GB VOX PL10 000 ヤッシャ・ホーレンシュタイン ベートーヴェン・交響曲9番
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GB VOX PL10 000 ヤッシャ・ホーレンシュタイン ベートーヴェン・交響曲9番


商品番号 34-7163


ごつごつとした肌触りの個性的解釈で異彩を放っている。 ― 歌手たちがフルトヴェングラー、ワルター、カラヤンの第九でも活躍したウィーン第一級揃い。》コール・アンド・レスポンスを求めてくる。それがこの巨匠の特徴である理知的な音楽性なのかと思うが、レコードの音が聞きてに反応を投げかけてくる。音楽を一気に聞かせようとしている勢いが物凄いので実際の演奏時間より時間の経過を早く感じる。押し付けがましいしつこいものではなく、ベートーヴェンが聞かせようとした音楽の構造がスムーズに頭のなかに入ってきて再構成されていくように分かり易く理解できる。第2楽章もドタバタしていることなく、ポリフォニーのリズムだと感じられる。マーラーの大家としての視野というが嘉いか、デリカシーはあるが第3楽章など表情的な音楽ではないのでベートーヴェン時代的表情を待っているとサラリと終わってしまう。新世紀エヴァンゲリオンやフルトヴェングラーのバイロイトの第九を期待すると、神妙に第4楽章に移行している。他の交響曲に鑑みて、ベートーヴェンの意向はこうだったのではないかと納得させられるくらいだ。次第に音楽は膨れ上がってくるが独唱が始まって熱は帯びても一気に沸騰すること無いので、オットー・ヴィーナーの気品に満ちた一声が効く。女性独唱者ではヴィルマ・リップが特に素晴らしい。また合唱は綺麗なハーモニーを聴かせる。まだだ、まだだ、と巨匠は良く綱を締めている。それをパッと放つように後半に差し掛かると渾然一体となって行くフィナーレは、とても華やかだ。巨大なスケールと濃厚な情感表現で知られるホーレンシュタインは、マーラーやブルックナーに早くから取り組み、その普及に尽力した功績でも有名。現在でも重要なロシア生まれの指揮者たち ― エウゲニー・ムラヴィンスキー、キリル・コンドラシン、イーゴリ・マルケヴィッチ、ヤッシャ・ホーレンスタインら ― は尊敬されてはいるけれども、国際的な影響をまずほとんど及ぼしていない。ムラヴィンスキー、コンドラシン、マルケヴィッチのチャイコフスキー、ショスタコーヴィッチ、ベルリオーズなどでは今も決定的名盤が記憶を呼び覚ましてくれるが、ホーレンシュタインにはマーラーぐらいが機会となる程度。ヤッシャ・ホーレンシュタインは現ウクライナのキエフ生まれ。ステレオ録音が隆盛を迎える直前の1973年にアメリカで没した。6歳の時一家でロシアを離れ、ケーニヒスブルクとウィーンで音楽を学んだ。ブッシュ、マルクス、シュレーカーなどの教えを受けた後ベルリンでフルトヴェングラーの助手となって経験を積む。1925年にマーラーの交響曲第2番を指揮してウィーンにデビュー。28年にデュッセルドルフ市立劇場の首席指揮者となる一方ヨーロッパ各国に客演。33年にナチスに追われてドイツを離れ、37年よりモンテ・カルロのロシア・バレエ団指揮者。翌年パレスチナを経てアメリカに渡る。戦後は主にウィーンで活躍。晩年はロンドンで活躍した。スケールの大きな正攻法の重厚な芸風を聞かせたが、指揮者としては不遇で録音にも恵まれなかった。しかし晩年の録音がまとまっており、中でもロンドン交響楽団とのマーラー交響曲第1番、第3番は代表作と言える。他にブラームス第2番、ニールセン第5番などのライヴがあった。スペシャリストとして知られたマーラーでは他にロンドン交響楽団とのマーラー第4番、ブラームス第1番などがあった。独唱はウィルマ・リップ(ソプラノ)、エリザベート・ヘンゲン(アルト)、ユリウス・パツァーク(テノール)、オットー・ヴィーナー(バス)。フルトヴェングラーやカラヤン、ワルターとの合唱や大地の歌でお馴染みの顔ぶれ。ウィーン第1級の歌手と共演しているベートーヴェンの第9はホーレンシュタインの芸術を示す名演として語り継がれています。20世紀の音楽をロマンティックな観点と同時代の親密感で表現した演奏は今も刺激的である。1956年の第九はごつごつとした肌触りの個性的解釈。苛烈を極めた第一楽章など異彩を放つ。それはアヴァンギャルドではなく現代の耳からすれば常套的範疇。終楽章は見事な展開を見せる。特にソリストが粒揃いで素晴らしい歌唱を聴かせる。合唱はウィーン楽友協会合唱団。そこからもわかることですが、レコード会社との専属問題もあってウィーン交響楽団と表記されていたり。本盤ではウィーン・プロ・ムジカ管弦楽団となっていますが、オーケストラの実体はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。つまりそれを含め、当時のオール・ウィーン・メンバーが結集したレコードと言えるだろう。1956年2月6, 7, 9日のウィーンでのセッション録音。これは米 VOX がウィーンに出向いてレコーディングをしていた時代のレコード。LP初期からクラシック・ファンに愛好されてきたアメリカの VOX レーベルは1945年創立。クレンペラーやホーレンシュタイン、ブレンデルやクラウス、クリーンなど欧米の一流アーティストによる録音を数多く所有、いずれも香り高く音楽愛好家の渇を癒す個性的演奏揃い。DECCAやPHILIPSが ― 英EMIはまだ懐疑的だった ― ステレオ録音を本格的に行う直前で、モノラル録音であるのは致し方無い。初めてレコード1枚に収まった「第九」としても知られているものです。
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