どちらも一歩も引かない印象が強いことと、キャラクターが異なる印象を与えるためか、ちぐはぐな演奏を想像しがちですが、実際は相性が良く、オーケストラを含めて方向性が合致した熱演を繰り広げています。カーゾン一流の淡々とした美しさを奥深い透明感で貫いて描ききる素晴らしい名演。クナッパーツブッシュがソロに寄り添った端正な佇まいだが、時々見せる悪魔的な深淵がいかにもクナッパーツブッシュらしい。天才ピアニストと唯我独尊の巨匠の対決が生み出す緊張感が冒頭から最後まで漲っています。

長身で気取ったところがなかったズボン吊がトレードマークのハンス・クナッパーツブッシュが、晩年ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とスタジオ録音として残した数少ない録音の一つ。デッカ最初期のステレオ録音も極めて優秀、永遠の名盤です。ズシリと腹に響く低音の凄みから繊細な高音域まで、デッカならではの生々しいサウンドに捉えられており、どこまでも高揚する音楽が見事なマッチングを見せた、かなりの情報量で伝えてくれるものです。