10月22日

スペイン・カタロニア地方に生まれた今世紀最高のチェリストと呼ばれている、パブロ・カザルス(1876.12.20-1973.10.22)が1889年のある日のこと、スペイン・バルセロナの町を歩いていました。その時に通りにある古本屋に立ち寄りました。その本屋の片隅に埃をかぶったままになっていた楽譜を見つけました。これがあの有名なパブロ・カザルスと大バッハ作曲の「無伴奏チェロ組曲」との偶然の出会いであり、それ以後、後世の音楽愛好家が「チェロの旧約聖書」とまで呼ばれるようになった大バッハの、偉大なチェロ音楽を聴けるようになった出来事でした。カザルスはこの古い楽譜をもとに、「チェロ組曲」を12年間もの間日夜研鑽を重ねて世に公開していったのでした。
あの日、あの時、カザルスがあの古本屋に立ち寄ることがなければ、おそらく永遠にこの「無伴奏チェロ組曲」は埃をかぶったまま本屋の片隅で眠ったまま人々から忘れられた存在となった運命をたどっていたかも知れません。そのパブロ・カザルスは、1973年10月22日にプエルト・リコで96歳の生涯を閉じています。

GB EMI HLM7049/51 - Pablo Casals – J.S.Bach ‎– The Six Cello Suites

― 歴史の中から楽譜を拾い上げ「チェロの旧約聖書」へと育てた男。

372682

人類の至宝

  • 太陽にも大地にもたとえられるのは、平和だなぁと感じさせるから。ゴリゴリした通勤電車から開放されて、職場に駆け込む前日本の20分時間を作って聴いたらどんなに活き活きと一日をやり抜けるだろう。 ― 13歳のときにバルセロナの薄汚い楽譜店でこの無伴奏の楽譜偶然発見、古い昔の練習曲と言われた通りに徹底的に貪りつくまで研究、納得して披露したときは25歳になっていた。その頃にはこの楽譜は単なる練習曲だろうと、チェロ音楽の聖典だろうと夢中になれる音楽だったろう。パブロ・カザルスが初めて全曲をレコードにしたのは、彼は60歳になっていた。少年時代からの思い出で、平和な気持ちになれたことだろう。
  • 確かにテクニックという点では、今のハイテク時代の優秀なチェリストと比べればたどたどしいという感じさえします。録音にしても、今のハイテク時代の優秀なマイクセッティングとエンジニアリングと違い、一体どういうものだったのか、と。音楽の野太さみたいなものは、今の時代が失ってしまった大切な何かを感じずにはいられません。元は SP レコードで発売された録音ですが、SP レコードを LP レコードに復刻される時の原盤によるため、当然針音はしません。マイクや録音技術は現代とは比較になりません。でも、聞き苦しい録音に甘んずるものでしょうか。むしろエンジニア根性に燃えることでしょう。板起こしというのも在る。原盤が残っていないレコードは戦争前の録音では多くありますが、スイスに原盤を保管しているとその限りじゃない。そして、これははっきりしていることですが、やむを得ない市販されていたレコードからの板起こしの場合に針音を除くことは音が良いわけがない。わたしはオリジナル盤を蒐集するという行為は、将来に優れた音盤を引き継ぐことだと考えています。モノラル録音を疑似ステレオ化したものや、サラウンド効果を加えたものは最新の録音や演奏と一緒に楽しむために聴きやすくしてくれる技術でしょう。ゴミや埃も研究材料かもしれないけれども、(ふる)いにかけてしまわなければいけない。カザルスのLPレコードは数多くが、金属マスターからの復刻なので原盤はSP録音だとは思えない音で聴ける。
  • このことがカザルスの《無伴奏》が人類の遺産たる所以でしょう。同時代のフリッツ・クライスラーはカザルスを「史上最高の弓遣いの音楽家」と呼び、ヨーゼフ・シゲティは「弦楽器奏者の中でもおそらく最高の芸術と言えるこの楽器の魔術的魅力」と語り、指揮者のヴィ​​ルヘルム・フルトヴェングラーは「パブロ・カザルスを聴いたことのない者は、弦楽器の音色を全く理解できない」と断言しました。彼のヴィブラートへのアプローチも同様に斬新でした。彼は自在にヴィブラートをかけ、同時代のヴァイオリニスト、クライスラーやジャック・ティボーの革新に匹敵するものでした。この協会盤の成功は、日本からの予約も多く。SPレコード時代に数多くのレコードが聴かれるようになった。ティボーとのブラームスのデュオ協奏曲、ボッケリーニのチェロ協奏曲、ティボー、アルフレッド・コルトーとのメンデルスゾーンとシューマンのピアノ三重奏曲。ベートーヴェンの魔笛の主題による変奏曲、ドヴォルザークの母が教えてくれたうた、リムスキー=コルサコフの熊ん蜂の飛行、シューマンのトロイメライ、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第3番からアリア。ソナタ第2番からアンダンテ。メンデルスゾーンの無言歌、ハイドンのメヌエット、ボッケリーニのアダージョとアレグロ、タルティーニのグラーヴェとエスプレッシーヴォ、ヴィヴァルディのラルゴ、ヴァレンティーニのガヴォット、などなど。チェロ小品の定番的な曲に加え、ピアノ曲やヴァイオリン曲、当時珍しい部類であったろうバロック音楽からの編曲も目立つヴァラエティ豊かなもの。バッハと同時代の音楽への関心をもたせることにも貢献は大きい。演奏はどの曲もヒューマンな温かさと有無をいわさぬ説得力を兼ね備えており、100年近く前の記録が価値を失うどころか、変わらぬ輝きを放っていることに改めて驚かされる。LPレコード時代においても、ダヴィド・オイストラフは、「完璧なイントネーション、指板上の手の自由な動き、そしてどんなボウイングよりも洗練され洗練されている。まさに奇跡だ。こんな演奏は今まで見たことがない」と熱く語った。カザルスの崇拝者は、音楽家にとどまらない。小説家トーマス・マンにとって、彼は「人類の名誉を救うために現れた芸術家の一人」でした。バッハの《無伴奏チェロ協奏曲》を発掘したことだけでなく、パブロ・カザルスという男のチェロ演奏への献身こそ人類の至宝だ。
  • 録音は2番、3番が最初の年、特徴的な1番と6番を挟んで、1936年から39年までの三年をかけた。その意図するところを聴きとって貰いたい。当時単なる練習曲だと思われていたJ.S.バッハの至曲。古本屋で数百年をカザルスとの巡り会いを待っていた。そんなエピソードは、神のいたずらか。それなりに名演奏家で売れるレコードをレコーディングしていたからこそ、LPレコードにして3枚組になるレコードを作る事が出来たわけです。売れると分かっていたから、金属マスターも多く造り残されていたわけですね。今年の流行語大賞で言うところの『べっぴん』。デジタルでも聴き継がれていくのは疑いもないですが、データやボックスでなくバラ三枚のセットとして遺したい。レコード芸術推薦盤。仏ディアパソン・ドール賞受賞。
  • 優秀録音。1936~39年の録音です。ボックス入り。
  1. 3726232
  2. HLM7051

