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通販レコード→FR CREAM WITH GREEN LETTERING, MONO FLAT 160g重量盤

ピアノ好きにとっては「マタタビ」のような魅力がある ― ラヴェル同様に〝音色の喜び〟が最大の魅力のモーツァルト。

1956年、モーツァルト生誕200年を記念してフランスで録音された高額盤。 ― コルトーとラヴェルの弟子でありラヴェル演奏の権威、ヴラド・ペルルミュテールのモーツァルト「ピアノ・ソナタ集」。希少な仏パテ社製フラット初期盤、極め付きの入手困難アイテムです。

1956年はモーツァルトの生誕200年に湧いた年で、この年に向けて多くのレコード会社が意欲的な録音を企画し実行に移していきました。イギリス・デッカは総力を挙げてこの年に照準を合わせて4大オペラの録音に取り組みました。EMIでは早々と1953年にはワルター・ギーゼキングが世界初のピアノ・ソナタのコンプリートを完成させています。 当然、フランスでもモーツァルト生誕200年を盛大に祝い、記念式典の開催や豪華記念本が出版されました。ペルルミュテールも仏パテから発売されたバースデイ・ボックスに参加していましたが、そこにはローランド・シャルミーとの共演によるヴァイオリン・ソナタ第28番が収録されたのみで、ピアノ・ソナタは録音しませんでした。
その数ヵ月後、Voxの依頼で「ピアノ・ソナタ全集」全18曲のレコーディングを行うことになり、ペルルミュテールも意欲的に取り組みました。しかし宣伝に失敗したためか、フランス国内ではあまり評判にならず、世界的な発売には至りませんでした。その結果、Voxの6枚組のLP全集ともなると100万円の値段がついたという、中古市場で非常な高値がつくようになっていました。

早熟の天才であったモーツァルトも27歳の大人になってのピアノ・ソナタ。 ― 当時さほど人気が高いわけではなかったモーツァルトの音楽が比較的身近な環境のなかで育ったルートヴィヒ・フォン・ケッヘルによって、K.330からK.333までの連続した番号が割り当てられている4つのソナタは、幸せを全身で感じているモーツァルトの正直な感情があふれている。
ザルツブルグの領主であるコロレードとの大喧嘩の末にウィーンへ飛び出して、音楽家としての自由と成功を勝ち取りつつあった頃の作品。それはこの時代のモーツァルトを象徴する、この上もなく愛らしくて美しい「」を、どの作品からも感じ取ることができます。宇野功芳が「フランス風のしゃれた華やかさに彩られている」と評した、ハ長調K.330のソナタなんぞはフランスのピアニストの演奏で聴きたいものだ。
さてペルルミュテールのモーツァルト演奏は、パッと聞いただけでは何の変哲もないありきたりのモーツァルトの楽譜をさらった演奏に聞こえるかもしれませんが、この演奏は基本的には1950年代を席巻した新即物主義の流れの中にあるギーゼキングの業績と同じベクトルを持っています。モーツァルトに真摯に仕えるというスタンスは同じですが、一線を引くのは音色のヨロコビであり、ラヴェルが絶賛したペルルミュテール演奏の最大の魅力となっている。

ペルルミュテールは、ユダヤ人のため戦争中はスイスに逃れ、戦後1951年にフランスに戻りました。彼のピアノに大きな影響を与えた人物に、レイナルド・アーンとマルグリット・ロンがあげられ、真珠のネックレスと称されたロンの流麗で完璧なレガートを継承しています。例えばワルター・ギーゼキングはモーツァルトの演奏にペダルを用いていないそうですが、それに対し、ごまかしのきかない音楽作りでモーツァルトと向き合った、適当に弾きとばしている部分が全くない演奏で、細部の細かい音の動きの一つ一つまでもが確信を持って再現されていく、ペルルミュテールのモーツァルトは表現がずっと豊かです。
このレコードから奏で出るモーツァルトは、ウィーン古典派の流れを汲む一連の「正統的」なドイツ系の演奏とは明らかにムードからして異なるが、純粋主義者らにはそっぽを向かれようが、開放的な感覚の演奏は決してモーツァルトであることを否定するものではなく、自然に豊かな感覚に身を委ねて奏でられる、このペルルミュテールの音色にはモーツァルトに相応しい何とも言えないふくよかな華やぎがあります。おそらく、そのかなりの部分がプレイエルのピアノが貢献しているでしょうし、残りの部分をラヴェルが絶賛した繊細に音色を紡ぎ出す彼のタッチが貢献しているのでしょう。


