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通販レコード→ブルー・ラベル盤

FR CBS S72167 ユージン・オーマンディ シベリウス・フィンランディア

《萬人を無条件に魅了する「明るき音響美」よりも、少し型にはまった形式美を追求している規範的な良き演奏。 ― オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団が来日した時の、来日記念盤になったお馴染み盤。》ゴージャスなオーケストラ・サウンドによってシベリウスの音楽から華麗な味わいを引き出し、アメリカでのシベリウス作品紹介に40年以上に渡って力を尽くしたオーマンディは、シベリウス本人とも交流のあった名指揮者。『フィンランディア』は、通常版1種と合唱版2種の3種類の録音があります。オーマンディの演奏を偶然ラジオで聴いたシベリウスが、その演奏の素晴らしさに感服し、電報を送ったという逸話が有名。フィンランドは1809年頃から第一次世界大戦終了近くまでロシアに支配されていて、特にニコライ2世の統治下(1894年〜1917年)で強い支配下にあった。そんな中わき起こった独立運動の最中、1899年11月ヘルシンキの劇場で上演された愛国劇に付けられた音楽の一つが《フィンランディア》です。しかし「あまりにも愛国心を煽る」という理由で、ほどなく皇帝から上演禁止とされたのです。フィンランド人の苦悩、奮起、そして栄光が見事に表現されており、森と湖の国フィンランドの美しさとその祖国に対するシベリウスの誇りが心の奥まで伝わってくるようです。交響詩「フィンランディア」の演奏としては、やや特殊であるかもしれませんが、非常に雄大で情熱的な表現に成功しているのが、オーマンディです。特殊な演奏というのは、これが合唱付きだからで、アレキサンダー・マシュースによる歌詞の合唱部は、1932年にアメリカ長老派協会の賛美歌集に取り入れるためにシベリウス自身が編曲したとも伝えられ、それをオーマンディは作曲者の許可を得てもとの交響詩の演奏に用いたと言います。オーマンディのダイナミックな表現は、明るい希望と感激をみなぎらせ、そのクライマックスで合唱が出るあたり、まったく見事なものです。 ― 小林利之著「ステレオ名曲に聴く」(1966年刊)オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団が来日した時の、来日記念盤になったお馴染み盤。来日記念盤となった当時の日本盤は25センチ盤だった。アメリカではLPレコード片面の収録時間を15分〜18分を規格に定着しようとしていたからだ。本盤は、そのシベリウスとグリーグ「ペール・ギュント組曲第1番」、アルヴェーンのスウェーデン狂詩曲第1番『夏至の徹夜祭』を収め、オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団による「北欧の旅」。強力なフィラデルフィア・サウンドを前面に立てての華麗な演奏といったイメージも根付いているが、細密画を描くがごとく緻密で、各曲別に性格づけを考えぬいたような周到な演奏。リスナーを無条件に魅了する「明るき音響美」よりも、少し型にはまった形式美を追求しているようにも感じる。オーマンディは、ソロパートでもトゥッティでも自在にスクランブルして見事な音楽を奏する。「手兵」フィラデルフィア管弦楽団にとって、親和性のある楽曲表現に大いに自信をもっていたことだろう。オーマンディは、しかし、そのレヴェルにとどまらず、さらにより高き目標にオーケストラを引っ張っていこうという意欲があったのかも知れない。その試みは、オーケストラに一層の緊張感をあたえ、慎重な運行はより各パートの至芸を際立たせている。いずれにしてもオーケストラの響きは流麗ながら、いたずらに軽いことなく、むしろ慎み深さを感じさせるサウンドが心地よく感じられます。そして楽曲への深い愛情が感じられる演奏に仕上げています。たっぷりとオーケストラを鳴らすのが巧いオーマンディ、ムード音楽として人気のある《悲しきワルツ》はゆったりとしたテンポで、左右から色々な楽器が浮かび上がるように聞こえてきますが、それらがオーケストラ全体の響きとなって響き合って歌い込まれてゆく、とても真摯な音楽。「ペール・ギュント」や「スウェーデン狂詩曲」も、たっぷりとした表現でオーケストラを自在に操っていて深い世界を感じさせる演奏です。もちろん「フィンランディア」は合唱付きでモルモン会堂聖歌隊が歌ってます。キリっと締まった演奏と合唱は、さすがシベリウスを得意としたオーマンディらしく聴き応えあります。NHK「今日の料理」のテーマ曲に使われた「スウェーデン狂詩曲第1番」のクラリネットの妙技はフィラデルフィア管弦楽団の黄金時代を示しているものでしょう。フィラデルフィア管弦楽団の充実したストリング・サウンドの魅力と凄さを伝えるアルバムで、LP時代から名盤の誉れ高いアルバムです。コロンビアならではの「360サウンド」の鮮明なサウンドも聴きごたえたっぷりです。
1960年録音。フランス・プレス盤、ステレオ録音。
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