自然と耳が向かうチャーミングな曲集 ― ノルウェーは14世紀末にデンマークの支配下に入り、1814年にはデンマークからスウェーデンに引き渡され、ナポレオンの部下だったベルナドット将軍(1763年~1844年)により創始されたベルナドッテ王朝の誕生で、1818年にスウェーデン=ノルウェー連合王国の一員と成っていた。しかし、19世紀半ばに欧州最高の名門と謳われたハプスブルク家が統治するオーストリア帝国でハンガリーやボヘミア、北部イタリアなどの諸民族が各々独立への機運を高める様に成ると、北欧にもその影響が波及し、ノルウェーでもスウェーデンからの独立を唱える動きが活発に成って行った。グリーグはこうした時代に、ノルウェー有数の都市、ベルゲンに1843年6月15日生まれた。父方の曾祖父アレクサンダーは1779年にノルウェーに帰化したアバディーンシャー出身のスコットランド人で、姓のグリーグは英語名のGreig(グレッグ)をノルウェー風に改めたものだという。余談ながら、1932年9月25日、トロントに生まれたグレン・グールドの旧姓名は、ゴールド(Gold)で、プロテスタントの家系だあったが、ゴールドという苗字がユダヤ人に多く、当時高まっていた反ユダヤ主義に巻き込まれることを恐れて、グレンの生後まもなく一家はグールドと改姓した。そして、母方の曽祖父のいとこがグリーグです。巨匠パーヴォ・ベルグルンドは、シベリウス専門指揮者のような扱いで特に有名でしたが、実際のレパートリーは幅広く、北欧音楽とは縁のあるヴォーン=ウィリアムズはもちろん、「クラシック名録音究極ガイド」の60番に推されているショスタコーヴィチの一連の交響曲も積極的にとりあげ、見識ある演奏を聴かせていました。スメタナの連作交響詩「我が祖国」全曲、ブラームスの交響曲全集といった作品では、いぶし銀の芸風の持ち主。ベルグルンドは1972年から1979年までイギリスのボーンマス交響楽団の首席指揮者を務めている。その時期の代表的な録音がこの1枚。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドと北欧三国の作曲家を配し、精緻に磨き抜かれた響きでまとめ上げている。まず最初の《朝》での独特の節回しに惹きつけられる。このグリーグも素晴らしく、単なる〝通俗名曲〟とは一線を画する演奏。過度に劇的になることはなく、終始、優しく暖かなサウンド。安心して音楽の中に入ることが出来る。グリーグの劇付随音楽《ペール・ギュント》の2つの組曲の間にアルヴェーンの《夏の徹夜祭》を挟み、普段あまり聴かれないヤルネフェルトの《前奏曲》という小粋な作品も聴けること嬉しいところ。1973年という首席指揮者就任から間もない時期に録音されたこともあってか、ベルグルンドの特徴である精緻に磨かれた響きに清新さが加わって、かけがえのない魅力を放っている。
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Bournemouth Symphony Orchestra, Paavo Berglund – Grieg / Alfvén / Jarnefelt, Peer Gynt Suites 1 & 2 / Swedish Rhapsody No. 1 (Midsummer Watch) / Elegy From Gustav Adolf II / Praeludium
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- グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第1番 作品46 Grieg, Peer Gynt Suite No.1, Op. 46
- 第1曲 朝
- 第2曲 オーゼの死
- 第3曲 アニトラの踊り
- 第4曲 山の魔王の宮殿にて
- アルヴェーン:スウェーデン狂詩曲第1番『夏至の徹夜祭』 Alfvén, Swedish Rhapsody No. 1, Op. 19
- グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第2番 作品55 Grieg, Peer Gynt Suite No.2, Op. 55
- 第1曲 イングリッドの嘆き
- 第2曲 アラビアの踊り
- 第3曲 ペール・ギュントの帰郷
- 第4曲 ソルヴェイグの歌
- アルヴェーン:『グスタフ2世アドルフ』よりエレジー Alfvén, Elegy From "Gustav Adolf II Suite"
- ヤルネフェルト:前奏曲 Järnefelt, Praeludium
- Record Karte
- 1973年6月録音。Engineer [Balance Engineer] – Stuart Eltham, Producer [Recording Producer] – David C. Mottley, 1974 Release
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