リラックスしたい時に効果的 ― ジャン=ピエール・ランパル(1922年1月7日〜2000年5月20日)は国際的な名歌手、ピアニスト、そしてヴァイオリニストに匹敵する高い評価と多くの聴衆を引き付けた最初の現代ソロ・フルート奏者だった。フルートは花形楽器だが、我々の世代はフルート=ランパルといった図式を思い描くほどの神様的存在だ。フルート奏者のレパートリーにおける現代の基準、そして新曲の作曲は当時のエラート・レーベルとの共同により、プーランク以降の現代音楽、バロック時代の膨大な作品を復活させ彼の才能と存在はゴールウェイやパユなどのフルート奏者の次世代のために道を開いたのです。バッハのソナタ集において特にランパルの美しさが現れているように感じられた。彼のスタイルは非常に美しい音と驚異的な妙技によって特徴づけられ、壮大なる直感という意味を超えていました。高度に洗練された音楽性、非の打ちどころのないフレージングの優雅さ、音色の微妙な味付け、そして非常に魅力的な存在と見事な精神の感覚など、その特別なカリスマ性、楽器のために抱く情熱、驚くべき寛大さと若手音楽家の惜しみない激励 ― 彼はフルートを通じて、より多くの人に音楽をもたらすことが一意に適格であった。これらはロストロポーヴィチ、スターンらと同等にあった。彼は魅惑的な音、独特の言い回し、素晴しい妙技によってフルート演奏のレパートリーの拡大を行いました。LPの黄金時代の間に彼は多くの場合、燃えるような強烈さ、そして常に魅力的な解釈を基にし至難な作品の録音まで行った。演奏至難とされていたバッハのフルート・ソナタを繰り返し演奏・録音して、フルートのレパートリーに定着させました。本盤はランパルの5回にもわたるバッハ・ソナタ集の3度目、最初のステレオ録音で禁欲的で真摯な演奏からは、バッハ作品に挑む真剣勝負に似た意欲が伝わります。常にむらなくたっぷりと楽器を鳴らし、恰幅の大きな音楽を繰り広げているランパルの優美で嫋やかな音色を一度でも聴くと、忽ちにランパルの信者になってしまう。ランパルの繊細さとラクロワ節のからみ合いが何とも心地よい。その音色を聴くにはLPレコードが一番いい。この頃のエラートの録音には華があった。
関連記事とスポンサーリンク
20世紀最高のフルート奏者の一人と目されるジャン=ピエール・ランパルは、1922年に当時有名だったフルーティストのジョゼフ・ランパルの息子としてマルセイユに誕生。幼少の頃には画家志望だったというランパルが、マルセイユ音楽院の教授だった父親にフルートの手ほどきを受けたのは13歳の頃のことで、さらに両親は彼が医師になることを望み、また、ランパル自身もそれに同意して医科大学に進みます。しかし、学業の途中で第2次世界大戦が勃発、軍隊に召集されることとなったランパルは、ほどなく敗戦したフランス軍兵士を待ち受けていたドイツ国内での労役を避けるためパリ音楽院に入学することを希望し、運良く許可が下りて巨匠モイーズに師事、わずか5ヶ月でプルミエ・プリを獲得して卒業するという天才ぶりを発揮します。卒業後もまだ戦争は終わっていなかったため、ランパルの演奏活動はレジスタンスの放送番組のためにシェーンベルク作品を演奏するといったことから始まることとなりますが、戦後、1947年におこなわれたジュネーヴ国際コンクールで優勝して注目され同年から1951年までヴィシーの歌劇場のオーケストラ、1951年から1956年までフランス国立放送管弦楽団、1956年から1962年にはパリ・オペラ座管弦楽団の首席奏者として活躍します。その間、フランス管楽五重奏団、パリ・バロック・アンサンブルを自ら結成して活動を行い、また、1950年代前半からそのたぐい稀なテクニックと豊かな音楽性が注目を浴びていたこともあって、レコーディングでも活躍するようになりました。その後のランパルの活躍は圧倒的なもので過去の作品の研究・開拓による新たなレパートリーの掘り起こし、編曲も交えたレパートリーの拡大のほか、数多くの作曲家からの作品献呈を受けるなどフルート音楽の世界をどんどん広げていった功績は、まさに20世紀最高のフルーティストならではのものでした。
エラート(Erato Disques, S.A.)は、1953年にフランスで創設された古楽録音で大きな実績をもつ最古参レーベルです。クラシック音楽を中核とし、とりわけフランス系の作品や演奏家の紹介に努めてきた。レーベル名はギリシャ神話に登場するエラトーからとられている。第2次世界大戦後のフランス音楽の復興運動の中で、楽譜出版社エディション・コスタラ社のレコード録音部門として1952年に独立系レーベルとして創設されたERATOレーベルは、知られざるフランス音楽の紹介やフランスのアーティストによる演奏の録音に力を入れ、中でも当時録音の少なかった中世からバロック時代の膨大なレパートリーを続々と録音することで高い人気を誇ったレーベルです。同じLP黎明期にフランスに創設されたデュクレテ・トムソンやディスコフィル・フランセなどのレーベルが活動を休止したり買収されたりしていく中で、ほぼ半世紀以上にわたってその独自の路線を貫き、日本でも多くのファンの支持を得てきました。芸術責任者のミシェル・ガルサンの下、フランスのアーティストを起用した趣味性の高いLPを数多く制作し、その中心的なレパートリーはバッハ以前の古楽だった。日本ではバロック音楽すべてが含まれる場合もありますが「古楽」は、古典派音楽よりも古い時代の音楽=中世、ルネッサンス、ごく初期のバロック音楽の総称です。作曲された時代の楽器、演奏方法は、時代を経るにつれ変遷を遂げてきています。近年の「古楽」ジャンルの録音は、19世紀から20世紀にかけて確立されたクラシック音楽の演奏様式ではなく、現代の楽器とは異なる当時の楽器で、音楽史研究に基づいて、作曲当時の演奏様式にのっとった演奏によっています。但し、オリジナル楽器録音への取り組みはやや遅く、本格化するのはフランス系以外の奏者を積極的に起用するようになった1980年代以降。中心を担ったのはトン・コープマン、ジョン・エリオット・ガーディナー、スコット・ロスといった、グスタフ・レオンハルトたちよりも一世代後、かつフランス人以外の演奏家たちである。
1962年録音。3枚組。
コメント
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。