34-18010
商品番号 34-18010

通販レコード→独ブルーライン盤
抒情的な部分での繊細な表現力は素晴らしい聴きもので、その妙演に長年の手兵であるバイエルン放送交響楽団も見事にこたえている。 ― ラファエル・クーベリックには「その音楽は概して中庸で、素朴な味わい云々」といった評が付いてまわる。商業録音の成果に関して多く言われていたことで、音楽的特質においてクーベリックは一種フルトヴェングラー的な気質を持っていたとされ、個性的だが、あざとくないアゴーギグ。例え方を変えれば、演歌すれすれの泣き節。激しくも気高い情熱。心憎いまでの絶妙な間の取り方。そしてオーケストラとの阿吽の呼吸。ザックバランな言い方をすれば、ぶっ飛び破廉恥演奏ではないが、間違っても退屈な優等生演奏ではない。かえって要所要所で「おっ、おぅっ」と仰け反らされるテクニシャン。とはいえ、それも絶対的な安心感で身を任せていられる。全体的に湧き立つような早めの推進力のあるテンポが採られ、その中で野卑にならないギリギリのところで見事な緩急が付けられています。細部の彫琢は入念に整えられており、ちょっとした打楽器や木管のアクセント一つが意味深く響き、対旋律が埋没することなく絶妙なバランスで引き立つよう目配りされている。熱狂と哀愁とが絶妙に交錯する作品の本質を、あくまでも自然な流れの中で描き出す手腕は全盛期のクーベリックならではといえるでしょう。1973~1976年、ミュンヘン、ヘルクレスザールにおけるステレオ録音。ドヴォルザークの管弦楽曲というと『スラヴ舞曲』ばかりが取り沙汰されますが、一連の交響詩群もダイナミックな迫力と美しい旋律の双方を満たす親しみやすい作風なので、この作曲家の交響曲がお好きな方は聴いておいて損の無い作品が目白押しともいえる状態です。特に、このアルバムにおけるクーベリックの演奏は、たいへん優れた演奏として評価の高いもので、描写的性格はもちろんのこと、音響面での充実振りもかなりのものです。本盤は交響詩《金の紡ぎ車》と《野ばと》。1973年4月16日、まだ43歳でイシュトヴァン・ケルテスがテル・アビブの海岸で遊泳中に高波にさらわれ行方知れずとなったことで、1973年12月に『スラヴ舞曲集』を録音し、フルトヴェングラー、カラヤン、ベーム、バーンスタインといったレコードでの人気指揮者が全曲盤を残さなかったにもかかわらず、LP初期から定盤とされる録音に恵まれてドヴォルザークの序曲と交響詩全曲を完成しました。クーベリックはチェコの人々にとって『スラヴ舞曲集』は極めて神聖な音楽であると語っていた。本盤をはじめ、指揮者とオーケストラが作品を知り尽くし文字通り一体化していることが判ります。
関連記事とスポンサーリンク
録音は1950年代からミュンヘンの録音会場として使われ、その優れた音響で知られるヘルクレスザールで行なわれました。後の1986年にガスタイク・フィルハーモニーが出来るまではバイエルン放送交響楽団の定期演奏会も、すべてここで開催されていました。1800人以上を収容できる典型的なシューボックス形式のホールで、細部をマスクし過ぎない適度な残響感、高音域から低音域までバランスのとれた響きの2点で、録音には最適であり、マウリツィオ・ポリーニも好んでそのソロ録音をここで行なってきました。ドイツ・グラモフォンによるクーベリックとバイエルン放送交響楽団の録音も一部を除いて、このホールで行なわれており会場の特性を知り尽くした安定感のあるバランスが聴きものです。ドイツ・グラモフォンならではのオーケストラ全体を俯瞰できるサウンドの中で、木管や打楽器など重要なソロ・パートが適度な明晰さを持ってクローズアップされています。楽器配置はいつもながらのヴァイオリン両翼型で、弦楽セクションの動きの激しいドヴォルザーク作品にはまさにうってつけ。立体感充分の音響面での成果は、ヴァイオリン・パートを左右に分ける配置が功を奏しています。
アントニン・ドヴォルザークは1896年3月、最後となる9回目のイギリス訪問を果たす。この直後、ブラームスからウィーン音楽院教授就任の要請を受けるが、これを断った。アメリカ滞在や最後のイギリス訪問を通じて、ボヘミアこそ自分のいる地だと思い定めたのだった。この後、ドヴォルザークは、標題音楽に心を注ぐようになる。チェコの国民的な詩人カレル・ヤロミール・エルベンの「花束」という詩集の中のバラードにインスピレーションを得て4曲の交響詩を1896年に立て続けに作曲している。本盤は同時録音した前半2曲の「水の精」、「真昼の魔女」と「交響的変奏曲」(2530 712)と同時発売された。第1面の交響詩「金の紡ぎ車(Zlatý kolovrat)」 作品109、B.197は1896年1月15日から4月25日に作曲。1896年11月21日にロンドンで初演された。エルベンの詩による4曲の交響詩の中では最も長く、冗長との批判もある。このため、ヨゼフ・スークにより改訂されたこともある。ストーリーはドルニチュカという娘が森の奥の小屋で継母とその実の娘と一緒に住んでいた。狩にやってきた若い王に水を差しだし見初められたドルニチュカは城に向かう途中、継母らの計略で殺され、その遺骸は森に捨てられる。しかし魔法使いが現れ、再び生き返らせる。魔法使いはドルニチュカに替わって王妃となった継母の娘に金の紡ぎ車を贈る。戦場から戻った王がその糸車で糸を紡ぐように命じ王妃がそれを回すと、糸車が継母達の悪行を歌う。王はその歌に従って森へ駆けつけ、ドルニチュカと再会して彼女と結ばれる。第2面の交響詩「野ばと(Holoubek)」 作品110、B.198は1896年10月22日から11月18日の作曲。1898年3月20日、ブルノでレオシュ・ヤナーチェクの指揮により初演された。物語は、夫の死を嘆く若い未亡人から始まるが、その涙は偽りの涙であると語る。やがて若い美形の男が未亡人に近づき、2人は結婚する。亡くなった先夫の墓の上に樫の木が生え、野鳩が巣を作り悲しげな声で鳴く。妻はその声を聞き、発狂して自殺してしまう。先夫は彼女が毒殺したのであった。音楽はこの物語を忠実になぞり葬送の音楽から始まり、若い男と出会う未亡人の心のざわめき、結婚の祝宴、悲しげな野鳩の鳴き声を描き出し、最後は妻の罪を赦すかのように穏やかな長調で終わる。すべての主要主題が最初の1つの動機から導き出され多彩な変容を遂げる技巧的な構成であり、そのために高い緊張感と引き締まった構成をみせる傑作でドヴォルザークの交響詩の中で最も演奏頻度の高い作品である。
1974年6ミュンヘン、ヘラクレス・ザール録音。
DE DGG  2530 713 ラファエル・クーベリック ドヴォル…
DE DGG  2530 713 ラファエル・クーベリック ドヴォル…