GB TELEFUNKEN GMA96 クーレンカンプ ベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲/ロマンス第2番
商品番号 34-21234
通販レコード→英ダーク・レッド銀文字 DECCAプレス ED1 相当盤
〝これこそベートーヴェンが求めているスタッカートである〟 ― ベートーヴェンの作品は、古今のヴァイオリン協奏曲の中でも最高の名曲といわれる。当代第一級のヴァイオリニストは、みな一応にこの名曲を録音して新盤が続々出るにもかかわらず、1936年に録音されたゲオルク・クーレンカンプ盤が優位を保っていた時代がある。ドイツ・ヴァイオリン奏法の伝統を具現するクーレンカンプの演奏は、心ある収集家のぜひ備えなければならないものとされ、長年この演奏のSP盤は収集家の奪い合いになっていた。もともと病弱な体質であり、昭和23年(1948年)に脊椎麻痺症のため50歳で亡くなったため、来日がかなわなかった演奏家だったがためか、わが国においてのクーレンカンプの名前はLP時代以降の音楽ファンにはあまり知られていない嫌いが否めませんが、海外で高く評価されており、名演奏家が競い合っているベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のレコードの中で、燦然と光を放って別格の地位を占めていきた。クーレンカンプとハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮によるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との見事なアンサンブル、そしてドイツ・テレフンケンの素晴らしい録音。今日数多くのヴァイオリニストのうち、彼ほど正確で円満な技巧を持つ人が幾人いるであろう。そして、とくに本盤を初めて耳にする現代の聴き手は、一種得も言われない朴訥な美しさをさえ感ずるであろう。クーレンカンプは古典派音楽の名演奏家であるとともに、同時代に作曲された音楽の熱心な紹介者であった。今日我々にとってシベリウスのヴァイオリン協奏曲と云えば名曲であることは誰でも知っているが、シベリウスのポピュラーでないドイツにおいてこの曲を繰り返し演奏して広めたのはクーレンカンプである。しかし彼はこの曲の演奏に多くの場合ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮を得て、ドイツ各地で人々に忘れえぬ感動を与えた。またバルトークの協奏曲も非常に高い独奏を認めて盛んに演奏した。ヒンデミット、カール・ヘラー、ドビュッシー、オネゲルのソナタなども得意のレパートリーであった。シューマンのヴァイオリン協奏曲の世界初演と初録音で著名なゲオルク・クーレンカンプのベートーヴェン。ご存じのとおり、この協奏曲には独奏者が登場する前に特別に長い序奏がある。クーレンカンプ盤ではその序奏がフルトヴェングラー風のタッチで演奏されていて、深い感情と微妙なテンポの変化を見せている。このテンポの変化は現代の演奏家にはあまりアピールしないかもしれない。ところがクーレンカンプが登場すると、そのテンポはもっと大きな振幅を持って揺れ動きだす。第1楽章の再現部の前のト短調のセクションでは、どんなヴァイオリニストでも楽譜の指定よりも伝統に従って、テンポを緩める。そのため再現部でうまくもとのテンポに戻るのを難儀なことにしてしまうものだが、次第に速度を上げてゆくアッチェレランドの判断が完璧だから、クーレンカンプにはなんの心配もない。クライスラーが作曲したカデンツァは聴く者を催眠状態にする。第2楽章は夢のように美しい。クーレンカンプはひとつひとつの音符を感じ、シュミット=イッセルシュテットもまたそのとおりで、恍惚とさせるような美しいソロの音が光り輝いているので、演奏は素晴らしく感動的なものになっている。クーレンカンプはまれに見る美しい音をもって鮮やかに旋律線を弾くだけではなく、スタッカート音符をスタッカートらしく演奏する。そのスタッカートが実に素晴らしく、これこそベートーヴェンが求めているスタッカートである。クーレンカンプの音は大きくはないが、柔らかく澄んで美しい。技巧は超絶的とはいえないまでも卓抜で、なによりもケレンのない折り目の正しさが気品を高めた。表現はノーブルで、野卑なところはどこを探してもない。その演奏は由緒正しいドイツの貴族のように、誇り高く、優雅。彼の演奏には耳目を聳動させるものはなく、圧倒させるような情熱も感ぜられぬのに、最も安心してその曲の美しさを味わうことができるのは、ドイツ音楽に対する最も深い理解があり、ヴァイオリニストには珍しい真摯で着実的な表現法を持っていたからではあるまいか。クーレンカンプの本質は技巧をどこまでも音楽表現のために奉仕することにあると、彼は云っている。ドイツの敗戦により、活躍が限られるものになった戦後は、カール・フレッシュの後を受け継いで1943年からスイスのルツェルン夏期マスタークラスを担当する。レコードやテープによって正確さをコントロールするという精神が今日では次第次第に音楽演奏にも支配的になってきている。我々の時代が技巧によって規定される時代であるにしても、この影響は音楽の演奏にあって自己目的になってはならない。このような技術的コントロールに慣れて来ると、これが時に恍惚となるという意識を次第に失い、芸術的霊感の真の源泉からずっと遠ざかっていることに気づかなくなる。→コンディション、詳細を確認する
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- Record Karte
- ベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲:ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮、ロマンス第2番:パウル・クレツキ指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、1936年6月25日/1932年6月7日録音。
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