34-14508

商品番号 34-14508

通販レコード→蘭 "CBS RECORDS MASTERWORKS" ブルー・レーベル黒文字盤 STEREO DIGITAL

メータ/ニューヨーク・フィルの雄大なサポートを得て、輝きに満ちたカバリエの声は、ワグネリアン・ソプラノとしての新たな領域を開いた。 ―  オペラ歌手のアリア集やリサイタル盤は、大抵の場合、その歌手の得意なレパートリーで飾られているが、時には舞台では滅多に歌わない、或いは歌ったことのないレパートリーで聴き手を大いに楽しませてくれるレコードもある。モンセラット・カバリエが歌ったこのワーグナーは、それもとびきり興味深い1枚といって良いだろう。曲は楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と〝愛の死〟、歌劇「さまよえるオランダ人」より〝ゼンタのバラード〟、歌劇「タンホイザー」より〝貴き殿堂よ〟、楽劇「神々の黄昏」より〝ブリュンヒルデの自己犠牲〟 ― 素晴らしい美声と豊かな声量、そして絶妙な技を合わせ備えたカバリエは、イタリア、フランス・オペラだけでなく、ドイツ・オペラにも定評があり、大変に幅広いレパートリーを誇っている。彼女のファンならば、カバリエにリヒャルト・シュトラウスの楽劇「サロメ」からのモノローグと歌曲を歌ったレコードがあることを、また実際にも彼女が舞台で「薔薇の騎士」「ナクソス島のアリアドネ」そして「サロメ」などを歌っていることも御存知だろう。ただ、ワーグナーとなると ― 本盤が発売された頃の日本で知り得る情報では ― 「タンホイザー」のエリーザベトと「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のエヴァを歌ったという記録だけで、それも彼女のデビュー間もない1950年代末から60年代初めのことである。それだけに、カバリエがワーグナーを歌って、それも「さまよえるオランダ人」のゼンタ、イゾルデ、ブリュンヒルデまで歌って1枚のレコードをつくるとは、夢にも思っていなかったのだが、円熟期にあったその歌唱は、お聴きのようにとても素晴らしい。彼女に合った「タンホイザー」のエリーザベトの「貴き殿堂よ!」は勿論だが、「イゾルデの愛の死」におけるその美声と絶妙な技を駆使した繊細な表現力、「ゼンタのバラード」における伸びやかな声と、特に祈りの表現の際立った美しさ、そして長大な「ブリュンヒルデの自己犠牲」を少しも弛緩させぬ的確な劇性と回想の部分での思いのこもった表現力など、いずれもカバリエならではの声と歌を堪能させてくれる。そして、そうしたカバリエの持ち味をよく心得たズービン・メータとニューヨーク・フィルハーモニックが、抑制のきいた表現でくっきりと歌を支えているのも好ましい。
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Wagner, Montserrat Caballé, New York Philharmonic, Zubin Mehta ‎– Excerpts From Tristan Und Isolde, Götterdammerung, Der Fliegende Holländer, Tannhäuser, CBS Masterworks ‎– D 37294
  • Side-A
    1. Tristan Und Isolde: Prelude & Liebestod
    2. Der Fliegende Holländer / Le Vaisseau Fantôme: Senta's Ballad
  • Side-B
    1. Tannhäuser: Elisabeth's Aria ("Dich, Teure Halle")
    2. Götterdämmerung / Le Crépuscule Des Dieux: Brünnhilde's Immolation Scene
