〝愛は面影の中に〟 ― 指揮者ジャン=フランソワ・パイヤールは「メシアンのような同時代の作曲家がいれば」と切望し、ドビュッシーの「6つの古代碑銘」を室内オーケストラ用に編曲している。通常編成の管弦楽オーケストラは指揮者から、演奏者個々に気持ちが伝えにくい、小編成のアンサンブルでは指揮者が必要とされない。12名の弦楽器奏者と一名のチェンバロ奏者から構成されたパイヤールの室内管弦楽団は、指揮者と演奏者個々に気持ちが通じあった演奏で、2006年まで50年以上にわたって活動を続けました。パイヤールの演奏は、〝アルビノーニのアダージョ〟にしても何かを加えると大げさになってしまう、かといって雰囲気がないと単なるBGMに陥りかねない曲のツボを抑えた境界の音楽を聴かせる。話しを戻して「6つの古代碑銘」は、詩の朗読とパントマイムの入る「ビリティスの歌」の音楽を2台のピアノ曲版にドビュッシー自身が纏めたもの。弦楽主体のパイヤールの編曲はバロック音楽を得意とするパイヤール室内管弦楽団の演奏群の中に置かれると、色彩的に明るい印象主義音楽のイメージが失せて、印象主義音楽が全く違って聴こえてくる。反面、もとの楽器編成 ― フルート×2、ハープ×2、チェレスタの面白さと朗読が入ることによって醸し出されるアルカイックさが、この編曲にないのが、残念にも思わせる。ライオネル・リッチーの《ハロー》、ジョー・コッカーで《愛と青春の旅だち》、ピーボ・ブライソンとロバータ・フラックのデュエットによる《愛のセレブレイション》が大ヒットしていた1985年に製作された本盤は、どうだろう。編曲・ミュージカルの作曲をしたマイク・バットの指揮で、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの《G線上のアリア》、ドヴォルザークの《新世界より〜家路》がプログラムされているが、ポップスのレーベルでの発売になっている。ペギー・シーガーが1957年から歌い始めて、1960年代に数々のフォーク・グループに歌われたあと、フラックが1972年にシングルカットしたバージョンが大ヒットした《愛は面影の中に》。ABBAのメンバーであったベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが作曲した《アイ・ノウ・ヒム・ソー・ウェル》は1984年にリリースされ、エレイン・ペイジとバーバラ・ディクソンによるデュエットで英国で大ヒットを記録した。ミュージカル化され、その後、演出に変更が加えられながら30年間世界各国で上演されている冷戦をテーマにした『チェス』のナンバー。ムーディー・ブルースの不朽のキャリアの中で、《サテンの夜》は見事な名曲だが、発売された当時は今では考えられないほど、ゆっくりで不安定なスタートを切っていた。英国で1967年11月10日にリリースされたが、オランダでは1位を獲得、オーストラリア、ベルギー、スイスではトップ10入りを果たし、1973年に全米チャートでトップに立つメガヒットとなった。しかも1979年までトップ20入りを守りぬいた。《イエローブックのテーマ》とラストの《ブライド・アイズ》はバットの楽曲。野うさぎを主人公にしたアニメーション映画でありながら、子供向けの甘い内容ではなく、野生動物に待ち受ける苦難と残酷な現実、外敵との闘いや共闘が容赦なく描かれる。 しかし同時に詩的・ファンタジックな要素も併せ持つ、『ウォーターシップダウンのうさぎたち』の主題歌。人間による乱開発で、平和に暮らしていた野うさぎ達の住処が脅かされる。新たな安住の地を求めてうさぎ達は旅に出るが、その前途には過酷な試練が待ち受けていた。振り返ると、本盤の全てがスタンダードになっている。35年前のセレクトに驚きた。このレコードの評価に替えて、《愛と青春の旅だち》の歌詞を引用する。明日が何をもたらすかなんて誰に分かるというの、分かっているのは自分がどう感じるかだけ。心研ぎ澄ませば、目の前に素晴らしい物がある。この道は長く、行く先には山々が立ちはだかる。でも僕らは、一歩ずつ登っていく。毎日少しずつ。僕らの生きていく道は、外の世界に出て見つけるものさ。
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Julian Lloyd Webber And The London Symphony Orchestra – Pieces
Side-ASide-B
- Nights In White Satin 「サテンの夜」
- I Know Him So Well
- The First Time Ever I Saw Your Face 「愛は面影の中に」
- Tonight I Celebrate My Love For You
- Hello 「ハロー」
- Air On A G String From Suite No.3 In D
- Up Where We Belong 「愛と青春の旅立ち」
- Theme From 'Brideshead Revisited'
- Theme From 'The Yellow Book'
- Largo From 'New World Symphony'
- Cavatina (Theme From 'The Deer Hunter')
- Bright Eyes
ヨーロッパ屈指の家電&オーディオメーカーであり、名門王立コンセルトヘボウ管弦楽団の名演をはじめ、多くの優秀録音で知られる、フィリップス・レーベルにはクララ・ハスキルやアルテュール・グリュミオー、パブロ・カザルスそして、いまだクラシック音楽ファン以外でもファンの多い、「四季」であまりにも有名なイタリアのイ・ムジチ合奏団らの日本人にとってクラシック音楽のレコードで聴く名演奏家がひしめき合っている。英グラモフォンや英DECCAより創設は1950年と後発だが、オランダの巨大企業フィリップスが後ろ盾にある音楽部門です。ミュージック・カセットやCDを開発普及させた業績は偉大、1950年代はアメリカのコロムビア・レコードのイギリス支社が供給した。そこで1950年から60年にかけてのレコードには、米COLUMBIAの録音も多い。1957年5月27~28日に初のステレオ録音をアムステルダムにて行い、それが発売されると評価を決定づけた。英DECCAの華やかな印象に対して蘭フィリップスは上品なイメージがあった。フィリップスは1982年10月21日コンパクト・ディスク・ソフトの発売を開始する。ヘルベルト・フォン・カラヤンとのCD発表の華々しいCD第1号はイ・ムジチ合奏団によるヴィヴァルディ作曲の協奏曲集「四季」 ― CD番号:410 001-2。1982年7月のデジタル録音。現在は、フィリップス・サウンドを継承してきたポリヒムニア・インターナショナルが、これら名録音をDSDリマスタリングし、SACDハイブリッド化しています。
- Record Karte
- 1985年8月リリース
YIGZYCN
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