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通販レコード→JP キングレコード社製 英国DECCA社同一スタンパー使用 白テスト盤

メルヘン的な音楽空間を描き出している第1番。 ― ベートーヴェンの若さが溢れているし、ベートーヴェンがその当時足場を固めていた煌びやかな社交界の雰囲気も醸し出してもいる。

文豪夏目漱石が、明治34年ロンドンに留学していた時にバックハウスを聴いている。その時のお目当てはイタリア人歌手、アデリーナ・パッティの独唱会だったのでピアノについての言及はない。この時、グリーグとリストの小品を弾いているが夏目漱石の耳にはどう聴こえたのだろう。
鍵盤の獅子王と異名をとる日本でとりわけ人気の高いピアニスト、ヴィルヘルム・バックハウスによる楽聖ベートーヴェンの協奏曲。そのバックハウスのピアニズムは言い尽くされている通り、特徴が無いのが特徴といえるでしょうか。要は、テクニックをひけらかすわけでもなく、その澄んだ音色ともあいまって、ひどくシンプルなのです。でも、繰り返し聞いていると何か、そのピアノが、まるで、融通無碍の境地で、自由にベートーヴェンの音符と戯れているように、静かな所は静かに、激しいところは激しく聴こえて来るところが、彼の魅力と言えるでしょうか。
このバックハウスを土台からしっかり支えているのが、壮年期で充実しかけたハンス・シュミット=イッセルシュテットのタクト。男性的に引き締まった響きで音楽を積み上げて構築していく、この指揮者は。19世の最後の年(1900年)に生まれ、若くして幾つかの歌劇場のシェフに就任し、戦後は北ドイツ放送交響楽団の創設と育成を託され、最高峰の2大オーケストラのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめ、100を超えるオーケストラで指揮棒を振ったほどの男。テンポも速く、劇的な演出はどこにもないが、曲が進むに連れて熱気を帯びてくる。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番には、ベートーヴェンの若さが溢れているし、ベートーヴェンがその当時足場を固めていた煌びやかな社交界の雰囲気も醸し出しているとも思う。お互いに晩年に差し掛かり枯れた境地が伝わって参ります。
全体のまとまりはシュミット=イッセルシュテットの解釈であろうが、ウィーン・フィルの奏者達のバックハウスへの献身こそが活気を呼び起こしているのかもしれないと常々思います。この巨匠にとって最後のベートーヴェン協奏曲全集になるであろうことを指揮者もオーケストラも噛みしめて、最高のサポートをしています。
英 Decca の録音は、バックハウスとウィーン・フィルのもっともよい響きの勘所を熟知、音圧が高く、音に密度と力がある。高域の空間と伸びは適度。低域は空間が広く、密度のある音。チェロをはじめとする弦楽器も温かい音色で、高低の分離も良いアコースティックな響きを伴って迫ってくる。バックハウス晩年のステレオ録音による比類なく美しい名演です。
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ベートーヴェン : ピアノ協奏曲全集 (新リマスタリング)
バックハウス(ウィルヘルム)
ポリドール
1999-04-22

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第1・2番
ヴィルヘルム・バックハウス
Universal Music
2017-12-01


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3・4番 (限定盤)
ヴィルヘルム・バックハウス
Universal Music
2017-12-01



ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ヴィルヘルム・バックハウス
Universal Music
2017-12-01


ベートーヴェン: 交響曲全集(第1番-第9番《合唱》)(HB)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット
(unknown)
2017-07-12



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