レコードで聴いたズービン・メータで一番のお気に入りは1972年にロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、ジョーン・サザーランド、ルチアーノ・パヴァロッティ、モンセラット・カバリエ、ニコライ・ギャウロフというオールスターキャストで録音したプッチーニの未完の歌劇「トゥーランドット」である。この演奏は素晴らしい。まずテンポとリズム感が良い。そしてプッチーニのオーケストレーションを完璧に理解して演奏している稀有な例だと思っている。音楽の流れが自然でそしてふんわりと浮くように軽い。いたずらにアクセントを強調するわけでなく、快活そのもの。有名なフランチェスコ・モリナーリ=プラデッリ盤(EMI)やヘルベルト・フォン・カラヤン盤(ドイツ・グラモフォン)よりもワクワクして聴ける。
カバリエの声質はリリコ・スピントにいくらかコロラチューラが混じったソプラノである。この珍しい組み合わせを利して、ときには二週間以内に、シュトラウスのアリアドネ、ワーグナーのジークリンデ、ロッシーニのセミラーミデを替わるがわる歌うこともできるという ― ギリシャ人音楽評論家ヘレナ・マテオプーロス
彼女は一時ポピュラー音楽の世界にも踏み出し、イギリスのロックバンド、クイーンのヴォーカルで、モンセラット・カバリエを尊敬していたフレディ・マーキュリー(Freddie Mercury, 1946.9.5〜1991.11.24)とのデュエット『バルセロナ』(フレディ・マーキュリー作)は1992年バルセロナ・オリンピックのテーマ音楽となった。1987年初頭にトレードマークだったヒゲを落とし、精悍なジェントルマンの風情である。マーキュリーはこの曲でハスキーなロックの強い歌い方ではなく、なんとファルセットでソプラノ音域を歌っている。コーダはカバリエの長いトリルだが、マーキュリーも下から主音へ向けてトリルしながら上がり、延ばす。かなり高い声楽の技術である。フレディの音域は地声でhi B♭までと広い。ファルセットではその1オクターブ上のソプラノ音域まで出る。カバリエの音域はもちろんソプラノなので、hihi Dは軽い。スパッと音程を当て、金色の糸のような声をピアノで伸ばし、無音までディミヌエンドするのはカバリエの得意な技術で、だれしも心を揺さぶられる。そしてだれにもできない高度な技術である。フレディのすごさは、地声でテノールの音域が出ることである。したがって、金の糸のようなカバリエのソプラノと、ややハスキーで力強いフレディの地声テノールが絡まる。ほとんど聴いたことのない世界だ。マーキュリーが初めて劇場でカバリエを聴いたのは1981年だったらしい。ボクはときどきオペラやバレエを観に行くんだ。パヴァロッティが出演するオペラをコヴェントガーデン(王立歌劇場)へ観にいった。ソプラノが歌い始めたとき、本当に驚いたんだ。記録映画「FREDDIE MERCURY ― The Great Pretender(フレディ・マーキュリー神話~華麗なる生涯)」(日本版、ワードレコーズ、2012)でマーキュリー本人が話している。大ロック・スターと大オペラ・スターのクロスオーバーである。これはもう実際に聴いていただければわかるが、震え上がるほどの素晴らしさである。
なお、彼女の略歴を簡単にご紹介しておくと、モンセラット・カバリエ(Montserrat Caballé)は1933年4月12日、スペイン・カタルーニャのバルセロナの生まれ。同地の音楽院とミラノで学んで、1956年バーゼル市立劇場でプッチーニのオペラ「ボエーム」のミミを歌ってデビュー、1959年まで同市立劇場、1959〜1962年にはバーゼル市立歌劇場で歌ったが、この間ウィーン国立歌劇場やミラノ・スカラ座にもデビューした。そして、1965年マリリン・ホーン(Marilyn Horne)の代役としてニューヨークのカーネギー・ホールで、ドニゼッティのベルカント・オペラ「ルクレツィア・ボルジオ」の復活上演を歌ってセンセーショナルな成功を収め、以後メトロポリタン歌劇場を中心に華々しい活躍を行い、ミラノ・スカラ座やロンドンのコヴェント・ガーデン王立歌劇場をはじめ世界各地の主要歌劇場に出演して、現代最高のプリマ・ドンナとして圧倒的な評価と人気を博している。マリア・カラス(Maria Callas, 1923〜1977)の次の世代を代表するスーパー・ディーヴァである。日本にも何度も来ている。彼女はベルカント・オペラを当たり役としているが、バロックからヴェルディ、ヴァーグナー、プッチーニ、さらにリヒャルト・シュトラウスの元帥夫人(楽劇『ばらの騎士』)や『楽劇サロメ』の主役に至る実に80もの役柄を歌った経験がある。 