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〝これこそ音楽だ〟 ― ハンス=シュミット・イッセルシュテットが絶賛した。麗しきヴァイオリニスト、ローラ・ボベスコ(Lola Bobescu, 1921〜2003)の優美で品格ある演奏は、大向こうを唸らせるテクニック重視の演奏が台頭してきた1960〜70年代にあって、独自の個性として輝いていた。サン=サーンスにおける崩しのない高貴な貴婦人のような佇まいと姿形、正に〝音は人なり〟を代表するような抗し難い魅力を放っている演奏です。第3楽章など、いかにもボベスコ節で、厳しさすら漂うのだからファンならたまらない。インターネットで年間検索数が前年と比べて最も増えた人物や作品を表彰する「Yahoo!検索大賞2019」の発表会が12月4日、東京都内で開かれ、俳優の横浜流星が「今年の顔」として大賞を受賞しましたが、ヴィンテージ・レコードのコレクターが検索する、ヴァイオリニストの名前では、不朽の検索対象の存在。若い人にはなじみの無い名前かもしれません。また、テクニックは完全無欠なのに、心が伝わってこないヴァイオリニストも数多く存在します。ボベスコは長いキャリアを誇り、また日本でもマニアから絶賛され来日もあったにもかかわらず、残された録音は限られたものでした。特に祖国ルーマニアでの録音はルーマニア国営エレクトレコードによる、オンマイクで迫る実存感のあるサウンドが大変な魅力。バッハ、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ、バッハ、モーツァルト、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲にストラヴィンスキーの「イタリア組曲」、ホアキン・ニンの「4人の古いスペイン作曲家の回想」が全てとなる、貴重かつ一級のオーディオファイル盤です。たっぷりとしたヴィヴラートが特徴的な美音と、気品ある表現が魅力的な彼女の演奏は、時代を越えて聴き手の心を捉えることでしょう。ルーマニアのクラヨーヴァ生まれ。指揮者の父親を持ち、幼い頃から音楽の才能を開花。1928年パリに留学、エコールノルマル音楽院を経てパリ音楽院で研鑽を積んだ後、ジョルジェ・エネスクやジャック・ティボーに学び、1937年「ウジェーヌ・イザイ・コンクール』に入賞、本格的な演奏活動を始めました。第二次世界大戦後はベルギーに帰化、フランス、ベルギーといったフランス語圏での活動が主でした。当然レパートリーもフランスものが重要です。国際的に活躍するとともに、教師として後進を指導、またブリュッセル・ゾリステン(後にイザイ弦楽合奏団と改称)を組織し、指揮者と独奏者を務めたことでも知られています。また、1970年代以降は日本でもマニアから絶賛され、1980年に初来日を果たして以降、7回来日し多くのファンを獲得しました。貴婦人のごとき品格と美音で、絶大な人気を誇るボベスコの音楽の特徴は、いかにも女性らしい繊細な音運びと等身大の表現力。本盤においても、彼女は常に媚びを排し、深みを求めている。華やかな技巧を聴かせつつも愛らしさのあるサン=サーンスとなっており、時を超えて聴かれ継がれるべき味わい深い演奏です。
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  • サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 Op.61、序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28、1979年12月ロクサナ・ギベスクによる、ステレオ録音。
  • RUMANIA ELECTRECORD ST-ECE01700 ボベ…
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