〝稀代の名音楽家のものとなると、そんな概念を越えて胸に迫る何かがあるものだ〟 ― 昨日は「古典組曲」から「近代組曲」への変化や、録音を陣頭指揮したピーター・バルトークについてと併せて、録音に使用されたチェロ「ロード・アイレスフォード」に纏わる話もしましたから、今日はこの曲の独特な楽器の話から。ヴェルディはオペラ《アイーダ》の上演に際し、自らがデザインした柄の長い「エジプト風」特製トランペット ― アイーダ・トランペットを用いることを全歌劇場に望んだ。ヴェローナの楽器製作者が24本の〝アイーダ・トランペット〟を製作し貸し出していたが、その多くは第2次世界大戦で失われてしまったという。1979年、この曲の録音とザルツブルクでの上演を前に、ヘルベルト・フォン・カラヤン&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、日本のYAMAHAに〝アイーダ・トランペット〟を作らせている。ウィーン・フィルは楽器は楽団持ちなので、その後も同楽団が《アイーダ》を上演する時にはYAMAHA製のそれが使われたはずである。また、それとは別にニコラウス・アーノンクールは、主要歌劇場でヴェルディが作らせた楽器の残りを捜索したが見つけられず、新たに特別注文製作し、2001年の録音にもそれを用いた。特にビルギット・ニルソンのタイトルロールは抵抗ないどころかそこらへんのイタリアオペラ中心の歌手より聴かせてくれた。第4幕第2場のシェーナ「死の運命の石が私の上に閉ざされた」における、ラダメスの思いのこもる静かな歌に応えるニルソンのアイーダの内なる情念。なんたる張りのある美しい声。あるいは、第3幕のアモナズロとの二重唱「薫る森林を、爽やかな谷間を」の、父を思う娘アイーダの可憐な表現と、恋人ラダメスから出兵するエジプト軍の進路を聞き出すよう強要されたときの驚愕の表現、そして祖国への忠義を決意した後のアイーダの哀しみ含まれる強さの声の七変化はニルソンの真骨頂であり、聴きどころ。
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- Record Karte
- 1966年録音
- ビルギット・ニルソン - Birgit Nilsson(ソプラノ)
- フランコ・コレッリ - Franco Corelli(テノール)
- グレース・バンブリー - Grace Bumbry(ソプラノ)
- マリオ・セレーニ - Mario Sereni(バリトン)
- ボナルド・ジャオッティ - Bonaldo Giaiotti(バス)
- フェルッチョ・マッツォーリ - Ferruccio Mazzoli(バス)
- ピエロ・デ・パルマ - Piero De Palma(テノール)
- ミレッラ・フィオレンティーニ - Mirella Fiorentini(メゾ・ソプラノ)
- ローマ歌劇場合唱団 - Rome Opera House Chorus
- ローマ歌劇場管弦楽団 - Rome Opera House Orchestra
- ズービン・メータ - Zubin Mehta(指揮)
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