34-15787

商品番号 34-15787

通販レコード→英ラージドッグ・セミサークル黒文字盤

人間の強さ・弱さをありのままに ―  デイム・ジャネット・ベイカーの解釈は常に緻密・正確で、声のコントロールにも秀でており、声は、キャリアの最初は低音寄りで、次第に高域が充実するという変化を見せ、広範囲なレパートリーを歌いました。イタリア古典歌曲に始まり、バロック・オペラや古典派とロマン派の声楽作品、そしてブリテン晩年の打楽器、ハープシコードを伴うオーケストラ付き大作まで、高度な表現力には定評がありました。ブリテンの劇的カンタータ「フェドーラ」は、ベイカーの歌うベルリオーズの「夏の夜」を聴いて感銘を受けたブリテンが、彼女のために書いた作品でもある。物語は、ギリシア神話にもとづくもの。アテナイ王のテセウスには、純潔の神アルテミスを信仰する潔癖な息子ヒッポリュトスがいた。ところが、中年王テセウスの若き後妻フェドーラは継子のヒッポリュトスを熱烈に愛してしまい、もだえ苦しみ、最後には亭主にも知られて怒られてしまい、それでも好きで堪らずに、自らの命を絶ってしまう。そんな悶え苦しむフェドーラの心情を歌い込んだカンタータです。ブリテンのオペラ「ベニスに死す」にも似て、どこか彼岸の雰囲気も漂い、ベルクの音楽や、シュプレヒシュティンメ的なリアルな迫真感をも感じます。そして、ハープシコードや独奏チェロを伴ったレシタティーヴォなどは、古風な趣きのなかに、恐ろしさも感じます。一方で、切迫した弦のトレモロとティンパニが、フェドーラの激する心を鼓舞激励する。17世紀フランスの劇作家ラシーネが書いた「Phe'dre」~フェドーラをブリテンと同時代のローウェルが翻訳したものを台本とするアルト独唱のためのカンタータ。ブリテンの意図は、ヘンデルのイタリア様式のカンタータをイメージすることにあったという。〝イタリアン・カンタータ〟ですが、カンツォーネとは趣きが異なり、〝オペラ風に歌う歌〟とでもいうべきものです。ヘンデルのイタリアン・カンタータといわれる作品はソロ、デュエット、トリオで歌われるものをあわせて約120曲あまりあり、これらは主としてヘンデルのイタリア滞在期に作曲されたもので、貴族の屋敷内で演奏された純粋な娯楽のためのもので、歌詞の内容は、男女の愛の喜びや苦悩を取り扱ったものが多い。ヘンデルはドイツ生まれですが、20歳台前半に当時の音楽先進国・イタリアに渡り、イタリア音楽を完璧に身につけます。一時ドイツに帰国しますが、すぐにロンドンに行き、晩年には帰化しました。声楽曲の作曲家といえ、オペラやオラトリオは素晴らしいもので、人間の強さ・弱さをありのままに、ドラマティックに表現しています。イタリアン・カンタータは青年時代のヘンデルがイタリアで作曲したものが多く、後年のオペラやオラトリオのエッセンスともいうべきもので、非常に魅力的です。ソプラノ用のソロ・カンタータ「はかない足跡を追って(棄てられたアルミーダ)」(HWV105)は物語性が強く、独奏ヴァイオリンによるプレリュードと、レチタティーヴォをはさんだ3曲のアリアで構成されています。この作品は、16世紀のイタリアの詩人タッソの詩に基づく。時代背景は12,13世紀、十字軍がイスラム軍とエルサレム争奪戦を演じている頃。アルミーダは魔女で、惚れた十字軍の騎士リナルドを魔法で虜にしていましたが、逃げられてしまったので、怒りくるって復讐しようとします。しかし、リナルドを慕う気持ちも強く、愛憎の狭間で想い乱れる、というお話です。ヘンデルは後日、このストーリーを十字軍の騎士を主人公にした、オペラ「リナルド」(HWV7)を作曲しています。このカンタータはヨハン・ゼバスティアン・バッハも楽譜を購入し、ライプツィヒで自身が指揮して演奏した、と伝えられています。最後のアリアはシチリアーノ様式で作られ、特有のリズムと物悲しい旋律は、この作品の聴き所です。
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女声版ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウと称されるほど、バロックから近現代まで驚異的に幅広いレパートリーを誇ったデイム・ジャネット・ベイカー(Janet Baker)の肌理細やかなニュアンスを施した歌唱。ベイカーの声はしっかりした芯がキリッとした印象を与え、歌の強さを誇示せんばかり。クラシックを聴く人は知らない人はいないでしょう。しっかりと芯を感じる筋の通った歌唱。冷徹な色気とでもいうような気配が漂います。1933年生まれのイギリスのメゾ・ソプラノ。ベイカーは、サー・エイドリアン・ボールトやサー・ジョン・バルビローリ、オットー・クレンペラーといった巨匠たちから信頼されて、英デッカや蘭フィリップスに多くのレコーディングを行なってきた。ベイカーの声は、キャリアの最初は低音寄りで、次第に高域が充実するという変化を見せましたが、解釈は常に緻密・正確で、声のコントロールにも秀でており、オーケストラ付き大作などでの高度な表現力には定評がありました。楽曲のメロディーラインがはっきりしてくると、主旋律をクッキリ浮かび上がらせるようにはっきりと歌います。1956年にキャスリーン・フェリアー賞を受け、ザルツブルクのモーツァルテウムに留学、1959年にロンドンの王立音楽アカデミーで女王賞を授与され、1960年に歌手としての本格的な活動を開始、ロンドンやエディンバラのリサイタルで成功を収めた。1962年にはクレンペラー指揮するマーラーの『復活』で評判となり、1966年からはロイヤル・オペラやグラインドボーンでのオペラの舞台でも活躍するようになります。グラインドボーン音楽祭で「ディドとエネアス」のディドを歌い、絶賛を博したベイカーは、バロック・オペラを初め、モーツァルト、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウスから、ブリテンなどのオペラで活躍する一方、バッハのロ短調ミサのような宗教曲や、スカルラッティからマーラーにいたる歌曲などのコンサート歌手としても卓越した才能を発揮した。温かみのある美声と正確な歌唱は高く評価されており、真摯な学研的姿勢はそのレパートリーの広さにも表れている。