  • Record Karte
    • 1956年6月パリ、パテ・スタジオでのモノラル録音。
    • 希少な仏パテ社製フラット初期盤、極め付きの入手困難アイテムです。両面とも細かな擦れ跡が全体にありますが、スクラッチノイズはさほど目立たず、鑑賞上大きな問題はないと思います。

販売レコードの写真

  1. FR VOX IB150 ヴラド・ペルルミュテール モーツァルト:ピ…
  2. FR VOX IB150 ヴラド・ペルルミュテール モーツァルト:ピ…

CDはアマゾンで

Mozart Piano Sonatas
Vlado Perlemuter
MUSICAL CONCEPTS
2007-06-12

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ラヴェルの生き証人としてペルルミュテールの価値は永遠に語り続けられる。

ラヴェル演奏の権威 ― ヴラド・ペルルミュテール演奏の「ラヴェル作品全集」はラヴェル解釈の規範とされており、ラヴェルの解釈を最も的確に表現した演奏と言われています。そのモーリス・ラヴェルの個人レッスンは彼のピアノ作品全曲に及びました。
そして演奏解釈をペルルミュテールに熱心に教えたといいます。これからもラヴェルの生き証人としてペルルミュテールの価値は永遠に語り続けられると確信する演奏です。

モーツァルトの音楽様式と同じ美意識のもとに書かれているラヴェルの2つのピアノ協奏曲やモーツァルトのピアノ・ソナタ集、これらの録音の傍らにはラヴェルがいます。瞼を閉じて、師に向かって語りかけるように彼は奏でている。 ― ヴラド・ペルルミュテールは、ラヴェル演奏の権威として知られておりパリ音楽院の教授として多くの弟子を育てました。
その晩年の演奏会の印象は、ピアノ音楽好き、いや、普段は管弦楽曲しか聞いていないクラシック音楽マニアも虜にしたほどだ。しかし後年のペルルミュテール自身の演奏自体は、本人校訂の楽譜に書かれた注釈よりもいくぶんセンチメンタルな雰囲気が強まっていた。エンターテイメントとしては、それっくらいの崩しがあったほうが、豊富な経験と老獪な手腕が相まって憎らしいほどラヴェルの音楽の持つ性質と一致していて魅力を感じやすいだろう。
1904年 ― 旧ソビエト圏のバルト三国の中で最も南にある国で、ポーランド、ラトビア、ベラルーシと国境を接している ― リトアニア生まれ、13歳でパリ音楽院に入学し、モーリッツ・モシュコフスキーとアルフレッド・コルトーに師事、フランス音楽とショパンを主要レパートリーとするソリストとして半世紀近くにも及ぶ世界的なキャリアを誇る一方、母校の教授を長年に渡って務め、彼に学んだ日本人演奏家も多数存在します。
しかし、このピアニストを語るうえで第一に挙げるべきは、やはりラヴェルとの出会いでしょう。1925年の21歳の時には大作曲家 モーリス・ラヴェル に気に入られて2年間ラヴェルの自宅で教えを受けることが出来た幸運なピアニストです。
ペルルミュテールを「小さな真珠」と呼んだ、そのラヴェルの個人レッスンはラヴェルのピアノ作品全曲に及びました。そして演奏解釈をペルルミュテールに熱心に教えたといいます。そのピアノ作品の骨法を授けられたことが、このピアニストを比類のないラヴェルのスペシャリストに育て上げたのです。ペルルミュテールの楽譜にはラヴェル師匠の厳格な指示が細かく書き込まれていると云います。この経験によってペルルミュテールはラヴェル演奏の第一人者となりました。
しかし、そこで立ち止まらずに、ペルルミュテールのレコードから奏で出る音楽は、ラヴェルの意図を尊重しながら自身でラヴェル作品を組み立てなおした演奏になっています。そのことがあってペルルミュテール演奏の「ラヴェル作品全集」はラヴェル解釈の規範とされており、ラヴェルの解釈を最も的確に表現した演奏と言われています。
ラヴェルのスペシャリストということで、― 通り一遍の意味だけを汲み取って ― 聴いて落胆したという声をよく聞きますが、レコード鑑賞者に向けて多くの評者が薦めるレコードを片っ端から聴いて ― もう聞くラヴェルはないよ、とラヴェルの音楽が充満したらペルルミュテールの演奏を聞きましょう。
それほどまでに、これからもラヴェルの生き証人としてペルルミュテールの価値は永遠に語り続けられると確信する演奏です。

商品名FR VOX IB150 ヴラド・ペルルミュテール モーツァルト:ピアノソナタK330-K332