シャープで情熱的なチョンの演奏が冴えわたる。 ― サン=サーンスが『ツィゴイネルワイゼン』の作曲者としても有名なサラサーテのために作曲したヴァイオリン協奏曲第3番と、自身優れたヴァイオリン奏者として活躍したヴュータンのヴァイオリン協奏曲第5番のカップリング。いずれも古典的なスタイルの中に華やかな演奏技巧や甘美な旋律を散りばめた作品で、楽器の魅力が存分に活かされています。最近、ヴュータンの録音盤を見かける機会も増えてきましたが、こうした情感の激しさ、強さが魅力の音楽というものは、まさに女性ならではのものであろう。演奏も録音も当盤が随一だ。現代世界最高のヴァイオリニストのひとりチョン・キョンファが1974年10月/1975年5月にロンドンのキングズウェイ・ホールで行った録音セッション。ミヒャエル・ウールコックのプロデュース、カルーショの残党、ジェームス・ロックがエンジニアリング。録音場所が地下鉄音で有名なキングズウェイの所為か、録音は抜群。アナログレコードの絶頂期。録音秀逸なことから細かいニュアンスまで忠実に捉えています。是非とも音楽の静かな部分で地下鉄音がノイズに埋もれないか、オーディオ・セットのSN比を試して欲しい。演奏の方は冒頭からその気迫の激しさに圧倒される。こうした情感の激しさ、強さというものはまさに女性ならではのものでは、とも云われる。彼女の魅力は、技巧の趣くままに情熱的に切り込んだかと思えば、次の瞬間には滴り落ちるような見事な弱音を聴かせてくれるのです。その感情の切り替えの素晴らしさ、他の演奏者では聴き逃してしまいそうなちょっとしたフレーズも曲のツボかと思わせる視点が『女性ならでは』でしょう。情感の激しさ、強さ・・・こうした演奏をされると男性ヴァイオリニストに出る幕は無い。
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指揮者、ローレンス・フォスターは1941年10月23日、米国ロサンゼルスでルーマニア系の両親の元に生まれた。2013年から2018年までマルセイユ・オペラ座とマルセイユ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務め、またリスボン・グルベンキアン管弦楽団では首席指揮者、芸術監督を務めて現在は桂冠指揮者。2016/17シーズンにはハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、ハンガリ―国立フィルハーモニー管弦楽団、コペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団、ポーランド国立放送交響楽団等に客演。2017/18シーズンにはエフゲニー・キーシンと共演した。そしてオペラ指揮者としても卓越した才能をみせており、ウェールズ国立歌劇場『蝶々夫人』、マルセイユ・オペラ座『ドン・カルロ』は熱狂的な支持を受け、2015年サヴォリンナ・オペラ・フェスティバルでの『椿姫』も高く評価された。またルーマニアの作曲家ジョルジュ・エネスコ演奏のパイオニアとして知られ、1998年~2001年まで国際音楽祭の芸術監督を務め、2003年1月にはルーマニア大統領より、ルーマニア音楽への貢献に対し叙勲された。
第2次世界大戦の潜水艦技術が録音技術に貢献して、レコード好きを増やした。繰り返し再生をしてもノイズのないレコードはステレオへ。ステレオ録音黎明期1958年から、FFSS(Full Frequency Stereo Sound)と呼ばれる先進技術を武器にアナログ盤時代の高音質録音の代名詞的存在として君臨しつづけた英国DECCAレーベル。レコードのステレオ録音は、英国DECCAが先頭を走っていた。1958年より始まったステレオ・レコードのカッティングは、世界初のハーフ・スピードカッティング。 この技術は1968年ノイマンSX-68を導入するまで続けられた。英DECCAは、1941年頃に開発した高音質録音ffrrの技術を用いて、1945年には高音質SPレコードを、1949年には高音質LPレコードを発表した。その高音質の素晴らしさはあっという間に、オーディオ・マニアや音楽愛好家を虜にしてしまった。その後、1950年頃から、欧米ではテープによるステレオ録音熱が高まり、英DECCAはLP・EPにて一本溝のステレオレコードを制作、発売するプロジェクトをエンジニア、アーサー・ハディーが1952年頃から立ち上げ、1953年にはロイ・ウォーレスがディスク・カッターを使った同社初のステレオ実験録音をマントヴァーニ楽団のレコーディングで試み、1954年にはテープによるステレオの実用化試験録音を開始。この時にスタジオにセッティングされたのが、エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団の演奏によるリムスキー=コルサコフの交響曲第2番「アンタール」。その第1楽章のリハーサルにてステレオの試験録音を行う。アンセルメがそのプレイバックを聞き、「文句なし。まるで自分が指揮台に立っているようだ。」の一声で、5月13日の実用化試験録音の開始が決定する。この日から行われた同ホールでの録音セッションは、最低でもLP3枚分の録音が同月28日まで続いた。そしてついに1958年7月に、同社初のステレオレコードを発売。その際に、高音質ステレオ録音レコードのネーミングとしてffss(Full Frequency Stereophonic Sound)が使われた。以来、数多くの優秀なステレオ録音のレコードを発売し、「ステレオはロンドン」というイメージを決定づけた。
- Record Karte
- アンリ・ヴュータン「ヴァイオリン協奏曲第5番イ短調op. 37 」、カミーユ・サン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調op.61」1974年10月、1975年5月ロンドン、キングズウェイホールでの、ミヒャエル・ウールコック、ジェームス・ロックによる録音。
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