34-29976

ウィーン情緒あふれる傑作オペレッタ ― オペラの分野でも数々の実績を残したカラヤンの代表的な名盤。

英デッカ社のオペラ第一黄金期を象徴する ― バイロイトの第九とはまた違った、時代を反映した記録としての録音としても ― 傑作と言える。

1960年はヘルベルト・フォン・カラヤンがウィーン国立歌劇場の監督をしていた、名実ともにヨーロッパの楽壇の帝王であった全盛時代の名演である。魅力を列挙しますと、〈カラヤンと当時、関係良好だったウィーン・フィルとの録音〉、〈カルーショーお気に入りだったリング収録場所、ウィーンのソフィエンザールでの録音セッション〉。
何よりも、歌手陣がいかにも豪華だ。当時のウィーンで活躍していたヒルデ・ギューデン、ヴァルデマール・クメント、エリカ・ケート、そしてヴァルター・ベリーなどの歌手陣だけでも豪華なのに、加えてガラ・パフォーマンスはレナータ・テバルディ、ビルギット・二ルソン、マリオ・デル=モナコ、テレサ・ベルガンサ、レオンタイン・プライスなど、レコード録音だからこそ実現可能にしたオペラの主役級の超豪華歌手陣を揃えている。当時の帝王カラヤンの有無を言わせぬ圧倒的な権威を象徴するものと言えるだろう。
そして、これら超豪華歌手陣を圧倒的な統率力で纏め上げたカラヤンの力量も驚異的の一言であり、《こうもり》という娯楽作を一流の芸術作品にまで引き上げた手腕は、さすがという他はない。
カラヤン&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団も実に躍動感溢れる演奏を行っており、ウィーン・フィルが腰の据わった雄弁な表現をしていて全く申し分なし。ヨハン・シュトラウス2世の喜歌劇《こうもり》は毎年大晦日に必ず上演する演目なのでウィーン・フィルにとっては勝手知ったる曲目。ガラ・パフォーマンスが盛り込まれるのも慣れたもの。《こうもり》に必要不可欠の、「会議は踊る」といった表現に相応しいウィーン風の高貴かつ優美な雰囲気の醸成にもいささかの不足はない。
この《こうもり》にはカルロス・クライバーの名演もあるが、歌手陣の豪華さ、そしてカラヤンの圧倒的な統率力、ウィーン・フィルの高貴にして優美な演奏に鑑みれば、カラヤンの2度目の録音となる本盤の演奏を同曲随一の名演と評価することに、わたしは躊躇しない。
然るに、録音から半世紀近く経ているが、カラヤンは聴き手が望んでいることを完全に読み取ることができたのだろう。そして、それを自分が意のままにできるウィーン・フィルという最高の楽器によって実現出来たのである。そうした姿勢がアンチカラヤンを作ってしまったのだろうが、カラヤンがやってきたことは他の指揮者は出来るのだろうか?
自分の思い通りにオーケストラをドライブするという技術において、カラヤンの右に出る者はいないと本盤を聴く度に思います。
ウィーン・フィルの持ち味を最大限活かして、蠱惑的な響きで聴き手の耳をくすぐる。ウィーン・フィルの奏でる美音は、このオペラの他の録音とは全く別次元の高みに達しています。豊麗にして精妙無比、まさに耽美の極みです。まず第一にお奨めする《こうもり》。カラヤンやカルーショー・ファン必携アイテムです。

レコード界唯一のステレオ!(当時)

第二次世界大戦は日本軍の無条件降伏、ポツダム宣言で集結したが終わっていない戦いもあった。戦後、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの勢力下、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で演奏することさえ制限されたヘルベルト・フォン・カラヤン。そこへ救いの手を差し出したのが英国 EMI の名プロデューサー、ウォルター・レッグだった。カラヤンのレコーディング専用オーケストラ、フィルハーモニア管弦楽団でたくさんのレコードを発売。劇場での指揮は出来ずとも、レコードでカラヤンの名前は全世界に知られるようになる。ただカラヤンの悪い虫が騒いだというのか、オーディオへの関心を深めることになった。
そして彼はステレオ録音を希望したが、折り悪く英国 EMI の経営陣はステレオ録音に懐疑的だった。不満を払拭できないままカラヤンは EMI との契約更新を曖昧に引き伸ばしていた。そうこうしていると、フルトヴェングラーが急死。カラヤンはウィーン・フィルに復帰できた。以来、名門ウィーン・フィルとも生涯深い関係を築く事になるのだが、しかし、ウィーン・フィルは英国 DECCA と専属関係にあったので、カラヤン指揮ではレコードを作れない。そこに接近してきた英国 DECCA 社では、1959年に EMI と契約の切れたカラヤンと契約。そのことでカラヤンは、この愛すべきオーケストラとの録音をドイツ・グラモフォンではなく、イギリス・デッカと行いました。結果、1960年代に残されたものは、どれもが名盤と呼ぶにふさわしいもので、LP発売以来、長らくファンに愛され続けてきました。

