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ボールトがEMIに遺した録音の最良のもののひとつ。 ― 《トーマス・タリスの主題による幻想曲》(1910)は個性的なスタイルがしっかり確立した、最初期の作品である。20世紀初頭の宗教音楽祭のために書かれた作品で、テューダー王朝の作曲家だったトーマス・タリスによるシンプルながらピュアで美しい聖歌をもとに、『幻想曲』に発展させた、レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872年10月12日〜1958年8月26日)の看板曲で、とても抒情的で誰もが気に入る曲だ。ヴォーン=ウィリアムズは、ここでオリジナルとは全く異なる時間軸の中に、その美しい旋律を移植することによって、世にも稀な美感を引き出すことに成功しています。断続的で息の短い、軽やかな美しさが本分ともいえる古楽の特質を逆手にとり、こうした連続的で息の長い音楽に変質させる手法をとるあたり、いかにも“優秀”がトレード・マークのヴォーン=ウィリアムズらしいところです。ヴォーン=ウィリアムズは1872年生まれで、1903年ごろ作曲を始め完成されたのは1910年なので、38歳の時の作品になる。ロンドンの王立音楽大学で作曲を学び、在学中にホルストと知り合い親交を深める。演奏形態もユニークです。民謡の採集や教会音楽の研究を通して独特の作風を確立し、イギリス人による音楽の復興の礎を築いた。大編成の弦楽合奏に9人の弦楽合奏、それに弦楽四重奏を組み合わせるという、3つのアンサンブルの複合形態を採用しており、これによって、ともすると単調に陥りやすい弦楽合奏の音楽に、繊細かつ効果的なコントラストを付与することに成功しています。
バロック時代の合奏協奏曲を現代に蘇らせたような趣ですが、大きく異なるのは表現レンジが極めて広大なこと、管楽器のソロを思わせる音からパイプ・オルガン的な重厚なトゥッティまで交えながら、弦楽の魅力を縦横無尽に引き出すその手腕には見事なものがあります。しかもそこには常に憂愁を感じさせる雰囲気が漂っているのです。1975年にステレオ録音されたボールトの演奏は、張りのあるフレージングと雄大なスケール感、合奏の種類の適切な描き分けに配慮したもので、この曲の代表的名演とされる立派なものです。イギリスの田園風景を彷彿とさせる牧歌的な作風は、広くイギリス国民に愛されている。日本では『惑星』で知られるホルストに比べて知名度が低いが、欧米ではホルストより高く評価されている。《コンチェルト・グロッソ》は1950年にアマチュア弦楽合奏団のために書かれた作品で、比較的平易な演奏技術で大きな効果を上げるように書かれています。ボールトゆかりの作品だけに、演奏の仕上がりも上々です。《二重弦楽合奏のためのパルティータ》は1946年から1948年にかけて書かれた作品で、もともとは二重の弦楽三重奏のために書かれた室内楽作品でしたが、のちに拡大されて二重弦楽合奏のための作品に変貌。そのため第2ヴァイオリン・パートなしという変則的な編成となっています。曲調は新古典主義的な傾向を感じさせるもので、晩年のヴォーン=ウィリアムズらしいドライさを基調に、ときおり美しい旋律を交えながら進められて行きます。ボールト晩年の1975年に録音された、ここでの演奏には、そうした様式上の特質が端正に描かれています。
ボールトが EMI に遺した録音の最良のもののひとつ。エルガーやホルスト等も得意としたイギリス音楽のスペシャリストとされるボールトによるヴォーン=ウィリアムズは、バルビローリ指揮のものと並んで決定版と言えるものです。長寿の作曲家と長寿の指揮者の組み合わせでもあり、極めて“イングリッシュ”な両者の取り合わせでもある。つまり、一歩間違えれば時代錯誤も甚だしいアナクロに陥るものが、まさに芸術の域に昇華されているわけで、極めてイギリス的な際どさがスリリング。英国の巨匠エードリアン・ボールト( Adrian Boult )は、ヴォーン=ウィリアムズ作品の熱心な紹介者で、多くの作品を取り上げ、4つの交響曲の初演も行うなど、その音楽を世に広めることに大きく貢献していました。ボールト60歳代に録音された DECCA 盤は、パワフルなスタイルが印象的なものでしたが、ボールト70歳代の終わりから80歳代の始めにかけて録音されたこの EMI の録音では、気張った部分や不要な感情移入を否定した、“形”としての立派さが、それぞれの作品に風格を与えているかのような雰囲気の良さが特徴的で、DECCA 盤とは対照的な切り口、泰然として動じない安定感が魅力的です。特に息長く張りのある大柄なフレージングは素晴らしく、風格ある雰囲気が見事に作品に適合した格調高い演奏となっています。1976年発売。
2017年7月16日22時からNTT回線終端装置のAUTHランプが消えている時間が長くなりました。この記事は2017年7月19日22時更新で作成中でした。更新に障害があり内容に不備が残ります。ホルストとの交友で得た作曲技法。一方で、自作や指導の考え方。管楽器を含めていない理由を絡める予定でした。又漢字変換の間違いも残ります。当記事の改訂はありません。
AU EMI OASD3286 エイドリアン・ボールト ウィリアムズ…
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