34-15291
商品番号 34-15291

通販レコード→仏パープル白文字盤
オーケストラの人員が数えられるくらい録音秀逸。 ― イギリスの文豪シェイクスピアの没後400年を記念して、2016年には音楽界でも数多くのシェイクスピアにまつわる作品がリリースされていますが、当時も話題を呼んだエイプリル・カンテロの「18世紀のシェイクスピア歌曲集」が初CD復刻された。この素晴らしいアルバムのシェイクスピアの同時代を生きた作曲家トマス・モーリーから、録音当時の最先端に位置したブリテンに至る多くの作曲家によるシンプルで美しい作品は、フルートのオブリガードや、フル・オーケストラの伴奏で変幻自在な姿を見せ、詩と曲が見事に融合し、美しい英語の響きを堪能させてくれた。スコットランド出身で、スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者などを務めたアレクサンダー・ギブソンは日本においてはオペラ指揮者の印象がやや強いが、大らかでさらっと流していながら奥深い味わいが随所にありお勧めできる。どうしても手堅いという印象が先に立って個性が乏しい様なイメージでとらえられていますが、その理由としては表現がストレートに過ぎる感がなくはないものの、金管の大らかな輝かしい響きなど素晴らしいし最後は感動的、そして充実した響きの盛り上がりも素晴らしい。非常に堂々とした演奏で小細工なしで率直に作品に対峙していてオーケストラからは積極的な表現意欲と力強い共感に満ちた演奏を引き出しており、色濃いロマンティシズムを感じる旋律の歌い口や生き生きとした表情、若いギブソンの作品に対する思い入れと指揮者としての統率力とが十二分に伝わる大変な名演奏が味わえる。ギブソンの演奏は華麗な明るい響きで親しみやすく、デッカ社に数多くのTAS盤を献上している録音は高音域のヌケが良い。本盤もオーケストラの人員が数えられる位の録音秀逸。
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北欧のショパンと称された北欧ノルウェーを代表する国民的作曲家エドヴァルト・グリーグ(Edvard Grieg)が住んでいた家は、その名も「トロルハウゲン」。トロルの丘、という意味です。グリーグが作曲に必要としていたものは、大自然の中にぽつんとたたずむ小屋でした。中はシンプルにピアノと机、ベッドだけ。 たった一つの窓から見えるのは、今にもトロルが忍び寄りそうなノルウェーの大自然。ノルウェーでは、自然を象徴するものの一つに神秘的な北欧の自然に息づく不思議な生き物「トロル」という存在があります。グリーグはトロルをこよなく愛し、ノルウェーの伝説にしばしば登場するこの森の精霊になぞらえ、自らを「小さなトロル」と呼んでいました。ヘンリック・イプセンが1867年に作った戯曲。「ペール・ギュント」は夢見がちで自由奔放な男、ペールが一攫千金を夢見て世界へ旅立つ冒険物語です。かつての恋人イングリを結婚式から奪取して逃亡する。しかしイングリに飽きたら彼女を捨て、トロルの娘と婚礼寸前まで行くが逃げ出す。純情な女ソルヴェイと恋に落ちるが、彼女を待たせたまま放浪の旅に出る。山師のようなことをやって金を儲けては無一文になったり、精神病院で皇帝になったり遍歴した後に老いて帰郷する。死を意識しながら故郷を散策しているとボタン職人と出会うが、彼は天国に行くような大の善人でもなく地獄に行くほどの大悪党でもない「中庸」の人間をボタンに溶かし込む役割の職人だった。「末路がボタン」というのだけは御免だとペール・ギュントは善悪を問わず自分が中庸ではなかったことを証明しようと駆けずり回るが、トロルの王も「やせた男」もそれを証明してくれなかった。彼は最後の証人として会ったソルヴェイに子守唄を歌ってもらいながら永眠する。この作品の舞台化に伴い1874年、付随音楽の作曲がグリーグに依頼される。元来小品に向いていた作曲家は、この途方もない「ほら話」が自分向きではなく作曲がむずかしい、と一旦は断ろうとした。しかし民族的な題材を取り上げたいとも思っていた彼は結局承諾。ノルウェーの伝統楽器ハーディングフェーレがインスピレーションを与えた。独唱と合唱を含む全26曲のスコアを書き上げた。1876年の上演は成功を収め、とりわけその音楽が好評をはくした。グリーグは原曲の第13、12、16、8曲の4曲を選び、1891年に声楽のパートや台詞を省き第1組曲を、翌1892年に原曲の第4、15、21、19曲の4曲を選び第2組曲に編曲した。「ソルヴェイグの歌」では歌唱のパートを器楽に置き換えている。本盤は第1曲「第1幕への前奏曲」、第2曲「花嫁の行列」、第4曲「花嫁の略奪とイングリッドの嘆き」、第8曲「山の魔王の宮殿にて」、第12曲「オーセの死」、第13曲「朝の気分」、第15曲「アラビアの踊り」、第16曲「アニトラの踊り」、第19曲「ソルヴェイグの歌」、第21曲「ペール・ギュントの帰郷」、第26曲「ソルヴェイグの子守唄」の10曲を選んでいる。原曲の順番に従った付随音楽の全曲。民俗音楽のエッセンスを取り入れたこの作品は当時、聴衆に斬新な印象を与えたそうです。
アレクサンダー・ギブソン(Sir Alexander Gibson, 1926〜1995)はスコットランドの音楽界をリードした指揮者です。マサーウェル(Motherwell, North Lanarkshire, Scotland)の生まれで、グラスゴー大学、ロンドン王立音楽院へ進み、ザルツブルクのモーツァルテウムでも学んでいます。指揮法の師はイコール・マルケヴィチで、1952年にBBCスコティッシュ交響楽団の副指揮者としてデビューします。その後は、ジョージ・ウェルドンの後任としてサドラース・ウェルズバレエ団の音楽監督になり、1959年にスコットランド人としては初めてスコティッシュ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者に就任して、1982年までその職にありました。途中1962年にスコティッシュ・オペラを設立、1977年にはサーの称号を受けています。ギブソンはシベリウスを得意としていて、LP時代にはデッカ、EMI、SAGAといった様々なレーベルに、当時演奏可能なシベリウスの交響詩の全集録音など、管弦楽作品を数多く録音していました。1978年にはシベリウスメダルを受賞しています。彼によるシベリウスの録音はどれも粒ぞろいで優れたものばかりです。何の飾りもないスーッと伸びる音色の美しさや、木目調の手作りの深い味わいは良い意味でのローカル色が感じられました。オーケストラも十分鳴り切った充実の名演。録音の素晴らしさもあって、凍てつく寒ささえ感じささせ、真摯にして雄大、ギブソンの地味な指揮姿そのものの質朴で男性的な演奏で、これに匹敵するフィーリングはなかなか見つかりません。1989年に来日してNHK交響楽団を指揮、エルガーやヴォーン・ウィリアムス、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲や「スコットランド」を演奏しました。
1961年、初発。
FR  TRI  TRI33.116 ギブソン  グリーグ・ペールギ…
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