初のステレオ実験録音をマントヴァーニ楽団のレコーディングで試み、1954年にはテープによるステレオの実用化試験録音を開始。この時にスタジオにセッティングされたのが、エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏によるリムスキー=コルサコフの交響曲第2番「アンタール」。その第1楽章のリハーサルにてステレオの試験録音を行う。アンセルメがそのプレイバックを聞き、「文句なし。まるで自分が指揮台に立っているようだ。」の一声で、5月13日の実用化試験録音の開始が決定する。この日から行われた同ホールでの録音セッションは、最低でもLP3枚分の録音が同月28日まで続いた。そしてついに1958年7月に、同社初のステレオレコードを発売。その際に、高音質ステレオ録音レコードのネーミングとしてFFSSが使われた。以来、数多くの優秀なステレオ録音のレコードを発売。そのハイファイ録音にステレオ感が加わり、「ステレオはロンドン」というイメージを決定づけた。Hi-Fiレコードの名盤が多い。
- Record Karte
- 1978年6月ロンドン、キングズウェイ・ホール、ステレオ(アナログ/セッション)録音。
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