34-19810

聴いてみて良かったと、必ず納得できます。

― どの楽章も素晴らしいが、とりわけ求心力に満ちた第1楽章、深淵なまでの第4楽章は絶品と言われています。
当時のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「第九」の名盤として、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー盤と並ぶ。これはフェレンツ・フリッチャイが一連のハンガリー出身指揮者の一人として威光を放っていた証左と断言できる、実力の優秀さを存分に発揮した圧倒的な演奏です。
適切なテンポ設定と完璧なまでにベルリン・フィルを掌握したその指揮は、録音当時43歳とは思えないほどの仕上がり、重厚な風格を持ち、音はずっしりと重く、分厚い低音に支えられて堅牢に作り上げられている様を感じさせます。しかも、ちょうどこの1957〜58年という時期は、フリッチャイに白血病の症状が出る直前にあたり ― 1958年秋から暫く療養、1959年秋に ― 復帰後からの指揮内容との差に関しも良く取り沙汰されますが、この「第九」の演奏においては病気の兆候を感じさせる要素は見当たりません。
さらに面白いのは、フリッチャイとベルリン・フィルが録音を行った1957年12月28日の直前 ― 1957年12月10〜17日に、英EMIでアンドレ・クリュイタンスが同じ曲を同じ合唱団で録音していたことです。録音場所はイエス・キリスト教会とグリューネヴァルト教会で異なるものの、これだけ近接して同じ曲を録音するのは珍しいでしょう。重心が低く全体的に重厚な当時のベルリン・フィルの音の傾向は同じものの、レーベルや指揮者が異なることにより完成された盤は全く別個のものになりました。
ソリストは、イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)、モーリン・フォレスター(アルト)、エルンスト・ヘフリガー(テノール)、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)。
特に聴きどころである合唱はベルリン聖ヘトヴィヒ大聖堂聖歌隊を起用して行われた、この「第九」はフリッチャイ&ベルリン・フィルによる初のステレオ録音となったばかりでなく、フィッシャー=ディースカウ唯一の第九のセッション録音としても名高い演奏です。
バリトンの声が天井へ抜けていく様が印象的です。ソリスト4人の音像も大きくはっきりしていて合唱団も纏まりがあるバランスの録音です。
ベルリン・フィルもエモーショナルで、細かい処にも気を使い、本気でヘルベルト・フォン・カラヤンと違う世界観を、しっかりと指示を守って誠心誠意演奏している。その推進力たるや、正に独逸の音。
  • Record Karte
  • 1957、1958年ベルリン、イエス・キリスト教会での録音。豪華布張りボックス、ブックレット付属。
ベートーヴェン:交響曲第9番
フリッチャイ(フェレンツ)
ユニバーサル ミュージック クラシック
2001-02-07

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