34-19149

商品番号 34-19149

通販レコード→米ダーク・グリーン金文字盤

〝情熱のドヴォルザーク〟 ― 現在普及しているレコード・プレーヤーは、カートリッジに取り付けた針先がレコード盤に刻まれている溝に合わせて振動する動きを電気信号に変換し、パワーアンプで増幅してスピーカーから再生しますが、蓄音機は電気を通して音にしません。1926年に電気蓄音機=電蓄が出てくる前の機器であるクレデンザは蓄音機の最終バージョンと言えるものです。「針の振動をサウンドボックスというメカニズムで直接増幅しているから完全に生音。蓄音機というのは、まさにそれ自体が一つの楽器のようなものなんです」と愛好家らは語ります。天板を開けてSPレコードをセットし、ゼンマイを巻く。レコードのラベルにある曲名は、ドヴォルザークの「ユーモレスク」。外周から少し内側の音溝に針を落とす。「蓄音機を、初めて聴かれる方は音が大きいことに驚かれます」ボタンを押すとすぐに音楽が鳴り出すデジタルと違って少しの間をおいて、ヴァイオリンの豊かな響きが、当時の演奏家の存在を感じさせるように静かな空間に満ちるのを感じます。1941年の戦時の録音ということで流通枚数の少ない貴重な録音であり、名演です。今日数多くのヴァイオリニストのうち、彼ほど正確で円満な技巧を持つ人が幾人いるであろう。そして、ドイツ・ヴァイオリン奏法の伝統を具現するクーレンカンプの演奏は、一種得も言われない朴訥な美しさをさえ感ずるであろう。1941年12月8日には太平洋戦争が始まり、その11日には独伊国が米国に宣戦している。第二次世界大戦である。この時代のドイツの音楽家は全てナチとの関係を問われるという宿命を帯びています。もう一人のドイツ系の大ヴァイオリニストのアドルフ・ブッシュはアメリカに亡命したのですが、クーレンカンプはドイツに残り活動を続けました。アドルフ・ヒトラーが「私の愛好するアーリア人の名手」と呼んで大切にしたという経緯は有りますが、1937年にシューマンのヴァイオリン協奏曲の世界初演と初録音で著名なゲオルク・クーレンカンプ。その少し前に発見されたシューマンのこの晩年の作品を、だれが初演するかで、政治が絡んで争奪戦が繰り広げられ、結局はナチがクーレンカンプにこの曲を初演させ、録音もさせたものであります。クーレンカンプは古典派音楽の名演奏家であるとともに、同時代に作曲された音楽の熱心な紹介者であった。今日我々にとってシベリウスのヴァイオリン協奏曲と云えば名曲であることは誰でも知っているが、シベリウスのポピュラーでないドイツにおいてこの曲を繰り返し演奏して広めたのはクーレンカンプである。彼はこの曲の演奏に多くの場合ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮を得て、ドイツ各地で人々に忘れえぬ感動を与えた。この曲を演奏するにあたり、クーレンカンプはフィンランドに赴き、シベリウス本人に演奏上のアドバイスを受けたそうですから、実に誠実な作品の再現者たらんとしていたことがわかります。またバルトークの協奏曲も非常に高い独奏を認めて盛んに演奏した。ヒンデミット、カール・ヘラー、ドビュッシー、オネゲルのソナタなども得意のレパートリーであった。ドヴォルザークの協奏曲としてはチェロ協奏曲がよくご存じのことだろう。ドヴォルザークの有名な方のチェロ協奏曲ロ短調は1895年54歳の時の作品。この《ヴァイオリン協奏曲op.53》は1879年ドヴォルザーク38歳の時の作品。その頃ようやく国際的に名を知られるようになったドヴォルザークに作曲を勧めたのはヨーゼフ・ヨアヒムであった。ヨアヒムは独奏ヴァイオリンのパートに関し積極的な助言を惜しみなく与え、ドヴォルザークは深い尊敬をもってヨアヒムに原曲を献呈した。第1楽章の最後に、短いカデンァをはさんで切れ目なく第2楽章に続くが、それに気付きにくい。と、この曲の出版に際し、ジムロック社は第1楽章と第2楽章の分離を提案したが、ドヴォルザークは極めて重大な問題として絶対的な反対を表明したという。楽曲は旋律美、音楽的魅力、和声の素晴らしさ、ボヘミヤの郷土的な歌と踊りに満ち溢れ、大いに好評を博して、ヴァイオリン協奏曲の最も優れた作品の一つとして引き続き世界的に愛奏されたが、その反動のせいか、その後一時的に人気が低下した時代もあった。しかし近年、その真価が再確認されるに至った。ヨハンナ・マルツィのソロ、フェレンツ・フリッチャイ指揮の素晴らしい演奏が、当時あまり演奏されていなかったこの曲を復活させ、その後多くのヴィルトゥオーゾが次々と録音しだした。ベルリン・リアス交響楽団のドイツ・グラモフォン盤は1953年発売。クーレンカンプの音は大きくはないが、柔らかく澄んで美しい。技巧は超絶的とはいえないまでも卓抜で、なによりもケレンのない折り目の正しさが気品を高めた。表現はノーブルで、野卑なところはどこを探してもない。その演奏は由緒正しいドイツの貴族のように、誇り高く、優雅。表現感覚が今日とは異なり興味深い。オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でドイツ・テレフンケンに録音した、ここでのドヴォルザークは民族色など払拭してしまったように洗練された楽曲に聴こえる。歯切れの良い発音と美音を武器に、歌いまわしには甘美さが漂う。→コンディション、詳細を確認する
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