34-15218
通販レコード→英ブルー・ラベル盤[オリジナル]

GB CBS BRG72038 スターン&ストラヴィンスキー 自作・ヴァイオリン協奏曲

《自作自演ですから、本人の意匠がすみずみまで行き渡っています。スターンも指示通り弾きこなしている様が判ります。 ― 「私こそ傑作だ」〜ストラヴィンスキー・コンダクツ・ストラヴィンスキー。コロンビア・レコードが30年間に亘って、その威信をかけた大事業。》20世紀最大の作曲家、イーゴル・ストラヴィンスキー(1882-1971)。89歳という長寿に恵まれたため後期ロマン派からセリー(十二音技法)主義まで、多彩な作風の変遷を経ながら数多くの作品を残していますが、彼は同時に卓越した指揮者・ピアニストでもあり、最晩年を除き、生涯にわたって自作を中心に演奏家としての活動も行なっていました。録音にも早くから関わり、既にSP時代の1928年から仏コロンビアに指揮者・ピアニストとしての演奏を残しています。ストラヴィンスキーが1939年にアメリカに定住したことを知ったコロンビア・レコードのA&Rプロデューサー、ゴッダード・リーバーソンは、もともと作曲家でもあり、ストラヴィンスキーによる自作自演の録音プロジェクト「ストラヴィンスキー・コンダクツ・ストラヴィンスキー」を企画し翌1940年から始動させます。そうして挙げた功績でリーバーソンは1956年にコロンビア・レコードの社長に就任し、その肝いりでプロジェクトは更に進められ最終的にストラヴィンスキーの主要作品をほぼ全て網羅することになりました。1940年にはSP録音でスタートしたこのプロジェクトですが録音技術の進歩とともにモノラルからステレオへと、より鮮明な音質での収録が行なわれるようになり主要曲に関してはステレオによる再録音も積極的に行われました。特にステレオ時代になってからはブルーノ・ワルターのプロデューサーとして知られるジョン・マックルーアがプロデュースを担当し、コロンビアの誇る「360サウンド」で捉えられたワイド・レンジの鮮烈なサウンドは作品の魅力を余すところなく伝えています。当初は、コロンビアが専属契約を結んでいたニューヨーク・フィル、クリーヴランド管弦楽団などのメジャー・オーケストラが起用され、さらにステレオ時代になってからはニューヨークとハリウッドで録音用に腕利きのミュージシャンを集めて編成されたコロンビア交響楽団がメインに起用されています。本盤はアイザック・スターンと自作を指揮しています。「私こそ傑作だ」作曲家は思い。演奏者も自信を持っていた。彼らを取り巻くレコード会社も威信をかけた。誰もが自分を信じて、自分に厳しく生きていた。洗練された趣味と安定した技巧による胸のすく快演。アイザック・スターンのヴァイオリン演奏の音色は美音というより、時に荒々しく、豪放磊落。それはハイフェッツにはないものだったと思われます。ヤッシャ・ハイフェッツは、アイザック・スターンの登場により、自分のテクニックを鍛えなおす為に演奏活動を中断して1年間練習したそうですが、ハイフェッツが、オイストラフを意識して、オイストラフはスターンを意識して、それぞれが刺激し有って、それが巡り巡ったのです。そもそもハイフェッツが大衆向けの最高のパフォーマーなら、オイストラフは、より深い作品の表現を求めたのに対して、スターンは専門家的な分析から必要以上の脚色を避けた演奏が多いと、三者三様。ハイフェッツはアグレッシブ ― 積極的で刺激的。テクニックではスターンの演奏に、いつも鳥肌が立ちます。それは自分の音楽性に絶対の自信が感じられる。多少、人を見下したぐらいの余裕の表れでしょう。そこに、イツァーク・パールマンやピンカス・ズーカーマンから人望厚く慕われているところ。本盤では彼の特徴といえる明るい音色と華やかなテクニックで、ストラヴィンスキーの指示通りに弾きこなしている様が判ります。「私こそが傑作だ」と豪語できるほど、80歳の誕生日を祝して録音した自作自演盤。ストラヴィンスキーによる指揮は余分な誇張なしに書かれた音符をそのまま辿るというのがモットーで、それによって作品の本質がくっきりと浮かびあがってくるのが特徴です。そして本盤も一連のワルター録音で名を成したジョン・マックルーアが担当。イギリス・プレス盤、モノラル盤。
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