34-8985
通販レコード→ダーク・レッド銀文字盤

GB RCA SER5556-8 ラインスドルフ ヴェルディ・仮面舞踏会

商品番号 34-8985
《オペラの登場人物は誰一人褒められた人間ではないけれども、そこに人間性の魅力を感じさせるのだから音楽の力とは素晴らしい。》プライスのスケールの大きい表現の歌唱。ベルゴンツィやメリルのベテランの円熟した堂々とした描写。レリ・グリストの爽快感ただよう歌唱も聴きごたえがあります。アメリア役のレオンタイン・プライスはヴェルディ・ソプラノと銘打たれる通り、アメリアの心情が犇々ひしひしと伝わってくる。そのうえで素晴らしいアリア、プライスの声にしばし耳を奪われます。「仮面舞踏会」の主人公は、実在のスウェーデン国王グスタフ3世を題材にしています。この国王暗殺事件が作曲当時はまだ記憶が生々しかったこともあり、また検閲を通るのが難しかったことを配慮して、舞台を17世紀のボストンに置き換えて上演されました。グスタフ三世は様々な政治改革を行い国の近代化を図った国思いの人物でしたが、しかし、それが保守派の人々の反発を買い、 或る仮面舞踏会の夜に秘書に依って暗殺される。実際は歌劇の台本とは違い、グスタフ三世と秘書の夫人との恋愛の事実はなかったそうですが、ボストン提督のリッカルドが男女の関係のこじれで殺されるというストーリーに変えたのがすごい。それが聴いていて飽きるという言葉と無縁のヴェルディのオペラの数々の所以。「リッカルド提督に信頼をおいている秘書・レナートが居た。レナートは反提督の一派が陰謀を企んでいることを知らせる。リッカルドはその時密会していた女性を秘書に託すが、妻のアメリアだとばれてしまう。妻の不貞を疑い激怒したレナートは暗殺団に加わり、仮装舞踏会の夜に提督を刺し殺す。」というもの。初演時の観客には、これでスウェーデン国王が革新を急ぎ過ぎたばかりに暗殺された、と社会問題として関心が高かったことが分かるのですから驚きですね。しかも、筋立てからは登場人物に人間性の魅力を感じさせられないのですが、リッカルドに人間性の魅力を感じる。ヴェルディの音楽の力をひしと感じるところでもあります。レオンタイン・プライスはカラヤンに見出された歌手と言っていいでしょう。リハーサルで彼女の歌の伴奏をしていたピアニストを押しのけて、カラヤン自らピアノの伴奏を務め『君には将来性が有る』と言ったエピソードが伝わっている。その通りプライスは、カラヤンといくつかのレコーディングを行っており、プッチーニの「トスカ」(1962年)、ビゼーの「カルメン」(1963年)でタイトルロールを歌っている。いずれもこれらの名盤のひとつで、プライスの素晴らしい歌唱を聴くことができます。本盤は、そうした数々の名盤の直後1966年の録音。黄金の声とも、声のストラディヴァリウスとも呼ばれた彼女の豊かな美声は、重みのあるリリコ・スピントでウィーン・フィルの弦や管との絡みはうっとりとさせます。
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