34-20293

商品番号 34-20293

通販レコード→独ブラック銀文字盤

ドイツ語歌唱はモーツァルトでは違和感とはならない。 ― 序曲冒頭の柔らかく、コットンのような弦楽器の響きを耳にして溜息が出る人も後を絶たないであろう。スウィトナーのモーツァルトは、流暢な音楽が延々と続く感覚。ハッタリもクセもないのだけれども聴き進んでいると、モーツァルトの完璧な音楽性を改めて痛感する。ワルター・ベリー、アンネリーゼ・ローテンベルガー、ヘルマン・プライ、ヒルデ・ギューデン、エディト・マティス、ペーター・シュライアー、アンネリース・ブルマイスター、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団よる演奏。名歌手が勢揃いした超豪華歌手陣をオトマール・スウィトナーが巧みに統率しており推進力と弾力性に富むアプローチが小気味よい快演です。イタリア語でなくドイツ語で歌われる本盤の演奏をどう評価すべきか、難しいところだが、本来イタリア語の歌唱が滑らかで良いように思うくらいで、それほど違和感はありません。モーツァルトのオペラでもあり言葉は、特別意味を持たないだろう。スウィトナーとシュターツカペレ・ドレスデンはモーツァルトのオペラ上演に馴染んでいるので、ドイツ語の響きとモーツァルトの音楽の抑揚をフィットさせるのだろう。スウィトナーの明るく軽快で躍動感溢れる音楽作りが、ドイツ語でも何の抵抗もなく自然にフィガロの世界に誘ってくれる。シルクのようなシュターツカペレ・ドレスデンの弦の美しい響きも絶品。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とよく似た格調高い響きだけれど、音符を完璧に弾き切るシュターツカペレ・ドレスデンのオーケストラの実力には凄みすら感じさせ、ウィーン・フィルよりもやや落ち着いた輝きが全体によく溶け合ってとてもいい。緩徐部分ではじっくりと落ち着きをみせて、ソロ奏者の妙技がじっくり味わえます。音楽が息づいているというのはこんな感じを指すのであろう。スウィトナーのモーツァルトはかねてから評判がよい。地味な指揮者ではあるが、モーツァルト指揮者としての名声は古くからあり、その録音も廃盤になることなく、聴き継がれている。それは何より、本盤では、モーツァルトの音楽が喜々として歌われており、終始楽しい雰囲気に包まれているからだろう。モーツァルトの三大オペラ「フィガロの結婚」、「ドン・ジョヴァンニ」、「魔笛」は、そのどれもが余りに素晴らしいので、これに順序を付けるのはおよそ至難の業です。聴き手の好みに委ねる他に手は無いでしょう。そして、同じことで登場人物の優劣がない。「フィガロの結婚」では、フィガロとアルマヴィーヴァ伯爵が、2つの主題で。伯爵夫人とスザンナが副旋律だ。「フィガロの結婚」のドラマは、単なる喜劇では無く、封建制度を風刺、批判する〝毒〟 を含む内容とも受け止められる。かなり入り組んだドタバタ劇ながら、実に計算され尽くした傑作喜劇です。4人は誰一人欠くことが出来ない。フィガロ、伯爵、スザンナ、伯爵夫人。この4人にフォーカスした複合協奏曲だ。登場人物それぞれを主役に聴くことも出来る。ベリーのフィガロとプライの伯爵は正に適役。ベリーは男っぷりの良いフィガロで、ローテンベルガーのスザンナは凛々しく、マティスのケルビーノも可憐です。出番が少ないながらドン・バジーリオを歌うシュライアーも光っています。フィガロ歌いのプライが、本盤ではアルマヴィーヴァ伯爵を歌っている。フィガロを歌う時と違い、貴族の気品と色気、そして伯爵に必要な恋の情熱の表現も上手い。2年後のカール・ベーム盤ではフィガロを歌っているが、アルマヴィーヴァ伯爵の役どころも心得ていたことが素晴らしい成果になったものだろう。
関連記事とスポンサーリンク
録音が行われたドレスデンのルカ教会は、19世紀末から20世紀初頭にかけて建立され、第2次大戦中のドレスデン爆撃によって大きな打撃を受けたものの、1950年代後半からはオーケストラの練習及び録音に用いられるようになり、1960年代からは録音用スタジオとしての機能が段階的に整備され、ヨーロッパ随一の録音会場として知られるようになりました。教会といっても現在の内装は明るくモダンで、響きもクリアで明澄、過度な残響もなく、大規模なオーケストラやオペラの録音でもサウンドが混濁しないため、東ドイツが共産主義時代だったからさまざまな録音に起用されてきました。
Le Nozze Di Figaro
W.A. Mozart
Berlin Classics
2011-01-11

1964年8月、ドレスデンのルカ教会で録音。 配役はヴァルター・ベリー(バリトン:フィガロ)、アンネリーゼ・ローテンベルガー(ソプラノ:スザンナ)、ヘルマン・プライ(バリトン:アルマヴィーヴァ伯爵)、ヒルデ・ギューデン(ソプラノ:伯爵夫人)、エディト・マティス(ソプラノ:ケルビーノ)、アンネリース・ブルマイスター(メゾ・ソプラノ:マルチェリーナ)、フランツ・オーレンドルフ(バス:バルトロ)、ペーター・シュライアー(テノール:ドン・バジリオ)、ジークフリート・フォーゲル(バス:アントニオ)、ヴァルター・オルベルツ(チェンバロ)。