プロダクト・ディテール(ヴィンテージ盤)

  1. レーベル
    EMI
  2. 楽曲
    無伴奏チェロ組曲(第1番~第6番)
  3. レコード番号
    HLM7049/51
  4. 作曲家
    ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
  5. 演奏者
    パブロ・カザルス
  6. 録音種別
    MONO
  7. 製盤国
    GB(イギリス)盤
  8. レーベル世代
    茶色地にニッパーレーベル


CDや伝記本がamazonで購入できます。

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)≪クラシック・マスターズ≫
パブロ・カザルス
ワーナーミュージック・ジャパン
2014-08-20


シューマン:ピアノ三重奏曲(紙)
カザルス・トリオ
EMIミュージック・ジャパン
2003-02-26

PABLO CASALS/ PRADES 1953
PABLO CASALS
INA
2005-03-04

モーツァルト:後期六大交響曲集
カザルス(パブロ)
ソニー・ミュージックレコーズ
1988-10-21


ショップ・インフォメーション(このヴィンテージ盤はショップサイトの扱いがあります。)

  1. 商品番号
    372682
  2. 盤コンディション
    良好です(MINT~NEAR MINT)
  3. ジャケットコンディション
    良好です(ボックスに擦れ、傷みあり)
  4. 価格
    22,000円(税込)
  5. 商品リンク
    https://www.lpshop-b-platte.com/SHOP/372682.html
  6. ショップ名
    輸入クラシックLP専門店 ベーレンプラッテ
  7. ショップ所在地
    〒157-0066 東京都世田谷区成城8-4-21 成城クローチェ11号室
  8. ショップアナウンス
    べーレンプラッテからお客様へ
    当店のレコードは、店主金子やスタッフたちが、おもにヨーロッパに直接出向き、実際の目と耳で厳選した、コンディション優秀な名盤ばかりです。国内で入手したものや、オークション品、委託商品はございませんので、安心してお求めになれます。
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