また彼女はリサイタルも得意で、とくに母国スペインの歌曲の歌唱が名高い。〝ベルカント〟には、いろいろな解釈がある。クラシックの声楽全般をベルカントと呼ぶ場合もあるが、おもにイタリア・オペラで低音から高音まで美しく一定の声質を維持しながら歌唱テクニックを披露するタイプのオペラを「ベルカント・オペラ」という。つまり、演劇性よりも歌唱の技術を重視するオペラだ。反対に、軽快な美しさよりも劇的なダイナミズムを重視するタイプをイタリアでは「ヴェリズモ・オペラ」という。ヴェリズモとはリアリズムといった意味だ。ズービン・メータは、記録映画「カバリエの肖像(Caballe, beyond Music)」(TDK、2006)で「劇的なオペラも、軽くて技巧的なオペラも両方できる」という意味でカバリエはリリコ・スピントとベルカントの二つを兼ねる声で、理想的なヴェルディを歌うと説明する。リリコ・スピントはやや重い声質で、さらに重いドラマティコの手前。コロラチューラはいちばん軽い声質で、俊敏な動きをもって多様で速い装飾音を付けられるタイプのソプラノである。両方兼ね備える歌手はあまりいない。カバリエの声は純粋な声質、正確なコントロールと力強さが顕著である。彼女は劇的な才能や演技力よりは、高度な歌唱力や陰影にとんだ声色、そして絶妙なピアニシモが評価されている。今では彼女はステージを引退し、以後さまざまな慈善活動に貢献している。彼女はユネスコ親善大使にも就任しており、バルセロナで貧しい子供たちのための基金を設立した。
スコア3ページをワン・ブレスで、声の糸となって深く心を打つ。あんな高音のピアノ(弱音)はめったに聴けない ― プラシド・ドミンゴ
2018年4月に82歳を迎えた指揮者ズービン・メータは1936年インドのボンベイ生まれ。ウィーン、イギリスでキャリアをスタートし、瞬く間にオーケストラ、オペラ指揮者として脚光を浴びるようになりました。父メーリ・メータも指揮者であり、地元のボンベイ交響楽団の指揮者として活動した。音楽教育にも活躍していて、音楽は伝統に基づき約束事、理論が9割で後は演奏者や楽団の個性が1割と常々話してたそうです。コンサートのみならず、オペラにおけるレパートリーも広範にわたる。響きは豊潤、スケールは雄大であり、かつての巨匠指揮者を偲ばせる芸風である。メータの若き日々の演奏は、精力的であるとともに、大人びた風格も備わってました。不敵な若き巨匠だったのです。1965年にメトロポリタン歌劇場でヴェルディの『アイーダ』、ザルツブルク音楽祭でモーツァルトの『後宮からの誘拐』を指揮し大成功を収めた。各地での野外オペラや、三大テノールといった大きなイベントをまとめ上げる手腕は、高く評価されている。これまで5度、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による新年恒例のニューイヤーコンサートの指揮台に立った。1961年からモントリオール交響楽団、ロサンジェルス・フィルハーモニック、ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を歴任し、フィレンツェ歌劇場の首席指揮者、バイエルン州立歌劇場の音楽監督としても腕を振るいました。ロサンジェルス・フィル辞任後、1978年にピエール・ブーレーズの後任としてニューヨーク・フィルの音楽監督に就任。13年という同フィル史上最も長い在任期間であり、「最も優れたオーケストラ・コントロール」と賞賛されました。ニューヨーク・フィル時代にメータはCBSに録音を開始します。ストラヴィンスキー「春の祭典」を皮切りに、「惑星」「ツァラトゥストラ」「展覧会の絵」「ペトルーシュカ」「巨人」など、華やかなオーケストラ曲を中心に数多くの名盤を残しました。共演者も、アイザック・スターン、ダニエル・バレンボイム、ピンカス・ズッカーマンなど、メータの盟友でもある名ソリストたちが参加し、見事な音楽の美しさを表現された名演揃いです。オペラ作品の録音も多く、いずれも高水準である。
Producer – David Mottley, Engineer – Bud Graham, 1983年リリース。
NL CBS  D37294 モンセラート・カバリェ ワーグナー・オ…
NL CBS  D37294 モンセラート・カバリェ ワーグナー・オ…