34-10955

商品番号 34-10955

通販レコード→独初期チューリップ赤ステ盤[オリジナル]

このハイドンは温かい ― オイゲン・ヨッフムは生涯一貫してブルックナーに愛情を注いできたといって過言ではない人であり、残された録音の多さにもそれは示されている。有名な2つの全集(バイエルン放送交響楽団とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのグラモフォン盤。ドレスデン・シュターツカペレとのEMI盤)の他に、モノラル時代に数点在るが、1958~67年のステレオ録音。ベルリンのイエス・キリスト教会とミュンヘンのヘルクレスザールの二箇所で行われた録音セッションが行われている。そうしたブルックナーの交響曲全集制作の最中、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と収録したハイドンの『ロンドン交響曲全集』。EMIのブルックナー交響曲全集と並ぶヨッフムの傑作として知られ、この大器晩成型の巨匠がその真価を発揮した記念碑的名盤とされる。本盤は、ロビンス=ランドン校訂版による世界初の全曲録音として話題となったヨッフムのロンドン交響曲(ザロモン・セット)全12曲とは違って、ステレオ初期に録音されていたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との2曲。このハイドンは愉しい。ドイツ的な風合いの再現という意味では、質実剛健なサウンドによるヨッフムのハイドン演奏の面白さがダイレクトに迫ってきます。もちろん真面目・厳格一辺倒な演奏に終わらず、積極的な音楽の運びと、朴訥な中の巧まざるユーモア感覚が何とも魅力的だ。ハイドン創造の原点はここにありと云わんばかりの錯覚を起こさせる稀有な名演だと思います。ヨッフムのハイドンは、ブラームス、ブルックナー、モーツァルトと並んで至宝。自然で、丁寧、慈愛、ユーモアに満ちた好演ばかりで、音楽を聴く喜びで充満している。ヨッフムの演奏は、これらの曲をベートーヴェンの先駆的作品として捉えた、文字通りにシンフォニックなアプローチがポイントです。もちろん真面目・厳格一辺倒な演奏に終わらず、全曲のそこかしこに親しみやすい『パパ・ハイドン』的な暖かい雰囲気がにじむあたりは、ヨッフムの飾らない人柄の反映とも言えそう。ここまで真摯で見事な演奏をやれば、古楽スタイル云々とかどうでもよくなる。ハイドンをより自然に近づけ心暖まるものにする感じ…。テンポを始め、表現上の工夫もきちんと施され、長い歴史を誇るモダン楽器演奏の伝統的イメージを体現したスケール豊かなハイドン像は、いかに時代が変わろうとも廃れることはないでしょう。長らく名盤の地位を保っているが、今後も聴き継がれていくであろう素晴らしいレコードです。
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オイゲン・ヨッフム(Eugen Jochum, 1902年11月1日〜1987年3月26日)は、バーベンハウゼン生まれ。アウグスブルク音楽院でピアノとオルガンを学び、1922年よりミュンヘン・アカデミーでハウゼッガーに指揮を学ぶ。1949年にバイエルン放送交響楽団の設立に関わり、音楽監督を1960年まで務め同楽団を世界的レベルにまで育てた。演奏スタイルに派手さはなく地味ではあるが、堅固な構成力と真摯な態度、良い意味でのドイツ正統派の指揮をする。やはり本領はバッハ及びロマン派音楽と思われる。彼は音楽を自己の内心の表白と考える伝統的ドイツ人で、したがってバッハ、ブルックナー、ブラームスに於いては敬虔な詩情を迸っている感動的な名盤を生むが、モーツァルトの本質を探ろうとするほどに湧き溢れて来るがごとき心理的多彩さや、ベートーヴェンの英雄的激情、それにリヒャルト・シュトラウスの豊麗なオーケストラの饒舌を表現するには乏しい結果となっている。ヨッフムがはたして、すでに成長すべき極言まで達してしまった人なのか、それともさらに可能性が期待できるのか、いつまでも巨匠の風貌に至らないのが、好感とともに焦燥を禁じえないが、おそらく同世代のカール・ベーム、エドゥアルト・ファン・ベイヌム、ヘルベルト・フォン・カラヤンたちに比べれば個性と想像力において弱く、名指揮者にとどまるのではないかと思われた。ところが、後年のヨッフムの録音活動の活発さは目を引いた。戦前のSPレコードでは、わずかにテレフンケンのベートーヴェンの「第7」「第9」ほどだったのと比べて、彼が晩年型の指揮者と称されることを簡易に理解できる面だろう。ベルリン放送交響楽団(1932~34年)、ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団(1934~49年)、バイエルン放送交響楽団(1949~60年)、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1961~64年)、バンベルク交響楽団(1971~73年)とオーケストラ首席指揮者を務めた変遷を見ると、バイエルン放送響以外は短いのに気づくが、同時に2つのオーケストラを兼務することをしていないことも見て取れる。そうした、一つ一つの歴任を経て来たことは彼の律儀な性格のあらわれかも知れない。
でも彼の真価が本当に発揮されるのは1970年代に入ってからで、幾つかの楽団を渡り歩いたのちの70歳代になってからである。シュターツカペレ・ドレスデンとの「ブルックナー・交響曲全集」やロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との「ブラームス・交響曲全集」、そしてロンドン交響楽団との「ベートーヴェン・交響曲全集」をのこしたのもすべてこの時代である。ヨッフムは若い頃からブルックナー作品に熱心に取り組み、やがてブルックナー協会総裁も務めるなど権威としてその名を知られるようになります。交響曲全集も2度制作しているほか個別の録音も数多く存在しますが、晩年に東ドイツまで出向きシュターツカペレ・ドレスデンを指揮してルカ教会でセッション録音したこの全集は、独墺でのさまざまなヴァージョンによる演奏など、数々の経験を膨大に蓄積したヨッフム晩年の方法論が反映された演奏として注目される内容を持っています。その演奏は重厚で堂々たるスケールを持っていますが、決してスタティック一辺倒なものでは無く、十分に動的な要素にも配慮され起伏の大きな仕上がりを示しているのが特徴でもある。ベートーヴェンの交響曲も重要なレパートリーとしており、交響曲全集についてもドイツ・グラモフォン(1952〜61)、PHILIPS(1967〜69)、EMI(1976〜79)と3度にわたって制作しています。長大なキャリアの最初から最後まで、常にレパートリーのメインに据えられた重要な存在だったベートーヴェンだけにロンドン響を指揮した晩年の録音でも、味わい深い演奏を聴かせてくれています。早熟な天才指揮者ではなかったが、長く生き、途切れること無くオーケストラを相手したことで職人指揮者で終わることもなかった。
交響曲第88番ト長調 Hob.1-88『V字 』(1961年10月)、交響曲第98番変ロ長調 Hob.1-98(1962年5月)ステレオ録音。
DE  DGG  SLPM138 823 ヨッフム  ハイドン・交響…
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ハイドン:交響曲第88番&第91番&第93番
ヨッフム(オイゲン)
ユニバーサル ミュージック クラシック
2005-10-26