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通販レコード→DE BLUE LINE 盤

これぞ粋と洗練の極み

カラヤン初のレハール録音で、ドイツ・グラモフォンとしても初のオペレッタ録音となったアルバム。優雅で美しいアリアの連続に、全盛期カラヤン&ベルリンフィルの輝かしいサウンドが絡む名録音です。

全盛期のヘルベルト・フォン・カラヤンがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と描き出す豪華にして洒脱なレハールの世界。オペレッタ演奏に習熟しているわけではない、このスーパー・オーケストラの重厚な響きをカラヤンは巧みにコントロールして、聴くものをいつしか悦楽と陶酔へと誘う。特に、ヴァイオリンを中心とする弦の磨きぬかれた美しさは溜め息が出るほどで、ドイツ語によるオペレッタの妙味を満喫できる、究極の《メリー・ウィドウ》だ。めくるめくワルツのリズムにのせてくりひろげられる恋の駆け引き、その果てに仄かなメランコリーを漂わせて、カラヤンは洗練の限りを尽くして音楽に磨きをかけていく。カラヤンがベルリン・フィルと録音した唯一のオペレッタであることに、驚嘆する。小品曲を聴かせるのが上手で、どんな曲でも手を抜いたところがないカラヤンだが、それをベルリン・フィルの豊麗な音で、カラヤンならではの精妙な表現で生かしきった演奏は、まさに洗練の極致にある。ザルツブルク生まれのカラヤンにとって、ウィンナ・ ワルツ、ポルカは血肉ともなっている音楽だ。ヨハン・シュトラウス2世のポルカ・シュネル《雷鳴と電光》の演奏はシュネル(急ぐこと)を優先しているカルロス・クライバーとは正反対で、そのカラヤンらしい緩やかなテンポには、ポルカ・シュネルですら優雅さを重視していて、カラヤンが自伝の中で「血の中を流れている」と語っているのに違わず、楽曲たちには重視したことを徹底した完成した優雅さがあります。カラヤンが最も多く録音したのは《こうもり》序曲の9回には全曲盤も含む。他のシュトラウス作品も複数回録音しているものが多く、ウィンナ・ワルツやポルカはカラヤンにとって愛すべき音楽だったと言えるでしょう。カラヤンは史上最多の録音を遺し、未だに、その全てが美しく秀逸なものとして評価されている。主役二人に当時ワーグナー歌手として頭角を現し始め、1970年のドレスデンでの《ニュルンベルクのマイスタージンガー》録音でもワルター役を歌ったルネ・コロ、カラヤンの信頼を得て《ラ・ボエーム》全曲盤でもムゼッタを歌ったイギリス出身のエリザベス・ハーウッドを起用、またテレサ・ストラータス、カラヤンの「指環」全曲でのアルベリヒを歌った、ゾルタン・ケレメン、ハイドンのオラトリオ「四季」のテノールで好演した、ヴェルナー・ホルヴェーク、加えてドナルド・グローベ、ヴェルナー・クレンなどカラヤンお気に入りの旬の歌手を取りそろえ、名匠ハーゲン=グロル率いる強力なベルリン・ドイツ・オペラの合唱団を率いて、このオペレッタを究極の洗練美をもって描き上げています。

イエス・キリスト教会で行われた7日間のセッションで全曲が収録

そうした歌手たちの布陣からも感じられるが、実際に舞台で取り上げた記録はない。《メリー・ウィドウ》は実際のオペラ上演と録音を緊密にリンクさせていた当時のヘルベルト・フォン・カラヤンとしては珍しく、オペラ上演とは無関係に純粋にレコード録音のみを目的として行われたセッションで収録されました。なお台詞部分の演出は当時ハンブルク国立歌劇場のインテンダントをつとめていた名演出家アウグスト・エヴァーディングが担当しています。そのため、通常のオペレッタ上演ではノリを優先してないがしろにされがちな歌唱やオーケストラ・パートの細部を緻密にリアライズすることで、カラヤン盤以前には見えてこなかったレハールの音楽の充実ぶりが明らかにされることになりました。結果は名実ともに、創業以来オペレッタとは無縁だったドイツ・グラモフォン・レーベルにとってのオペレッタ初録音に相応しい名盤として、発売以来高い評価を得ています。《メリー・ウィドウ》は、1972年から翌73年にかけて、イエス・キリスト教会で行われた7日間のセッションで全曲が収録されましたが、これは、1973年3月からフィルハーモニーへ録音会場を移すことになるカラヤン=ベルリン・フィルにとって、同教会での最後の録音の一つとなりました。ベルリンの閑静なダーレム地区にあるイエス・キリスト教会は、その優れた音響によって第2次大戦後から放送や録音用に使用されるようになり、ドイツ・グラモフォンもヴィルヘルム・フルトヴェングラーやフェレンツ・フリッチャイの録音以後、幾多の名盤をこの教会で生み出してきました。ドイツ・グラモフォンの名トーンマイスターで、この教会の音響特性を知り尽くしたギュンター・ヘルマンスが収録を担当。各歌手の歌唱を明晰に収録しつつ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の豊麗な響きをも余すところなく捉える手腕はヴェテランのヘルマンスならでは。
  • Record Karte
    • ゾルタン・ケレメン (バリトン:ミルコ・ツェーダ男爵)、テレサ・ストラータス (ソプラノ:ヴァランシエンヌ)、ルネ・コロ (テノール:ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵)、エリザベス・ハーウッド (ソプラノ:ハンナ・グラヴァリ)、ヴェルナー・ホルヴェーク (テノール:カミーユ・ロジョン)、ドナルド・グローベ (テノール:カスターダ伯爵)、ヴェルナー・クレン (テノール:サン・ブリオシュ)、カール・レナール (テノール:ニエグシュ)、カイヤ・ボリス (ロロ)、メヒトヒルト・ゲッセンドルフ (ドド)、カテリーネ・オット (ジュジュ)、キャロル・ブリチェット (フルフル)、マリア・Th・ライノーソ (クロクロ)、エルケ・グロースハンス (マルゴ)、エルンスト・クロコウスキー、カテリーネ・オット、マーティン・ヴァンティン、マンフレート・レール、メルトヒルト・ヴェッセンドルフ、マリア・Th・ライノーツ (以上、ポンテヴェドロ公使館の紳士・淑女)、ヘルガ・トリュムバー (ヴァランシエンヌ台詞)、ダイアローグ演出:アウグスト・エヴァーディング、ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団、合唱指揮:ヴァルター・ハーゲン=グロル、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン。1972年2月15日、16日、11月2日、3日、12月1日、2日、1973年1月10日ベルリン、イエス・キリスト教会でのハンス・ヒルシュのプロデュース、エンジニアはギュンター・ヘルマンス、ハンス・ヴェーバーによる録音。

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レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」
ゲッセンドルフ(メヒトヒルト)
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オッフェンバック:序曲集
カラヤン(ヘルベルト・フォン)
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プロムナード・コンサート
カラヤン(ヘルベルト・フォン)
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フランス&イタリア管弦楽名曲集
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ロシア&フランス管弦楽名演集
ドン・コサック合唱団
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2000-12-20



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