10月23日
ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ヴェニスに死す」が日本で公開された日(1971年)。原作はトマス・マンの同名の作品。静養のためベニスを訪れた老作曲家は、ふと出会った貴族の血を引く美少年の美しさの虜となっていく姿を描いた。テーマ曲に《マーラーの交響曲第5番・第4楽章》が用いられている。
DE EMI 1C 163-01 997/998 - Sir John Barbirolli, Janet Baker, The New Philharmonia Orchestra London – Mahler – Symphony No.5, 5 Rückert-Lieder
― ジョンの深い読みの解釈がベルリン・フィルの団員を感動させ、一人の指揮者の音楽に対する共感がオーケストラという人間の集団を魔法に包んだ超一流芸術家の貴重な遺産。
マーラー録音のランドマーク
ナイトの爵位を受け、女王から、国民から〝サー・ジョン〟と称号をつけて呼ばれた英国の指揮者、バルビローリ最晩年の、数少ないマーラーの正規スタジオ録音。〝人気のマーラー5番〟の中でも屈指の名演として知られる一枚。同じく名盤として知られるレナード・バーンスタンのような劇的なドラマとは対照的ながら、じっくりとマーラーの耽美的な旋律の美しさを堪能できる、感動的な名演です。「リュッケルト歌曲集」もジャネット・ベーカーの名唱が素晴らしい名演です。
バルビローリにはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の団員から請われて録音したマーラーの第九があります。バルビローリが振るマーラーは、一級のオーディオファイル盤として通用する優秀録音。バルビローリの演奏は情感豊かな演奏とよく言われますが、マーラーに関しては客観的な楽曲の構築と正確なテンポ設定に裏づけされた演奏だと思います。そしてまた、一人の指揮者の音楽に対する共感が、オーケストラという人間の集団を魔法に包んだ奇跡の証明とも思っています。
ジョンの深い読みの解釈がベルリン・フィルの団員を感動させたとも聞いています。正規録音は、1、5、6、9番しか残さなかった。長生きしてマーラー全曲完結してほしかった。
第二次世界大戦中に、40歳代という指揮者としての大活躍が出来ただけに、長生きしてマーラーの交響曲全曲を完結して欲しかった。1943年に帰英後、ハレ管弦楽団の音楽監督に就任するが、戦前の腕達者の楽団員は戦争から帰ってこなかった。どれほどのオーケストラだったといえども指揮者だけでは何もならない。まずはオーケストラの立て直しからがバルビローリの仕事だった。しかし健全な男性奏者は集まりそうにない。バルビローリが前代未聞の女性楽団員を多く募って戦後の新制ハレ管弦楽団を再開する。
「一日16時間の仕事」、「一日1食も珍しくない」といった勤勉ぶりで、技量やアンサンブルは超一流とはいかないがバルビローリ自らが採用したメンバーを含む心あたたまるサウンドは、感興の豊かさ初々しさは段違い。そうした彼の人生の一面。そこで、イタリア人の血とフランス人の血を受け継いでいるバルビローリの音楽は持ち前の甘いカンタービレで聞き手の脳髄を痺れさせる。劇場専門の指揮者の棒からは生まれ得ない音楽作りも大きな魅力である。バルビローリはイタリア系ということもあるし、自身はチェロ奏者ということもあり非常に「歌う」指揮者だ。「歌う」だけでなくそこには大きな「愛」と強い「情熱」がある。そのバルビローリのエピソードとして印象深いのは、第2次世界大戦中、幾多の空襲にイギリスが襲われた際、オーケストラとともに演奏やリハーサルをしていた彼は、オーケストラのメンバーの避難を先導し、全員が避難するのを見届けてから自分が最後に避難したそうである。自分の身の安全ばかりを考えて先に逃げるような人間ではない、まさに「オーケストラは家族」というモットーで愛し「オーケストラの父親的存在」としての役割を実践した彼の姿を知ることができるエピソードである。
バルビローリが振るマーラーは、一級のオーディオファイル盤として通用する優秀録音だ。
バルビローリの魅力は情感豊かな演奏で、マーラーに関しては客観的な楽曲の構築と正確なテンポ設定に裏づけされています。そしてまた、ジョンの深い読みの解釈がベルリン・フィルの団員を感動させ、一人の指揮者の音楽に対する共感がオーケストラという人間の集団を魔法に包んだ奇跡の証明を残されたレコードを聴いて感じるのです。
バルビローリの魅力が一杯詰まった聴きごたえ満載の不滅の名盤に耳傾けてください。
このレコードからも〝いっときも無駄にしないぞ〟と懸命に生き抜いた気合の証左として、随所に「うなり声」が聴こえます。四面には、ジャネット・ベーカーの歌を加えて収録した「リュッケルトの詩による5つの歌曲」。こちらも、余白埋めでは済まされない思いの籠もった歌唱の名演です。
1969年の優秀録音。見開きジャケット入り。
プロダクト・ディテール(ヴィンテージ盤)
- レーベルEMI
- 楽曲
- 交響曲第5番嬰ハ短調
- 5つのリュッケルト歌曲
- レコード番号1C 163-01 997/998
- 作曲家グスタフ・マーラー
- 演奏者ジャネット・ベイカー(メゾ・ソプラノ)
- オーケストラニュー・フィルハーモニア管弦楽団
- 演奏者ジョン・バルビローリ
- 録音年1969
- 録音種別STEREO
- 製盤国DE(ドイツ)盤
- レーベル世代金地にカラースタンプニッパー
CDや伝記本がamazonで購入できます。
CDや伝記本がamazonで購入できます。
ショップ・インフォメーション(このヴィンテージ盤はショップサイトの扱いがあります。)
- 商品番号373323
- 盤コンディション良好です(MINT~NEAR MINT)
- ジャケットコンディション良好です(四辺にわずかな傷みあり)
- 価格13,200円(税込)
- 商品リンクhttps://www.lpshop-b-platte.com/SHOP/373323.html
- ショップ名輸入クラシックLP専門店 ベーレンプラッテ
- ショップ所在地〒157-0066 東京都世田谷区成城8-4-21 成城クローチェ11号室
- ショップアナウンスべーレンプラッテからお客様へ
当店のレコードは、店主金子やスタッフたちが、おもにヨーロッパに直接出向き、実際の目と耳で厳選した、コンディション優秀な名盤ばかりです。国内で入手したものや、オークション品、委託商品はございませんので、安心してお求めになれます。
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