  • (配役)
    • ロザリンデ:ヒルデ・ギューデン(ソプラノ)
    • アイゼンシュタイン:ヴァルデマール・クメント(テノール)
    • アデーレ:エリカ・ケート(ソプラノ)
    • ファルケ:ヴァルター・ベリー(バス)
    • フランク:エーベルハルト・ヴェヒター(バリトン)
    • オルロフスキー公:レジーナ・レズニック(メッゾ・ソプラノ)、他
  • (ガラ・パフォーマンス)
    • レナータ・テバルディ/「メリー・ウィドウ」~ヴィリアの歌(レハール)
    • フェルナンド・コレナ/ドミノ(ヴォルフ=フェラーリ)
    • ビルギット・ニルソン/「マイ・フェア・レディ」~踊り明かそう(フレデリック・ロウ)
    • マリオ・デル=モナコ/パッショーネ(ヴァレンテ)
    • テレサ・ベルガンサ/バスク地方の子守唄(ラヴィラ)
    • ジョーン・サザーランド/口づけ(アルディーティ)
    • ユッシ・ビョルリンク/「微笑みの国」~君はわが心のすべて(レハール)
    • レオンティン・プライス/「ポーギーとベス」~サマータイム(ガーシュウィン)
    • ジュリエッタ・シミオナート&エットーレ・バスティアニーニ/「アニーよ銃をとれ」~なんでもあなたはできる(バーリン)
    • リューバ・ヴェリッチ/わが夢の都ウィーン(ジーツィンスキー)
斯くて、1965年までカルーショーが後世に伝えるに相応しいカラヤン&ウィーン・フィルの名盤をこの6年間で製作することになる。
制作は英 DECCA のジョン・カルーショー、エンジニアはジェームス・ブラウン&ゴードン・パリーの二頭立てという『ショルティの指輪』制作陣がそのまま担当するという力の入れよう。後世に語り継がれるオペラを、ウィーンのソフィエンザール(カルーショーがお気に入りだったリング収録場所)で着手。
その録音セッショッンの合い間にカルーショーは有名管弦楽曲の録音。何れも全体に覇気が漲っていて、弦も管も美しく技巧的にも完成度は高い名盤を量産。後の EMI や DGG のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団盤にはない魅力タップリのまったく聴いていてダレるような箇所がない。
ヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮する曲は概して大胆さや迫力にプラスして、丁寧でかつ美しいということです。とりわけ、ゆっくりのテンポの美しい旋律は、カラヤンの最も得意とする部分だと思います。例えば、怒濤のような旋律の中で、ぱっと花が咲くように美しいメロディーが流れる。この点にかけては、カラヤンは見逃さず見事に再現している。彼一流の粘り、盛り上げはすでに十分。

  • Record Karte
    • 録音は1960年6月12~20日ウィーン、ゾフィエンザールでのステレオ・セッション。プロデューサー:ジョン・カルーショー、エンジニア:ジェームス・ブラウン&ゴードン・パリー。
    • STEREO 3枚組 (190g/200g/190g)
    • Stamper ZAL-1E/1E 2E/2E 1E/2E
    • カラヤンがウィーン国立歌劇場の芸術監督を務めていた絶頂期にウィーン・フィルと超豪華歌手陣で録音された名盤。ヒルデ・ギューデンの優美なロザリンデをはじめ脇役にいたるまで選りすぐりの名歌手が繰り広げる個性豊かな歌唱とカラヤンの精緻で揺ぎない指揮が絶妙の均整を保った奇跡的な録音。第2幕でのガラ・パフォーマンスではデッカのオールスターキャストがポピュラーソングを披露する遊び心満点のセットです。

販売レコードの写真

  1. JP LON SLX3-12 カラヤン J.シュトラウス2世・喜歌劇…
  2. JP LON SLX3-12 カラヤン J.シュトラウス2世・喜歌劇…
  3. JP LON SLX3-12 カラヤン J.シュトラウス2世・喜歌劇…

CDはアマゾンで

J.シュトラウスII世:喜歌劇「こうもり」
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ユニバーサル ミュージック
2018-03-07

