《春休みに鑑賞しておきたい名曲》

多感な詩人の愛と死。

フランス・オペラの傑作「ウェルテル(Werther)」は1893年に初演されたジュール・マスネを代表するオペラで、同じく彼の代表作「マノン」と共に今日でも世界中で上演され続けています。このオペラは、人を愛するという人間の純粋な気持ちと、道ならぬ恋に葛藤する気持ちに揺れ動きながら展開する、マスネのロマンティシズムあふれるオペラです。

クリスマス・イヴに起こる悲劇を予感させる美しい前奏曲の後、幕が開くとそこは緑もゆる田舎町。子供たちと父親がクリスマスの歌の練習をしています。でも、まだ7月のこと。気持ちに実が入らない子供たちは適当に歌っています。しかし「シャルロッテも向こうで聴いているよ」と怒られると、突然美しい歌で歌い出します。シャルロッテは、母の代わりに面倒を見ている弟や妹たちに慕われています。そのうち父親の友人たちが訪れて、その夜行う舞踏会の相談をしています。シャルロッテの婚約者のアルベールは仕事で長期出張中のままだから、シャルロッテのダンスのパートナーには、ウェルテルはどうだろうかと。しかし、ウェルテルは好青年だが少し人付き合いはよくないぞ、と。やがて、ウェルテルが登場。家族を面倒見るシャルロッテの優しさにも心を奪われます。ウェルテルはシャルロッテをエスコートして舞踏会に出掛ける。入れ替わりに帰郷したシャルロットの婚約者アルベール。皆を驚かせるために帰ることは知らせなかったと言います。舞踏会が終わり、シャルロッテとウェルテルが帰ってきます。ウェルテルはシャルロッテを想う心を情熱的に歌い上げますが、シャルロッテは冷静さを失いません。それでも愛を語るウェルテルにシャルロッテが心を奪われそうになった時に、婚約者アルベールが帰ってきたことが知らされます。シャルロッテとアルベールは結婚し、季節は9月へ。ウェルテルはシャルロッテへの思いを諦めきれずにいる。アルベールはウェルテルがシャルロッテを愛していることに気付いています。妻の貞節を信じているアルベールに対し、ウェルテルは自分の中にあるのは友情だと答えます。ウェルテルはシャルロッテに情熱的に語りますが、シャルロッテは、「アルベールは私を愛している」と答えます。ウェルテルは、「あなたを愛さない人がいるであろうか」と返答します。シャルロッテは「私のもとから去ってくれ」と頼みますが、「永遠の別れを望んでいるわけではない、クリスマスに再び会いましょう。」と告げる。その約束にウェルテルは狂ったように走り去ってしまう。時は過ぎ、〝運命のクリスマス・イヴ〟の夕方。ひとりシャルロッテは、ウェルテルからの何通もの手紙を前に苦しんでいます。ウェルテルが自殺をほのめかす手紙を手にして動揺します。そこに青ざめ、やつれた様子のウェルテルが戸口へ現れる。「君と再会するよりいっそ死んでしまおうと思っていた。でも君が決めた再会の日に、僕は来てしまったんだ」と迫るウェルテルに、シャルロッテは妻の立場を必死に守り抜こうとします。しかし最後にはウェルテルの抱擁に一時身を任せるものの、我に返ったシャルロッテは「さようなら、これで最後よ!」と振り切って、その場を立ち去ります。絶望の中、ウェルテルは死を決意し、部屋を出ていきます。帰宅したアルベールは、「旅に出たいので護身用にピストルを貸してくれ」というウェルテルの手紙に応えて、召使いにウェルテルへピストルを送り届けるよう指示する。死を予感したシャルロッテは、召使いの後を急いで追い…長い間奏曲を経て、シャルロッテの悲痛な叫びに重ねて、窓の外からは子供たちのクリスマスを讃える歌声が喜びにあふれて響き、幕となる。多感な詩人ウェルテルと貞淑なシャルロッテの道ならぬ恋。

バロック音楽と現代音楽の二刀流。

ヴィヴァルディ、バッハやシューベルトの合唱曲。メシアンを主にした、バロックから現代音楽、オペラまで幅広いレパートリーをもつマルセル・クーロー(Marcel Couraud, 1912年10月20日〜1986年9月14日)はリモージュ出身のフランスの指揮。リモージュの生まれ。 アンドレ・マルシャルにオルガンを師事し、パリのエコール・ノルマルで和声法を修めたあと、パリ音楽院でナディア・ブーランジェに作曲法の薫陶を受ける。1939年からシャルル・ミュンシュの元で指揮法の研鑚を積んだ後、1945年に指揮デビューした。
1944年から自分の名前を冠した声楽アンサンブルマルセル・クーロー声楽アンサンブルを結成して指揮活動を始め、オルランド・ディ・ラッソやクラウディオ・モンテヴェルディ等ルネッサンス期の作品を積極的に取り上げ、アンドレ・ジョリヴェやオリヴィエ・メシアン等の合唱作品も紹介した。
1954年に自らの声楽アンサンブルを解散し、シュトゥットガルト・バッハ合唱団の指揮者として活動。オラトリオを中心とする声楽曲を中心に演奏活動を展開し、1967年にはフランス国立放送合唱団の芸術監督に就任し、古典的な作品はもとより、この合唱団員のために作曲されたヤニス・クセナキスの《夜》やジルベール・アミの《レチタティフ、エアとヴァリエ》等の初演をこなすなど、現代音楽にも評価が高い。1976年にはグループ・ヴォーカル・ド・フランスを創立し、1978年まで指揮者を務めた。
バロック音楽と現代音楽の二刀流。加えて、オッフェンバックのオペレッタやビゼーのオペラ、カルメンも面白く。ジュール・マスネの作品を代表するオペラ《ウェルテル》。このクーロー盤は、フランスらしさを残したサウンド、及び演奏の良さもあって、この曲の一番の名演奏と言って良い。 1960年代の録音で、聴きやすい音造りは聴きものだ。


  • Record Karte
    • ジャン・ブラッツィ(Jean Brazzi, ウェルテル)、アンドレ・ガブリエル(Andrée Gabriel, シャルロッテ)、リリアン・バートン(Liliane Berton, ソフィー)、マルセル・クーロー指揮、カールスルーエ歌劇場管弦楽団。
    • 録音:1960年、カールスルーエ。
    • 1962年初発(Philips L 2.265 L)。本盤は1963年発売。

CDはアマゾンで


Messiaen: Messiaen Edition
François Dupin
Warner Classics
2008-01-15


Favorite Harp Concertos
London Symphony Orchestra
Philips
1998-03-17


シュミット:サロメの悲劇 他
リテーズ(ガストン)
ワーナーミュージック・ジャパン
2014-10-22


Schubert: Masses, Choral and Lieder
Anonymous Horn Quartet
EMI
2006-06-22


関連記事とスポンサーリンク