Janet Baker Handel - Two Italian Cantatas

  1. ああ、私を見捨てたつれない人 Cantata No. 1 "Ah! Crudel Nel Pianto Mio (30:29)
  2. 捨てられたアルミーダ Cantata No. 13 "Armida Abbandonata" (20:53)
レイモンド・レッパード(Raymond Leppard)は、1927年8月11日にイギリスのロンドン生まれ。サー・コリン・デイヴィスと同世代。ケンブリッジのトリニティ・カレッジでチェンバロを学んだ。そして、1952年にロンドンで指揮者としてデビューし、イギリス室内管弦楽団との共演によってバロック音楽の指揮者として、またチェンバロ奏者としても名声を博し、1956〜1968年にはロイヤル・シェイクスピア劇場の音楽監督をつとめ、グラインドボーン音楽祭でも活躍した。1973〜1980年、BBCノーザン室内管弦楽団の首席指揮者となったが、1977年にアメリカに移って市民権を得ており、1983年からはセントルイス交響楽団の首席客演指揮者を務めた。日本との関係は1970年、大阪万博にイギリス室内管と来日している。レッパードは、ヴェネツィア楽派の研究でも知られており、モンテヴェルディのマドリガーレ集(1971年)や2度目の録音となったパーセルのディドとエネアス(1985年)はその代表盤である。しかし、そのレパートリーをバロック音楽に限定せず、古典派やロマン派、さらに近代の作品でも、その時代と様式を的確に捉えて溌剌と端正な演奏を聴かせてくれる。イギリス室内管とのグリーグの「ペール・ギュント」組曲(1975年)の澄んだ詩情を豊かに湛えた演奏も味わい美しく、レッパードの才能が爽やかに示された佳演だった。
ヨーロッパ屈指の家電&オーディオメーカーであり、名門王立コンセルトヘボウ管弦楽団の名演をはじめ、多くの優秀録音で知られる、フィリップス・レーベルにはクララ・ハスキルやアルテュール・グリュミオー、パブロ・カザルスそして、いまだクラシック音楽ファン以外でもファンの多い、「四季」であまりにも有名なイタリアのイ・ムジチ合奏団らの日本人にとってクラシック音楽のレコードで聴く名演奏家がひしめき合っている。レコード産業としては、英グラモフォンや英DECCAより創設は1950年と後発だが、オランダの巨大企業フィリップスが後ろ盾にある音楽部門です。ミュージック・カセットやCDを開発普及させた業績は偉大、1950年代はアメリカのコロムビア・レコードのイギリス支社が供給した。そこで1950年から1960年にかけてのレコードには、米COLUMBIAの録音も多い。1957年5月27~28日に初のステレオ録音をアムステルダムにて行い、それが発売されると評価を決定づけた。英DECCAの華やかな印象に対して蘭フィリップスは上品なイメージがあった。フィリップスは1982年10月21日コンパクト・ディスク・ソフトの発売を開始する。ヘルベルト・フォン・カラヤンとのCD発表の華々しいCD第1号はイ・ムジチ合奏団によるヴィヴァルディ作曲の協奏曲集「四季」 ― CD番号:410 001-2。1982年7月のデジタル録音。現在は、フィリップス・サウンドを継承してきたポリヒムニア・インターナショナルが、これら名録音をDSDリマスタリングし、SACDハイブリッド化しています。
  • Record Karte
  • 1967年録音、1969年初発。Mezzo-soprano Vocals – Janet Baker, Cello – Bernard Richards, Conductor – Raymond Leppard, Orchestra – English Chamber Orchestra
GB EMI ASD2468 ジャネット・ベイカー ヘンデル・カンタ…
GB EMI ASD2468 ジャネット・ベイカー ヘンデル・カンタ…