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過去の自分を総決算しようとした結果、見事に結晶化した帰結点。

オットー・クレンペラー最晩年のセッション録音。『コジ・ファン・トゥッテ』といえば、コントのような部分も含むコミカルな台本ということもあり、軽快な喜劇として扱われることが多いのですが、クレンペラーはダ・ポンテの台本にも、見方によっては深遠な意味があるとし、モーツァルトの書いた音楽については、彼の創作の中でも特別の地位を占めるものと賞賛していました。実際、ここでクレンペラーは、重唱が数多く配され、賑やかで少々雑然とした雰囲気を持つ音楽から、驚くほど明晰で情報量の多い音楽を引き出しており、元気で素朴な喜劇という側面は消失してしまったものの、代わりに随所に美しい瞬間が立ち現れることとなっています。
マーガレット・プライスやイヴォンヌ・ミントンなど70年代に大活躍する歌手を抜擢して見事な音楽を作り上げました。澄んだ高域が印象的で、後にクライバーやチェリビダッケにも重用されることとなるマーガレット・プライスのフィオルディリージ役に、ショルティの『ばらの騎士』や『大地の歌』で優れた歌唱を聴かせていたイヴォンヌ・ミントンのドラベッラ役、レッジェーロな美声で人気を博したルイジ・アルヴァのフェランド役、コミカルな歌唱には定評のあったジェレイント・エヴァンスのグリエルモ役、後年バイロイトで大活躍することとなるハンス・ゾーティンによる哲学者ドン・アルフォンソ役、そしてルチア・ポップによる可憐なデスピーナ役と、歌手陣もきわめて高水準。
クレンペラーらしくゆったりしたテンポで繰り広げられる音楽劇は、コミカルで軽快なオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」のイメージとは違い、モーツァルトの美しい音楽を純粋に突き詰めた異色の名演には一種の崇高さすら感じます。クレンペラーはモーツァルトが大好きだったようで、オペラ、交響曲、協奏曲、セレナーデなど数多くのレパートリーをレッグと制作、晩年はインド人グラップとやり残していた本盤制作。ようやく待望のモーツァルト・オペラ名作録音成就となりました。1971年録音ですが目の覚めるような優秀録音には驚きます。
  • Record Karte
    • 1971年1月、2月ロンドン、キングズウェイ・ホールでのセッション・ステレオ録音。
    • 優秀録音、名演、名盤、ブックレット付属。1972年リリース。黄色カラー切手オリジナル盤です。

CDはアマゾンで

モーツァルト:コジ・ファン・トゥッテ
エバンス(ジェレイント)
EMIミュージック・ジャパン
1998-06-24

Mozart: Operas
Warner Classics
2013-03-04


モーツァルト:フィガロの結婚
ジョン・オールディス合唱団
EMIミュージック・ジャパン
1998-06-24


モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ 全曲
ニュー・フィルハーモニア合唱団
ワーナーミュージック・ジャパン
1998-06-24


モーツァルト:歌劇「魔笛」(全曲)(SACDシングル・レイヤー)
クレンペラー(オットー)
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-06-28



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