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英国の伝統民謡への傾倒 ― 古今東西世の中にある素晴らしい数々の「うた」は、詩と、音楽と、そして歌い手の3つが揃ってはじめて成り立ちます。イギリスの歌というとハード・ロックが思い浮かぶのかもしれません。一般的にクラッシック音楽と呼ばれるジャンルの中にも英語の歌があり、イギリス世俗歌曲の歴史は、その後ヨーロッパ各地で発展したイタリア語、フランス語、ドイツ語の芸術歌曲に大きな影響を与えています。それらはバロック音楽の以前、ルネサンス音楽と呼ばれています。リュートで伴奏してうたうダウランドの歌曲は、スティングのCDで知ったロック愛好家は多いでしょう。プロカンティオーネアンティカのメンバー(イアン・パートリッジ、ジェームス・グリフェット、マイケル・ジョージ)だったと説明するのが優秀録音盤が好きな愛好家には分かりやすいでしょうか。イアン・パートリッジはテノールですが、高音のパートをとても綺麗に歌っています。長い歴史を経てパーセルがイギリス音楽の完成された様式を作り上げますが、王室の交流でイタリア、フランスへとパーセルのバロック・スタイルが広まり、イタリア歌曲、オペラを紹介しているうちに刺激的なイタリア・オペラの英王室は酔いしれ、イギリス音楽家の育成を捨てイタリア作曲家を歓迎します。それはホルストの登場まで続いて、20世紀に入ってようやくエルガーが英国音楽復興を果たします。レイフ・ヴォーン=ウィリアムズは交響曲作曲家として名を残していますが、彼が作曲家として生前の名声を確実なものにしたのは歌曲でした。『残酷な美』は、ジェフリー・チャウサーの詩に基づくもので、1921年初演、独唱と2ヴァイオリン、チェロの曲。弦楽合奏とテノールが奏でるメロディが心に沁みます。英国の伝統民謡への傾倒が顕著にみられる作風で、詩の魅力を生かした見事なもので聴けば聴くほど味わいが深まります。
イギリスの作曲家ウォーロックもいくつかシェイクスピアの戯曲からの詩に曲をつけておりますが、タイトルを普通と違うのにしていることが多く、有名な詩に付けているにも関わらずそれに気づかないことがよくあります。ピーター・ウォーロック( Peter Warlock, 1894〜1930)は評論家としても活躍した人物。ディーリアスの音楽に衝撃を受け、音楽に強い興味をもつようになりました。17世紀前半のジャコビアン時代や、それより前に遡って16世紀後半から17世紀初頭のエリザベス朝の時代の作曲家たちによるリュート・ソングを編曲するなどして、エリザベス朝の詩を用い、小節線を排した記譜法による、詩の韻律を重視したダウランドを思わせる歌曲を書くなど独自のスタイルを築き上げました。36年の短い生涯の間にのこした作品は、ほぼすべて声とピアノのためのもの。ここに収録された『シャクシギ( The Curlew )』はイェイツの詩に基づくもので、ウォーロックの傑作といわれる作品。そしてイェイツの詩につけられた、すべての歌曲作品の中でも最も素晴らしいと言われているイギリス歌曲の珠玉の逸品ではないかと思います。7年近くもかけて完成されました。編成は、ウォーロックのものにしては珍しく、テノール、イングリッシュ・ホルン、フルートと弦楽四重奏となっています。1915年に書き始められ、第1曲が完成したのち7年かけて改訂・加筆およびいくつかの曲を削除するなどして、1922年に全5曲の ― うち1曲は器楽の間奏曲 ― 歌曲集として完成されました。バルトーク、シェーンベルク、またパーセルなど様々な作曲家たちの影響をみせるこの作品は、あまりに早くに亡くなってしまった個性的な作曲家ウォーロックのモニュメント的な作品となっています。イアン・パートリッジは、バロック以前のルネサンス期の音楽が得意な彼らしく古雅な味わいを良く出しています。演奏はデイヴィッド・バットのフルート、ジャネット・クラクストンのコール・アングレが加わる、ザ・ミュージック・グループ・オブ・ロンドン。ヴィオラ、クリストファー・ウェリントン。ヴァイオリン、フランシス・メイソン、ヒュー・ビーン。チェロ、エイレーネ・クロフォード。1974年発売、プロデューサーはクリストファー・ビショップ、エンジニアはネヴィル・ボイリング。どこか懐かしいメロディーと、それに寄り添うクラシカルな中にも斬新なテイストの入った伴奏が独特の世界を醸し出しています。近代イギリス歌曲は他の作曲家も含めて傑作の宝庫です。
GB EMI HQS1325 イアン・パートリッジ ウォーロック・シ…
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