34-23602

商品番号 34-23602

通販レコード→独ブルーライン盤

地震・ウイルスは何のために起こるのか。 ―  そのような問答のような音楽で、シベリウスを聞こうと〝北欧の白夜の音楽〟というイメージに拘泥されてはいけない。大ヒットしたアメリカ映画で印象的に使われていたのに感動して、交響詩《フィンランディア》を気に入り、同じく北欧のグリーグの音楽に似た世界を期待し、楽しんでみようと言うのなら交響曲ではまず第2番、第5番、第7番の順番でシベリウスの民族的・古典的な部分に留めるのが良い。レコード店の主や先達がカラヤンなら第4番だとか、カラヤンが得意として演奏会で度々演奏した第6番を挙げるだろうが避けるべし。この作品は、シベリウス自身の指揮で初演された。当時シベリウスの名声は固まっていましたから聴衆の多くは期待をもって集まったが、評論家も含めてどんなリアクションをとっていいものやら大いにとまどったそうです。時が経ち、シベリウス研究の権威であるセシル・グレイが、「最初から最後まで、余分な音符は一つとしてない」とのたまい、第7番と並ぶ最高傑作という御宣託もあって評価が固まったという経過があります。カラヤンとベルリン・フィルの演奏では、それはそれは暗い暗い、深い森の中。その森がフィンランドの森なのか、ドイツの森なのか、どこの森なのかはわからないのですが、光はあまり差し込んでこなく暗い。音も余計な音は聴こえず静か。この森がどのくらいの広さなのか出口は近いのか、どちらにあるのか、見上げる空模様に慣れてくると『怖い』気はしなくなっている。自然への脅威に鈍くなってしまうというのか、この曲の音響だけが存在する凄味は類似している。熊本地震は熊本県民に掛け替えのない経験値を与えた様に、今般の非常事態宣言の中、この4番からシベリウスの独特の音楽感が更に深まっていくのだろうなと感じます。同世代の指揮者のように自分で作曲をしなかった(全くないわけではないのだが)ヘルベルト・フォン・カラヤンにとって。自分の感性を演奏という形で表現したかったのが、1960年代のレコードではないだろうか。独自のアプローチで突き進んだカラヤンのシベリウスは、倍管大編成オーケストラを駆使した壮麗無比なサウンドによる後期ロマン派風大絵巻の趣で、『フィンランディア』などあまりに過度な表現が賛否を分かちましたが、はまってしまうと抜けられないのもカラヤンのシベリウスのおもしろいところです。シベリウスが「自分の作品のただひとりの最高の解釈者」と評したカラヤンが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団から透明な抒情と深い憂愁感など作品に備わる情緒を美しく引き出した世紀のプロジェクトと呼べる録音を1964年から1967年にかけてドイツ・グラモフォンに行った。生きたサウンドを満喫するなら絶対これ。シベリウスは新作の依頼を度々受けながらも、晩年20年程を一切創作活動をせず(交響曲第8番を何度も完成したとは言っているが)世界中のラジオ放送を聴くのを楽しみにしていた。そしてカラヤンの演奏を高く評価したことがカラヤンにも励みとなったようですが、それは横に置いておいて。1960年代の録音の中でもシベリウスには熱意を込めている。それはカラヤンの個性が良く出た内容で、シベリウスが気に入っていたということがお墨付きの大本命とはならない。シベリウスらしいかどうか、それはシベリウスの音楽に求めているものが聞き手それぞれだからなのだけれども、この演奏は鳥肌モノ。1960年代のカラヤンとベルリン・フィルの豪快で凄く立派なシベリウスの音楽になっています。とにかくダイナミックスの幅が広く鮮やかで迫力満点。シベリウスの壮麗かつ精緻な楽曲とカラヤンの音楽的資質が相性が良いためか、北欧的といった形容を超えた純器楽的演奏として楽曲の性格を巧みに描き分けている。深層心理を探求したような内省的で晦渋な第4番、北欧の大自然の雰囲気を伸びやかに描いた第5番、独創的な作風が自在に発揮された思索的な内容の第6番、そして各楽章の要素が融合一体化して究極点に達した感のある、単一楽章という独自の交響曲形式の到達点を示した第7番の交響曲と管弦楽曲 ― トゥオネラの白鳥、交響詩《フィンランディア》、悲しきワルツ、交響詩《タピオラ》に名手クリスティアン・フェラスをソリストに迎えたヴァイオリン協奏曲。北欧的牧歌の漂う場面でもカラヤンはドラマを構築している。シベリウスがスコアにしたものからカラヤンは、別の音楽を掘り下げようとしている。牧歌的な部分から迫力ある部分まで表現の幅が広く、リズムも引き締まっています。演奏はオーケストラに合奏の完璧な正確さを要求し、それにオーケストラも応えている。それはカラヤンと演奏を作り上げていくのが楽団員みんなが楽しくて仕方がなさそうだ。音を徹底的に磨き上げることによって聴衆に陶酔感をもたらせ、さらにはダイナミズムと洗練さを同時に追求するスタイルでカラヤンの個性が濃厚で面白い。この後、クラシック界を席巻するカラヤンの気概と思いのたけを思う存分出し切っているようである。1981年初発の4枚組で、オッコ・カムがベルリン・フィルを指揮した「交響曲第2番」と、ヘルシンキ放送交響楽団との第1番と第3番をセットにした6枚組でも、1973年に発売されていた。
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クリスチャン・フェラスはヘルベルト・フォン・カラヤンお気に入りのヴァイオリニストとして、1960年代ドイツ・グラモフォンのヴァイオリン名曲のレコーディングでの中心的存在でした。靭やかと一言で言われるその音色は清楚で良く歌って、しかも過剰なヴィヴラートに陥らない抑制された情熱と官能さえ感じさせて、瑞々しいテクニックがどこまでも爽やか。シベリウスの音楽としては、やや濃厚で暗めだがシベリウスに相応しい冷涼な味わいにも不足しない。この味わいの濃さは、カラヤンの個性に間違いない。主張が明快で聴いていて楽しいだけだ。フェラスの実に美しい情念っぽい高音が終始印象的。特に中間楽章のゆったりとした官能性はフェラスの独壇場と化していて、カラヤンのリードを奪っているが、しかしカラヤンリードはそれなりに効果的で、この《ヴァイオリン協奏曲》を北欧の冷たさのみに終わらせていないのは流石というべきでしょう。そこがまたカラヤン節とも言える。そして、ライヴでの録音はありますが公式なセッション録音として唯一の録音です。
  • Record Karte
  • ヴァイオリン協奏曲:クリスティアン・フェラス(ヴァイオリン)、トゥオネラの白鳥:ゲルハルト・シュテンプニク(コール・アングレ)。1964年10月28日(フィンランディア)、10月29-30日(ヴァイオリン協奏曲)、10月30日(タピオラ)、1965年2月22-24日(第5番)、26-27日(第4番)、9月18-21日(トゥオネラの白鳥)、1967年1月30日(悲しきワルツ)、9月20-21日(第6番・第7番)ベルリン、イエス・キリスト教会での録音。
  • DE DGG 2740 255 カラヤン・ベルリンフィル SIBEL…
  • DE DGG 2740 255 カラヤン・ベルリンフィル SIBEL…
シベリウス:交響曲第4番~第7番
ヘルベルト・フォン・カラヤン
ユニバーサル ミュージック
2018-10-24

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