34-20452
商品番号 34-20452

通販レコード→独ブルーライン盤
ブラームスの意匠を継いで ― 20世紀最高の名手のひとり、マウリツィオ・ポリーニがバリバリの超絶技巧でショパン、シューベルトから新ウィーン楽派作品に至るまで圧倒的な演奏を聴かせていた頃のレコーディング。ポリーニの磨き抜かれた強靭なピアノが細部では精緻の限りを尽くしながら、一方では気宇広大ともいえるスケールの大きな演奏を実現させた、ブラームスのピアノ協奏曲第1番。生ける伝説、ピアノ界のミスター・パーフェクトによるブラームスの第1番は、なんと、ドイツ・グラモフォンへ3度録音しています。本盤はその、最初の録音。交響的色彩の色濃いこの作品でのベームとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の重厚なサポートも特筆すべきもの。ブラームスのピアノ協奏曲第1番の定番といって良い、全てが輝かしく確信に満ち、美しくもエネルギッシュなブラームスを楽しめます。ポリーニの国イタリアではピアノ音楽にオペラのヴェルディは愚か、ロッシーニやプッチーニにさえ匹敵するものがない。そのためポリーニは自国のものでないベートーヴェンやショパンを弾くのが、彼の演奏にはあまりにも強いイタリア的性格が示されていた。すなわち明晰な感覚美による合理的な造形である。そこに現されるクリアな美しさは、まさに地中海の伝統とも言える古典主義を思わせたが、ポリーニにおいては、それが過去を懐かしむのでなく、常に現在と密着している。イタリア人の国民性の特色は現実に足を踏まえたリアリズムにあるが、ポリーニの音楽にはそのことが強くにじみ出ている。当時、ポリーニを最もお気に入りとしていた、巨匠カール・ベームとの共演です。モーツァルトの2曲の協奏曲に始まり、ベートーヴェン、そしてこのブラームスの第1番の録音をベームと残したポリーニは、たびたびコンサートでも共演しました。あるインタビューでは「ベームの音楽的な雰囲気は類まれで、あのような体験は二度とない」とまで語り、ベームの奏でる音楽を敬愛していました。最初の第1協奏曲の録音は、そのベームとの最後の録音で、厳格な演奏に支えられてポリーニのソロが生き生きと歌を奏でています。完璧なテクニック、研ぎ澄まされた美音、作品に対する妥協のない真摯さといった彼の美質がすべて発揮された演奏です。一言でいうと全くブレの無い硬派な演奏。ルバートが必要最小限なため、アルトゥール・ルービンシュタイン等の演奏と比較すると華麗さという点では物足りなさも感じもしますが、その無味乾燥な弾きっぷりにポリーニ特有のエスプリを香らせています。強打鍵時の和音のアンサンブルやテンポの正確さという意味、〝ブラームスの意匠〟を正確に再現、これも録音秀逸な御蔭か。
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カール・ベームとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団という自他共に許すドイツ音楽の正統派がブラームスの録音に選んだマウリツィオ・ポリーニは、1942年イタリア、ミラノ生まれ。ハンス・フォン・ビューローの流れを汲むカルロ・ヴィドゥッソに師事。11歳で師と共にジョイント・リサイタルで舞台デビュー。1960年の第6回ショパン国際ピアノ・コンクールで満場一致の1位を獲得するが、その後演奏活動を中止する。1968年に復帰。1971年にはヨーロッパ・ツアーを行ない大成功を得る。完璧なテクニックと透徹したスコア・リーディングによって作品を浮き彫りにする、20世紀後半を代表するピアニスト。独奏ピアノが華やかに活躍する協奏曲と違ってシンフォニックな、ブラームスのピアノ協奏曲。「第1番」の第1楽章と言えば豪壮な冒頭部分がまず注目されるところですが、ここでのベームの指揮は気合十分で決して大袈裟に喚かせたりせず、必要十分な力の配分をおこなうことで結果的にウィーン・フィルの各楽器が実に美しい音で鳴っているのが印象的です。長老指揮者ならではの高所大所からの誘導は、こうした大規模な音楽の場合非常に効果的ということもありますが、何よりのポイントはやはりオーケストラの力量でしょう。ポリーニもベームのつくりだす深々としたオーケストラ・サウンドを背景に磨きぬかれた表現を聴かせ、ドラマティックな第1主題部はもちろん、第2主題部での抒情的な曲想への配慮も十全と言える仕上がりです。特筆されるべきは、当時85歳だったベームが、ポリーニの熱演に合わせるかのように実にホットな演奏を聴かせていることで、展開部など両者のスリリングなやりとりには驚くばかり。一方、再現部での巨大な序奏部の到来などは晩年のベームならではのスケールの大きさであり、色々な意味で指揮者とソリストの個性の違いが良い方向に作用しているように思われます。そして第2楽章“アダージョ”。いかにもブラームスらしい深い抒情の聴かれる緩徐楽章であるこの楽章では、ベームの誘導の自然さが何よりも魅力的です。息長い弦楽セクションの扱いに加えて、繊細な色彩を添える管楽器のバランス調整がとにかく見事であり、ピアノ・ソロを巧みに引き立てる沈潜ぶりに示されるスタティックな美感はウィーン・フィルでなくては実現出来ない種類のものでもあります。特に中間部でのエモーショナルでありながらも優美な絡み合いは、続く主部での高まりとコーダでの内省美と効果的なコントラストを形成してまさに絶妙です。快活で力に溢れる終楽章“ロンド:アレグロ・ノン・トロッポ”では、ポリーニの名技が聴きものですが、随所で繰り出されるオーケストラの表情豊かな響きも注目もので、エピソード部分はもちろん、有名なフーガ部分や、カデンツァ直後の深い情感を湛えたコーダでの各楽器の扱いは見事と言うほかありません。
1979年12月ウィーン、ムジークフェラインザールでの録音。優秀録音盤。ヴェルナー・マイヤーのプロデュースとギュンター・ヘルマンスの録音。
DE DGG 2531 294 ポリーニ&ベーム ブラームス・ピアノ…
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