34-20475

商品番号 34-20475

通販レコード→独ブルーライン盤

自然の輝かしさにあふれている ―  北欧に行ってみたくなる、かの地のことをあれこれ想像させる景色や風物。それが最大公約数的な北欧だとしても、ご当地の方々を崇める我々日本人が好む〝お国もの〟という概念がよくわかります。本盤は日本でも大いに注目されはしましたが、その後は ― わが国ではどうかというと、ご当地指揮者的な存在でいまに至ってます。1969年の第1回カラヤン国際指揮者コンクールで優勝したオッコ・カムがその翌年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に客演し、同郷の大作曲家シベリウスの《交響曲第2番》を録音しました。若干23歳という驚くべき年齢での録音でした。それも、ヘルベルト・フォン・カラヤン以外は〝門外不出のベルリン・フィル〟を指揮しての録音。指揮もオーケストラに先導されて演奏をただなぞっているのでは決してなく、後に繋がるカム独自の解釈を納得させた上で、重厚なエッチングを施しているのが聴き手にも理解できるでしょう。各楽章の随所にあふれる歌い回しの豊かさ。それがカラヤン的なうまさでなく、大らかで北欧の養分たっぷりみたいな自然の輝かしさにあふれている。ときに鳴りすぎるベルリン・フィルから、その威力をもてあましつつも、鼻に抜けるようなクールな寒気を感じさせてくれる第2楽章は実に魅力的。堂々たる終楽章では、若さの発露も見られ、熱くなります。それはほの暗い中でも熱い灯が次第に大きくなってくるかのように、最後は壮大に曲が締めくくられます。しかし、これは将来の発展をカラヤンに寄せていたベルリン・フィルでなくては成し得ない演奏です。カラヤンの意向がどれほど働いていたかは想像でしかありませんが、コンクール優勝による副賞としても、ドイツ・グラモフォンにベルリン・フィルと23歳で世界デビューとなるアルバムを作成するということは、現代でも無いケースと思われます。カラヤンの後任に一番近かろうと本命筋だったロリン・マゼールもドイツ・グラモフォンへの初録音は25歳を過ぎていましたので、最少年記録を塗り替えた23歳での録音はまさに驚異的でした。どうもここにもカラヤンの、マゼールに対する牽制を含みにないかと思えてしまいます。その後に1971年から1977年にかけて首席指揮者を務めたヘルシンキ放送交響楽団との第1番と第3番の録音計3枚のレコードをドイツ・グラモフォンに残します。一方のカラヤン指揮では「交響曲第4〜7番」の録音にとどめて、ドイツ・グラモフォンは「シベリウスの交響曲全集」のセットとしています。尚、カラヤンとベルリン・フィルは1976年から1981年にかけて英EMIに第1番から第3番を含めてデジタル録音する。レーベルによって苦手があるのか、契約している指揮者、オーケストラがそれどころじゃなかったのか。この時はまだ《交響曲第2番》はベルリン・フィルにとっても初めての録音であり、恐らくドイツ・グラモフォンにとっても初の《交響曲第2番》だったと思われます。その後正規録音ではジェームズ・レヴァイン盤のみ。カラヤンとベルリン・フィルは、カムのこの演奏をたたき台としたのかもしれない。演奏はこれまできちんと評価されていなかったかも知れませんが、フィンランドの雄大な自然を彷彿とさせる名演として高い評価を得ています。激しさを持つオスモ・ヴァンスカやレイフ・セーゲルスタムとは遠く異なり、またストイックなまでに透徹したパーヴォ・ベルグルンドとも異なり、オーケストラを厳しく締め付けるのではなく、自発性を尊重することを方法論とするカムの音楽造りは、おおらかな自然体の印象を与えるネーメ・ヤルヴィや渡邉暁雄に近いスタイルです。シベリウスの音楽の本質を他の誰と比べても劣らないほどに掴んでいながらも、ロマンティシズムを感じさせる特徴は、シベリウスを得意とする他の指揮者と比べて、カラヤンのコンクール優勝者の持ち得るものでしょうが、その清々しさと歌の発露は、ベルリン・フィルが親分の監視を逃れて、気持ちよく演奏しているさまが聴き取れます。カラヤンのオーケストラは、どこをとっても高性能で、ほれぼれするくらいに完璧。ドイツ・グラモフォンも十分の意気込みで、解像度の高さと、ベルリン・フィルらしい重厚な低弦を基にした見事なピラミッド・バランスでの響きが、長年本拠としてきたイエス・キリスト教会での録音で、クラウス・シャイベの腕前が発揮されています。アナログ完成期、シャイベがエンジニアを務めた録音はかなり優秀なもので、深々としたホール・トーンをきちんと実感できる音調は、演奏の魅力をさらに高めてくれています。
関連記事とスポンサーリンク
  • Record Karte
  • 1970年2月ベルリン、イエス・キリスト教会での録音。Engineer [Recording] – Klaus Scheibe, Recording Supervisor – Dr. Manfred Richter, Producer – Karl Faust.表紙のステッカーの表記は、1.Preisträger Int. Dirigentenwettbewerb Herbert von Karajan Winner of the 1st Herbert von Karajan Conducting Competition Berlin 1969
  • DE DGG 2530 021 オッコ・カム シベリウス・交響曲2番
  • DE DGG 2530 021 オッコ・カム シベリウス・交響曲2番
シベリウス:交響曲第2番
カム(オッコ)
ユニバーサル ミュージック クラシック
2006-11-08

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。