34-20409
商品番号 34-20409

通販レコード→英ゴールド・スタンプ・ドッグ盤
まるで交響曲のようでもありますが、ここまで音楽が豊かだとそうした暴挙も許されるというもの。 ― クレンペラーの重厚なオーケストラに、バレンボイムの若さあふれる躍動感のあるピアノがよく溶け合って、一切の虚飾を排した正統的な素晴らしい演奏となっている。この盤でも、クレンペラーのオーケストラが光り輝いている。巨匠の棒の下、若き日のバレンボイムが力いっぱいに弾く姿が見えるような演奏。作品に正面からぶつかっていく熱演に感動する。数ある全集の中でも出色の1組。交響曲全集を完成させたクレンペラーで、フィルクシュニーをソリストに協奏曲全集を EMI は膳立てる。しかし、1966年秋からの録音直前、8月にスイスのサン・モリッツで休暇を取っていたクレンペラーが転倒して骨折してしまいました。半年の療養中に、今度はフィルクシュニーが演奏活動をやめてしまい、そこでバレンボイムに白羽の矢が立ちます。60歳近く年下のバレンボイムについてクレンペラーは、演奏してすぐにバレンボイムが凄いピアニストであることを感じたと友人に書き送っています。年齢差はカラヤンの例をとっても同じことが言えそうですが、その録音は非常に順調だったようです。20代の若者が、この老巨匠に臆することなく自分の音楽を作っているところに、バレンボイムの音楽家としての大きさを見る。クレンペラーにもいい刺激を与えている。クレンペラーもバレンボイムも録音を途中で止めるのが嫌いな音楽家で、最初のセッションで各曲の最初から最後までの全楽章を続けて一気に録音しています。5番から逆順で1番まで収録した協奏曲と合唱幻想曲は、わずか9回のセッションで録音が完了しました。クレンペラーのベートーヴェンの交響曲全集はスケールが大きく、細部まで緻密で厳しく、巨大に聳え立つ大理石の如き演奏であるが、このピアノ協奏曲集ではクレンペラーの個性はよく出ているが、聴き手を突き放すが如く厳格さはない。むしろ、聴き手を包み込む懐の深く温かい管弦楽である。クレンペラーの面白さは力強い第5番や第1番はもちろんのこと、第3番や第4番の第2楽章の穏やかで詩情豊かな部分にも端的に示されています。特に第3番第2楽章の繊細で暖かい美しさは印象深く、バレンボイムの瑞々しく叙情的なソロも含めて素晴らしく感動的な仕上がりです。全体はゆったりとした、大河のような悠然とした流れの中で、バレンボイムのピアノはこの老巨匠に私淑しながら丁寧に緻密に抒情を紡いでいく。ところどころゾクッとする感慨深い表情も見せるが、老巨匠のリードに身を委ねて自然に素直に弾いているバレンボイムに、この頃のバレンボイムのピアニストとしての力量がよく感じられる。ピアノ協奏曲ながら、あたかも眼前に築き上げられていく巨大な構造物を仰ぎ見るかのような思いにさせられる、まるで交響曲のようでもあり別格的な演奏です。ここまで音楽が豊かだとそうした暴挙も許されるというもの。老巨匠のたどり着いた芸術と若き瑞々しい感性が見事に呼応した一期一会の演奏をぜひ聴いて欲しい。盤は SAN シリーズであり、SAN シリーズはオペラや唄の入った宗教曲を出しているシリーズですが、何故かこの盤のみ協奏曲をだしていますね、何かEMIの方で特別な意図があったのかも知れません。しかし、SAN シリーズだけに音質は非常に良いです。「全集なんて聴かない」と思われている方も多いかも知れませんが、この盤は本当に良いので、是非聴いて下さい。
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ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim, 1942年11月15日ブエノスアイレス生まれ)は演奏家である前に、独自の音楽観を持った音楽家であり、楽想そのものの流れを掴むことのできる稀有な才能の持ち主であろう。テンポの揺れは殆ど無く、凪の中で静かに時間が進み、色彩が移り変わっていく。全体的には厚めの暖かみのある音色で、煌めき度は高くなく沈んだ暖色系の色がしている。ピアニストからスタートして、もともとフルトヴェングラーに私淑していたこともあり、さらにメータ、クラウディオ・アバド、ピンカス・ズッカーマンなどとともに学びあった間柄で、指揮者志向は若い時からあったバレンボイム。7歳でピアニストとしてデビューしたバレンボイムの演奏を聴いた指揮者、イーゴリ・マルケヴィッチは『ピアノの腕は素晴らしいが、弾き方は指揮者の素質を示している』と看破。1952年、一家はイスラエルへ移住するが、その途上ザルツブルクに滞在しウィルヘルム・フルトヴェングラーから紹介状“バレンボイムの登場は事件だ”をもらう。エドウィン・フィッシャーのモーツァルト弾き振りに感銘し、オーケストラを掌握するため指揮を学ぶようアドヴァイスされた。ピアニスティックな表現も大切なことだとは思いますが、彼の凄さはその反対にある、音楽的普遍性を表現できることにあるのではないか。『近年の教育と作曲からはハーモニーの概念が欠落し、テンポについての誤解が蔓延している。スコア上のメトロノーム指示はアイディアであり演奏速度を命じるものではない。』と警鐘し、『スピノザ、アリストテレスなど、音楽以外の書物は思考を深めてくれる』と奨めている。バレンボイムの演奏の特色として顕著なのはテンポだ。アンダンテがアダージョに思えるほど引き伸ばされる。悪く言えば間延びしている。そのドイツ的重厚さが、単調で愚鈍な印象に映るのだ。その表面的でない血の気の多さ、緊迫感のようなものが伝わってくる背筋にぞっとくるような迫力があります。パリ管弦楽団音楽監督時代、ドイツ・グラモフォンに録音したラヴェルとドビュッシーは評価が高い。シュターツカペレ・ベルリンとベートーヴェンの交響曲全集を、シカゴ交響楽団とブラームスの交響曲全集を、シカゴ交響楽団及びベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とブルックナーの交響曲全集を2種、それぞれ完成させている。ピアニストとしてより指揮者として顕著さが出る、この時期のレコードで特に表出している、このロマンティックな演奏にこそバレンボイムを聴く面白さがあるのです。「トリスタンを振らせたらダニエルが一番だよ」とズービン・メータが賞賛しているが、東洋人である日本人もうねる色気を感じるはずだろう。だが、どうも日本人がクラシック音楽を聞く時にはドイツ的な演奏への純血主義的観念と偏見が邪魔をしているように思える。
近年、クラシック音楽の新録はダウンロード配信だけのケースが増え、往年の大演奏家たちの活動の把握が難しいが2014年から新たな「エルガー・プロジェクト」をシュターツカペレ・ベルリンとスタートしている。バレンボイムは言うまでもなく現代を代表する指揮者であり、また長らく一流のピアニストであり続けている。バレンボイムはもちろんワーグナーのオペラを中核レパートリーとしているが、そのワーグナーに心酔し、でもオペラではなく巨大な交響曲を書いたブルックナーも彼の大事なレパートリーだ。ブルックナーに関しては、シュターツカペレ・ベルリンとの3度目の全集(分売)が進行中である。短期間に膨大な演奏や録音をこなすことでも知られる。市場が縮小した今日においても、定期的に新譜を出せる数少ない指揮者である。
1967年10月、11月ロンドン、アビー・ロード第1スタジオでのステレオ録音。
GB EMI SLS941/4 クレンペラー&バレンボイム ベートー…
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