34-20075

商品番号 34-20075

通販レコード→独ブラック銀文字盤

恋の花つくり ― モーツァルト・テノールの第一人者、ペーター・シュライアー。その魅力をあますところなく収録した、モーツァルトのイタリア・オペラ・アリア集。フリッツ・ヴンダーリッヒ亡き後、世界最高のモーツァルト・テナーとして君臨したシュライアー。シュライアーは、柔らかな美声と上品な詩情で人気を博しました。それは三大テノールのルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスらと比べると派手さには欠けますが、そのしっとりとした味わいが、わたしは大変好きです。シュライアーの歌唱から伝わってくるのは、ただただ心優しい世界です。強さも重厚さも必要はありません。心優しい世界は実に居心地の良いものです。心に響く声楽家に出会うと、その声楽家の人となりを知りたくなります。やがて、シュライアーの歌声で聴いてみたい楽曲、聴いてみたい声楽作品はかなり膨大になっていきました。ベートーヴェンの交響曲第9番でテノールを歌っている姿に聞き惚れ、NHK交響楽団の演奏会で頻繁に指揮をしていたオトマール・スウィトナーでもあったのでモーツァルトの有名オペラの全曲盤はシュライアー、スウィトナー&シュターツカペレ・ドレスデンの取り合わせで聴き始めました。すでに故人となっていたヴンダーリッヒが西ドイツを代表するならば、シュライアーは東ドイツの誇るリリック・テノールである。彼はエルベ河畔のマイッセン近郊ガウェルニツという小さな村で幼年時代を過ごした。音楽教師で合唱指揮者であった父親の手ほどきを受け、ドレスデンの音楽学校で学んだ後、1959年にドレスデン国立歌劇場の養成所に入り、2年後には早くもその舞台にデビュー、リリックな役柄やコミックな役柄で成功を収めた。また同時にコンサート歌手としても積極的な演奏活動を続け、現にベルリン国立歌劇場を中心に東ドイツばかりでなく、西ヨーロッパでの活躍も目覚ましく、東西両ドイツを通じて最高のリリック・テノールとして活躍を続けた。本盤に録音されている曲は、何れもシュライアーが最も得意としており、また最もその真髄を発揮できるモーツァルトのオペラのアリアで、「皇帝ティトゥスの慈悲」を除けば、モーツァルトが13歳から24歳までの間に作曲したオペラのアリアばかりである。モーツァルトの少年時代は旅から旅への生活に明け暮れていたと言っても過言ではない。度重なるウィーン旅行、パリやロンドン、あるいはベルギー、オランダなどへの大旅行、3度にわたるイタリア旅行などがその主なものであるが、この間のことは、残された彼の書簡集から多くの先輩達やその音楽に接し、教えを受けて成長したのであり、本盤で聴く曲も、ほとんどが3回にわたるイタリア旅行の間に作られたものである。もちろん、まだ幼いモーツァルトにとって台本に対する理解は浅く、劇的表現が顕著に現れるのは「イドメネオ」を待たねばならないが、音楽的内容はそれを補って余りある。
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Peter Schreier ‎– Mozart, Tenor-Arien Aus Italienischen Opern
  • Side-A
    1. 歌劇「クレタの王イドメネオ」K.366から第2幕のイダマンテのアリア Fuor del mar ho un mar in senso
    2. 歌劇「クレタの王イドメネオ」K.366から第1幕のイダマンテのアリア Noh ho colpa, e mi condanni
    3. 歌劇「恋の花つくり」K.196から第2幕のベルフィオーレのレチタティーヴォ「聞いてくれ。だが彼女は去って行く」
    4. 歌劇「恋の花つくり」K.196から第1幕のベルフィオーレのアリア「東西南北、わが高貴な祖先を知らぬ者はない」
    5. 歌劇「アルバのアスカニオ」K.111から第1幕のアチェストのアリア「胸に湧く喜びに、おお神よ、心がはずむ」
  • Side-B
    1. 歌劇「いつわりのばか娘」K.51から第3幕のフラカッソのアリア「恋の戦いは、勇気だけでは勝てぬ」
    2. 歌劇「ルチオ・シルラ」K.135から第1幕のシルラのレチタティーヴォとアリア「復讐の考えが私の心に火をつける」
    3. 歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」K. 621から第1幕のティトゥスのアリア「比類この上ない玉座の」
    4. 歌劇「羊飼いの王様」K. 208から第1幕のアレクサンドル大王のアリア「戦いに勝っても」
オトマール・スウィトナーのモーツァルトはかねてから評判がよい。地味な指揮者ではあるが、モーツァルト指揮者としての名声は古くからあり、その録音も廃盤になることなく、聴き継がれている。それは何より、本盤では、モーツァルトの音楽が喜々として歌われており、終始楽しい雰囲気に包まれているからだろう。スウィトナーのモーツァルトは、流暢な音楽が延々と続く感覚。ハッタリもクセもないのだけれども聴き進んでいると、モーツァルトの完璧な音楽性を改めて痛感する。シルクのようなシュターツカペレ・ドレスデンの弦の美しい響きも絶品。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とよく似た格調高い響きだけれど、音符を完璧に弾き切るシュターツカペレ・ドレスデンのオーケストラの実力には凄みすら感じさせ、ウィーン・フィルよりもやや落ち着いた輝きが全体によく溶け合ってとてもいい。緩徐部分ではじっくりと落ち着きをみせて、ソロ奏者の妙技がじっくり味わえます。音楽が息づいているというのはこんな感じを指すのであろう。
オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ドレスデン。
モーツァルト:オペラ・アリア集
シュライアー(ペーター)
徳間ジャパンコミュニケーションズ
1992-03-25