10月14日
音楽的ヒーローの一人であり、時には作曲者の意図と対立することも厭わず、人間に対する愛と音楽に対する愛を両立させ。それを、若い人たちにも伝えることを理想とした。
指揮者・バーンスタインが没した日(1990年)。アメリカ人初のニューヨーク・フィルの音楽監督であり、アメリカで生まれ育った史上初の大指揮者でもある。世に出たきっかけも、急病のワルターの代役で急遽ニューヨーク・フィルを指揮し、それがラジオ中継されていたため。これも1つのアメリカン・ドリームだ。彼の音楽界に残した功績はあまりにも大きく、指揮者としては20世紀にカラヤンと世界を二分する存在であり、また作曲家としてはミュージカル《ウエスト・サイド・ストーリー》などを手掛けた。また教育面でも子供のための音楽会や、国際音楽教育祭を札幌で開催し(パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌)、今もなお続いている。DE CBS S72170 - Leonard Bernstein, New York Philharmonic / Columbia Symphony Orchestra– Concerto for Piano And Orchestra - Maurice Ravel / Dmitry Shostakovich
大衆ウケする弾き振り
バロック音楽から、同時代の作品まで、若き日のバーンスタインの求心力は魅力的。 ― 檄速に爽快感を覚える。ショスタコーヴィチを感動させた演奏。1959年8月、レナード・バーンスタインとニューヨーク・フィルハーモニックは約8週間に渡るヨーロッパ・ツアー(1959年8月3日~10月13日)に出かけました。その途次である9月11日、モスクワで演奏されたショスタコーヴィチの「交響曲第5番」は作曲者自身から大絶賛され、このニュースはたちまち全米を駆けめぐりました。
コンサート後、臨席していたショスタコーヴィチがステージに駆け上ってバーンスタインと、仲良く、手を取り合っているジャケット写真の「交響曲第5番」(Columbia Masterworks – MS 6115)は評判がとても良い。
その恣意的なくらいの快速なテンポは心地良く大衆を虜にした。それはスポーツに酔いしれて熱狂するのに似ている。若き日のバーンスタインならではの求心力は魅力的である。スターリンの死後のフルシチョフの雪解け時代、そのチャンスを逃さずアイゼンハワー大統領が推し進めた、音楽の表敬訪問だと、表情をしかめる人も居るだろう。これは東西の間に鉄のカーテンがあった時代のレコードだ。ショスタコーヴィチが、スターリンやソビエト共産党相手に、どれほど恐怖と煩わしさに悩まされたかはさておき、ソビエト連邦といえども、音楽は「権威」よりも「爽快感」を求めた。当時大ヒットし、何年も連続して上映されていたミュージカル映画『ウエストサイド物語』の作曲者だったバーンスタイン ― アメリカン・ドリームを地で行く若くて評判の良い指揮者が、20世紀の陰の部分にはひたすら目を瞑り、彼の評価の根拠にあるミュージカル映画のように分かりやすく興奮度の高い演奏を大衆に提供し、無知な大衆はそのスポーティーさに酔い、アドレナリンを放出した気持ちのいい音楽、クラシックだのミュージカルだのポップスだのジャズだのと、ジャンルは問わず、聴き手をワクワクされる音楽が、いい音楽なのだ。
アメリカの国民的音楽番組では、エルヴィス・プレスリーの腰から下をテレビカメラに写らないようにしたり、ザ・ビートルズが出演した時も発言が注意されたり、ドアーズのヒット曲はマリファナをイメージされるからと歌詞の変更が強要されていた。アメリカでさえ、まだ、そういう時代だ。一人の若い音楽家が指揮台で飛んだり跳ねたりをして見せているのを大人たちはどう観ていただろうか。一種エンタテインメントの対象だった指揮者には、うってつけの役回りだったのであろう。そこにショスタコーヴィチその人は感動したのだろう。当時ショスタコーヴィチは現代の音楽家である。同じ時期のムソルグスキーの《展覧会の絵》の録音では、この時に控えた反動が発奮されている。
《燦めく星座》聴衆とオーケストラとの間に生み出される平和で喜び溢れた音楽。タクトを握らずに大きく広げられた両腕の中に、元気玉が幻出する。若い人たちにもわかりやすくクラシック音楽を聴かせ、綺羅星の如く居並ぶ美しい肢体の名曲のプロポーションを際立たせた魅力的な音楽をつくりだした。
レナード・バーンスタイン(1918〜1990)は、アメリカが生んだ20世紀を代表する大指揮者であり、作曲家、ピアニスト、そして教育者、理論家など、音楽の多方面にわたって優れた業績を残した偉大な「音楽家」。広大で深く、説得力あふれるバーンスタイン渾身のロシア物。演奏そのものは、スポーティーな快感を味わうのにはこの上ない。壮年期のバーンスタインの特色である速いテンポによる演奏ですが、音楽が散漫になる事は全く無く、内容は濃密で、劇的な求心力と推進力を兼ね備えています。このテンポの演奏を作曲者のショスタコーヴィチ自身が絶賛した。ニューヨーク・フィルハーモニックも、バーンスタインの指示に全身全霊を傾けての力演を展開しています。バーンスタインの采配の上手さで、ニューヨーク・フィルの方に演奏をリードさせている。バーンスタインの演奏の魅力は何と云っても作品への強い感情移入とその説得力にある思う。作品への共感に満ちた指揮が、奏者や聴き手を一体感へと導いていくような感じ。本盤も低音パートの強靱な推進力に支えられた快演であり、感動的なフィナーレになだれ込みます。バーンスタインとニューヨーク・フィルという大きな二つの個性が結ばれ、完全にひとつになったからこそなしえた演奏であり、間違いなくバーンスタインの最高峰の演奏であるといえる。録音もブルーノ・ワルター盤同様、米コロムビアの技術の結晶が実を結び素晴らしい。バーンスタインの指揮するニューヨーク・フィルの演奏には、そんな音楽が山ほどある。中でも本盤は、優れたピアニストでもあったバーンスタインを証明する稀有な最良の記録でもある。軽やかなタッチに力強さを湛え、節度を保ちつつも緩急の自在なものである。その演奏は、ジャズにも精通していた彼だからこそできたものだと言えるだろう。
プロダクト・ディテール(ヴィンテージ盤)
- レーベルCBS
- 楽曲
- ピアノ協奏曲ト長調
- ピアノ協奏曲第2番ヘ長調 Op.102
- レコード番号S72170
- 作曲家
- モーリス・ラヴェル
- ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
- 演奏者レナード・バーンスタイン
- オーケストラ
- コロムビア交響楽団
- ニューヨーク・フィルハーモニック
- 指揮者レナード・バーンスタイン
- 録音年月日
- 1958年4月7日
- 1958年1月6日
- 録音場所
- ニューヨーク、コロムビア30番街スタジオ
- ニューヨーク
- 録音種別STEREO
- 製盤国DE(ドイツ)盤
- レーベル世代青一つ目レーベル
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