関連記事とスポンサーリンク

第2次世界大戦時の潜水艦防衛技術(ffrr)から、〝ステレオはロンドン〟(FFSS)へ

第二次世界大戦勃発直前の1941年頃に潜水艦ソナー開発の一翼を担い、その際に、潜水艦の音を聞き分ける目的として開発され、当時としては画期的な高音質録音方式であった。
英デッカは、1941年頃に開発した高音質録音〝ffrr〟の技術を用いて、1945年には高域周波数特性を12KHzまで伸ばした高音質SPレコードを発売し、1949年には高音質LPレコードを発表した。1950年6月には、ffrr仕様の初のLP盤を発売する。その高音質の素晴らしさはあっという間に、オーディオ・マニアや音楽愛好家を虜にしてしまった。
その後、1950年頃から、欧米ではテープによるステレオ録音熱が高まり、イギリス・デッカはLP・EPにて一本溝のステレオレコードを制作、発売するプロジェクトをエンジニア、アーサー・ハディーが1952年頃から立ち上げ、1953年にはロイ・ウォーレスがディスク・カッターを使った同社初のステレオ実験録音をマントヴァーニ楽団のレコーディングで試み、1954年にはテープによるステレオの実用化試験録音を開始。この時にスタジオにセッティングされたのが、エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏によるリムスキー=コルサコフの交響曲第2番「アンタール」。その第1楽章のリハーサルにてステレオの試験録音を行う。アンセルメがそのプレイバックを聞き、「文句なし。まるで自分が指揮台に立っているようだ。」の一声で、同年5月13日の実用化試験録音の開始が決定する。この日から行われた同ホールでの録音セッションは、最低でもLPレコード3枚分の録音が同月28日まで続いた。
特にLP時代には、この仕様のLPレコードの音質の素晴らしさは他のLPと比べて群を抜く程素晴らしく、当時のハイファイ・マニアやレコード・マニアに大いに喜ばれ、「英デッカ=ロンドンのffrrレコードは音がいい」と定着させた。日本では1954年1月にキングレコードから初めて、ffrr仕様のLP盤が発売された。
そしてステレオ録音黎明期れいめいき。レコードのステレオ録音は、英国デッカが先頭を走っていた。その技術を受け継いだステレオ・レコードを発表。ついに1958年7月に、同社初のステレオレコードを発売。その際に、高音質ステレオ録音レコードのネーミングとして〝ffss(Full Frequency Stereophonic Sound 全周波数立体音響)〟が使われた。
そのハイファイ録音にステレオ感の良さが加わり、以来、数多くの優秀なステレオ録音のレコードを発売し、アナログ盤時代の高音質録音の代名詞的存在として「ステレオはロンドン」というイメージを決定づけ君臨し続けた。
1958年より始まったステレオ・レコードのカッティングは、世界初のハーフ・スピードカッティング。この技術は1968年ノイマンSX-68を導入するまで続けられた。

Hi-Fiレコードの名盤が多い、イギリス・デッカのセンター・レーベルのデザインは年代別に4つのグループに分けることができる。それぞれを、English DECCA を記号化してオーディオファイルは ED1, ED2, ED3, ED4と呼んでいる。また、それら中でも、ED1からED3までを「ラージ・ラベル」、ED4を「スモール・ラベル」と大別している。ラージ・ラベルはスモール・ラベルよりもセンターレーベルの大きさがひとまわり大きく、レーベル中にデザインされている銀色の帯(黒色で「 FULL FREQUENCY 」と書かれている)の幅が13ミリメートルありED4よりかなり広いため、「ワイド・バンド」とも呼ばれています。SXL ナローバンドは、ED4スモール・ラベルと日頃は呼んでいます。ED1から比べると中央の「FULL FREQUENCY ...」の幅が狭くなり重量も軽くなります。ナローバンドが初版になるLPも多くあり、製盤技術、材質は安定していて再生の難しいED1と比べて再発盤でも初版より優れているケースも有ります。SXL 6435と 6447、6449以降はナローバンドが初版となります。総じて価格は手頃ですが、SXL6529(ズービン・メータ指揮ロサンゼルス・フィルハーモニック ホルスト 組曲「惑星」)、SXL6721(チョン・キョン・ファ ヨハン・ゼバスティアン・バッハ パルティータ)等は高額です。この2枚はジャケットの痛みが激しくても一度は手元に置きたいと思うものなのでしょう。


商品名JP LON SLX3-12 カラヤン J.シュトラウス2世・喜歌劇「こうもり」(全曲)(ガラ・パフォーマンス付き)