一日は24時間じゃない ― 帽子で決めた表紙の写真。帽子は斜めにかぶるとシャープな印象に見えます。バルビローリが戦地から戻ると、オーケストラの楽団員は戦死したり、傷を負っていて演奏会どころではなかった。空襲で荒廃した街に音楽を響かせるために、女性奏者を募ったり、ジョン・バルビローリはオーケストラの再興に尽力しました。演奏会以外の時間はそういうことに費やし、一日は24時間じゃないとも頑張った指揮者でした。「J.B.」と題されたこのアルバムは、既存の内容を寄せ集めたもので昨今のコレクターには関心が薄いでしょうが、古くからのレコード・ファンには懐かしさがまず蘇ってきます。彼が後半生の30年間に亘って親しんだハレ管との演奏を中心に収録されています。イギリス音楽はバルビローリが多大な愛情をそそいだもので、彼が関心を呼び覚ましたともいうべきエルガー、ディーリアス。シベリウスも彼の得意な作品で有名な《フィンランディア》。さらに評価の高いフランス音楽、チャイコフスキー、そしてオペラまで、バルビローリのキャリアとレパートリーの全貌を概観できます。