10月8日

オンドマルトノの発明で知られる、モーリス・マルトノが没した日
ピョ〜ン、ヒュヨヨヨヨ 恋人たちの国に響き渡る玄妙な音色。小型のオルガンのような形をした〝魂を奏でる電子楽器〟
オンドマルトノとは、小型のオルガンのような形で、旋律を奏でながら音程を自由に変えることができる。鍵盤を弾く奏法と鍵盤の手前に張られた弦をスライドさせて弾く奏法との2種類があり、後者では、チェロのような、人の声のような、暖かみのある音が作り出される。その音は、フランスの音楽美学者ジゼル・ブルレ(Gisèle Brelet, 1915年〜1973年)が「魂を奏でる電子楽器」と評した。言葉で説明すればするほど謎が深まるであろう、この楽器。モーリス・マルトノは電気技師でチェロ奏者でもあった。第一次世界大戦時、電気技師として戦地に派遣された彼は、発明されたばかりの無線の音を聴き、音楽を感じたようだ。「この仕組みを利用して、新しい楽器を作ることができるのではないか」こうして戦場の道具が音楽を奏でる楽器へと生まれ変わる機会となった。
世界で最初の電子楽器 ― 鍵盤楽器の音程と弦楽器の音色を併せ持つ。

鍵盤と弓を備えた演奏部分と、3種のスピーカーで構成されている。セパレートになっている楽器ということで、オーケストラで小太鼓と、大太鼓、シンバル奏者が各奏していたものが戦争のために減った楽団員を補うためにドラムスが発明されたのを思わせる。
鍵盤数は6オクターブ(①)ですが、切り替えで7オクターブの音域になります。鍵盤は固定されておず、本体に吊られていて、鍵盤の手前には一本のリボンが張ってあり、弦楽器の弓のようだ。いや、このリボンにはリングがくぐらされていて、このリングに右手の指を入れてスライドさせて音程を決める。その奏法はスチールギターを思い浮かべればいい。

そしてエレキギターの奏法を思い重ねると、イメージさせやすいのが「トゥッシュ」(②)と呼ばれる音楽の表現を決める〝オンド・マルトノの魔法の箱〟です。ボタンやレバーがあり、左手で操作して音の強弱や長さを表現します。
この「トゥッシュ」の役割は足元の「ペダル」(③)でも操作出来ます。
この「トゥッシュ」の役割は足元の「ペダル」(③)でも操作出来ます。

電気楽器ですから、この操作自体では音は聞こえません。発音にスピーカーを介します。内側に銅鑼が吊るされている「メタリック・スピーカー」(④)。前後に12本の弦が張ってある「パルム・スピーカー」(⑤)はそれぞれ電気の振動で、「銅鑼」と「弦」を共鳴させて、神秘的で金属的な響きとアコースティックな響きを作り出します。こうして生み出された音楽が「プリンシパル・スピーカー」(⑥)から響き渡ります。
「どんな音?」。最高傑作が、この楽器を有名にもしたフランスの現代作曲家オリヴィエ・メシアンの代表作《トゥランガリラ交響曲》だ。
不思議な魅力がある現代作曲家の「愛の歌」 ― メシアン〜《トゥランガリラ交響曲》より第5楽章「星々の血の喜び」
現代音楽は可哀想である。クラシック・ファンを自認する人にさえ、聴かれもせずに「わけの分からない音楽」と、放ったらかしにされる。しかし、日本のオーケストラのコンサートによく行かれる方には、お馴染みの現代音楽があるはず。
一般的にはまだ現代音楽の印象かと思われるが、オリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen 1908〜1992)は20世紀を代表する作曲家、オルガン奏者、鳥類学者であった。メシアンはカソリック信仰に基づいた神秘的な色彩の音楽を書いた。《キリストの昇天》が代表作だが、その一方で愛鳥家の彼が世界を回って鳥の鳴き声を採集し、それを反映した《異国の鳥たち》もよく知られている。
そんなメシアン入門に最適なのが、出世作《トゥランガリラ交響曲》(1948年)である。
「どんな曲?」と思われそうだが、彼の革新的な色の使い方、時間と音楽との関係の概念とバードソングの使い方は、特徴中の特徴といえる音楽だ。今日のような日和の良い午後にぴったり。 トゥランガリラとはサンスクリット語で「愛の歌」の意味で、その第5楽章「星々の血の喜び」は、真の愛情は宇宙の根源でもあるという理念を表している。ここで活躍するピアノが奏でるのは、ガムランのエコーとされる。
そんなメシアン入門に最適なのが、出世作《トゥランガリラ交響曲》(1948年)である。
「どんな曲?」と思われそうだが、彼の革新的な色の使い方、時間と音楽との関係の概念とバードソングの使い方は、特徴中の特徴といえる音楽だ。今日のような日和の良い午後にぴったり。 トゥランガリラとはサンスクリット語で「愛の歌」の意味で、その第5楽章「星々の血の喜び」は、真の愛情は宇宙の根源でもあるという理念を表している。ここで活躍するピアノが奏でるのは、ガムランのエコーとされる。
FR IPG 117.013/014 - Yvonne Loriod, Jeanne Loriod, Maurice Le Roux, Orchestre National De La R.T.F. - Olivier Messiaen - Turangalila Symphonie
メシアンお墨付きの遺産級名盤
オリヴィエ・メシアンの後妻で名ピアニストのイヴォンヌ・ロリオと、彼女の妹で電子楽器オンド・マルトノの第一人者ジャンヌ・ロリオを迎えて収録された、歴史的録音。
メシアンが、ナチス・ドイツ軍の捕囚として捕虜収容所で出会ったギィ・ベルナール=ドラピエール(Guy Bernard-Delapierre)から、1943年から1947年まで自宅を開放されて音楽塾を開くと、ロリオもそこで作曲や楽曲分析を師事する。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を暗譜で弾きこなす神童として将来を嘱望され、パリ音楽院で注目される存在だった彼女は、その技量を以って程なく、メシアンの2台ピアノのための《アーメンの幻影》の初演者として知られる存在を示し、メシアンのピアノ曲は、すべてロリオによって初演された。
ロリオの超絶技巧に触発されて、メシアンのピアノ書法は新たな展開を遂げており、その後の幾多の管弦楽曲や声楽曲のピアノ・パートにロリオの影響力の大きさを認めることが出来る。
ピエール・ブーレーズやセルジュ・ニグ、ジャン・ルイ・マルティネス、モーリス・ル・ルーらとともに、メシアンの活動の一翼を担うこととなった。
メシアンが、ナチス・ドイツ軍の捕囚として捕虜収容所で出会ったギィ・ベルナール=ドラピエール(Guy Bernard-Delapierre)から、1943年から1947年まで自宅を開放されて音楽塾を開くと、ロリオもそこで作曲や楽曲分析を師事する。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を暗譜で弾きこなす神童として将来を嘱望され、パリ音楽院で注目される存在だった彼女は、その技量を以って程なく、メシアンの2台ピアノのための《アーメンの幻影》の初演者として知られる存在を示し、メシアンのピアノ曲は、すべてロリオによって初演された。
ロリオの超絶技巧に触発されて、メシアンのピアノ書法は新たな展開を遂げており、その後の幾多の管弦楽曲や声楽曲のピアノ・パートにロリオの影響力の大きさを認めることが出来る。
ピエール・ブーレーズやセルジュ・ニグ、ジャン・ルイ・マルティネス、モーリス・ル・ルーらとともに、メシアンの活動の一翼を担うこととなった。
プロダクト・ディテール(オリジナル盤)
- レーベルIPG
- 楽曲トゥーランガリラ交響曲
- レコード番号117.013/014
- 作曲家オリヴィエ・メシアン
- 演奏者
- イヴォンヌ・ロリオ=メシアン(ピアノ)
- ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ)
- オーケストラフランス国立放送管弦楽団
- 指揮者モーリス・ル・ルー
- 録音種別STEREO
- 製盤国FR(フランス)盤
- カルテ(交響曲)フランス、ピュトー録音(Recorded in Paris, 11 & 13 October 1961.Supervised By [Direction Artistique] – Claude Samuel, Supervised By [Supervision Artistique] – Olivier Messiaen, Engineer – Pierre Rosenwald)、2枚組。初発は、「VAL.127」メシアンのインタビューが収録された10インチ・モノラル盤が付属していた。
CDはアマゾンで購入できます。
今年2024年は生誕100年。20世紀の最も重要で格調高いアーティストの一人、イヴォンヌ・ロリオが「VEGA」レーベルに残した全録音(1956年〜1963年)に、「Boite a Musique」「Club Francais du Disque」録音をセットした13枚組ボックスが、生誕95年に当たる2019年に、ユニバーサル ミュージック・フランスより発売されています。
イヴォンヌ・ロリオはその特別なメシアンとの関係だけでなく、献身的な教師として、現代作曲家の擁護者として、並外れた広いレパートリーを持つ驚くべきピアニストとしても注目を集めました。
モーツァルトからショパン、シューマン、リスト、アルベニス、そしてデ・ファリャ、ベルク、バラケ、ヴェーベルン、さらにメシアンとブーレーズといった幅広いピアノ・レパートリーが並んでいます。およそ11曲が世界初録音です。
今年2024年は生誕100年。20世紀の最も重要で格調高いアーティストの一人、イヴォンヌ・ロリオが「VEGA」レーベルに残した全録音(1956年〜1963年)に、「Boite a Musique」「Club Francais du Disque」録音をセットした13枚組ボックスが、生誕95年に当たる2019年に、ユニバーサル ミュージック・フランスより発売されています。
イヴォンヌ・ロリオはその特別なメシアンとの関係だけでなく、献身的な教師として、現代作曲家の擁護者として、並外れた広いレパートリーを持つ驚くべきピアニストとしても注目を集めました。
モーツァルトからショパン、シューマン、リスト、アルベニス、そしてデ・ファリャ、ベルク、バラケ、ヴェーベルン、さらにメシアンとブーレーズといった幅広いピアノ・レパートリーが並んでいます。およそ11曲が世界初録音です。
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