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知性と情熱とのバランスがとれた名手を偲ぶ格好の内容となった逸品 ― ヴァイオリンの艶やかな美しさと端正でエレガントなスタイルで人気を博した名手アルテュール・グリュミオー。グリュミオーは20世紀を代表するヴァイオリニストのひとり、あらゆるジャンルにわたってヴァイオリン作品を幅広く演奏・録音した。オランダPHILIPSに大量のレコーディングを残しており、そのどれもが高い水準にあるとされています。そのレパートリーは、バッハやヴィヴァルディといったバロック音楽の作曲家をはじめとして、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスといった古典派やロマン派の協奏曲やソナタ、ヴィオッティの協奏曲、パガニーニの超絶技巧協奏曲や、その他の協奏作品、フランクやフォーレのソナタといった近代以降の定番やヴュータンのようなお国ものに加えて、ベルクやストラヴィンスキーのような20世紀の音楽までに及んでいる。ヒューマンな心の歌を奏でるのをモットーとしていたグリュミオーのレパートリーの中核にあったベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、ソナタ、三重奏曲は名盤です。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲はエドゥアルト・ファン・ベイヌム&コンセルトヘボウ管弦楽団とのモノラル録音(1957)、アルチュール・ガリエラ&ニュー・フィルハーモニア管弦楽団とのステレオ録音(1966年)、コリン・デイヴィス&アムステルダム・コンセルトヘボウ管とのステレオ録音(1974年)がありました。本盤は第2回目になる1966年のもの。録音時45歳、いっそう熟した名ヴァイオリニストの至芸が光る1枚。3回ある録音のうちで、ベートーヴェンらしいのは最初のモノラル録音で、2回目、3回目のステレオ録音になるとベートーヴェンから厳しさではなく曲自体の持つ美しさをなんとか引き出してやろうという傾向に移っている。ベートーヴェンの美質は、モーツァルトの天から降り注ぐみたいな美しさとは違う、もっと地に足がついた的な美しさだけど。交響曲第7番に代表されるような、気持ちのいいリズム感は独擅場だ。合わせて鼻歌でも歌いたくなる気持ち良いノリの良さもベートーヴェンの独壇場で、歌心いっぱいで優しさあふれたベートーヴェンのもう一面が最大限に強調された録音は、最後のデイヴィスとのものだろう。この曲でも、ヴァイオリンの音色の美しさが随所で強調されているし、香華を放つフランコ・ベルギー派演奏として、数ある同曲録音盤の中でも独特のステイタスを主張したもの。アナログ完成期のPHILIPSによるコンセルトヘボウ大ホールでのセッション・レコーディングの素晴らしさはすでに広く浸透しているところですが、このロンドン録音の上質なサウンドには天国にいるような陶酔感に浸れます。カデンツァでの噎せ返る様なパッセージも印象的ですが、ガリエラの指揮も実に雄弁でニュー・フィルハーモニア管もコンセルトヘボウ管に見劣りしない。ここでは彼の芸風の絶頂を聴く思いがする、知性と情熱とのバランスがとれた名手を偲ぶ格好の内容となった逸品。演奏の技術・精度が高く、ガリエラ指揮の大編成のオーケストラと堂々と渡り合う力量を誇示しつつ、伴奏の面々を睥睨するようなヴァイオリンは全楽章同じように筋の通った演奏。特にモーツァルトの演奏には定評がありましたが、ベートーヴェンも同じウィーンの古典派、グリュミオーの滑らかなボウイング、ヴィヴラートがよくマッチしている。グリュミオーは銘器ストラディヴァリウスの甘美な音色を充分に際立たせベートーヴェンの内に秘めたパトスを引き出すかのように繊細で優美な音楽を紡いでいます。典雅な雰囲気なのですが、決して上っ面的ではなく毅然さが保たれているのは流石と言うべきでしょう。最新研究に基いている最近の録音でなく、もっぱらベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を理解する助けとして演奏を比較する時のリファレンスとして、長く付き合うことになったレコードです。
アルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux, 1921年3月21日〜1986年10月16日)はベルギーのヴァイオリニスト。ヴィレール・ペルワン(Villers-Perwin、ワロン地域のエノー州)で生まれた。労働者階級の出身だが、祖父の奨めにより4歳でヴァイオリンを学び、6歳でシャルルロワ音楽院に入り、11歳になるまでにシャルルロワ音楽学校のヴァイオリン科とピアノ科の両方で首席をとった。1933年ブリュッセル音楽院に進み、名教師アルフレッド・デュボワに師事。デュボアはウジューヌ・イザイの弟子にあたり、グリュミオーはまさにベルギーのヴァイオリン演奏伝統を一身に受け継いだ訳です。1949年にはグリュミオー自身も、そのブリュッセル王立音楽院のヴァイオリン科で教鞭を執った。パリに留学してジョルジュ・エネスコに入門もして、早くからその才能は認められました。第2次世界大戦中は、ナチス・ドイツ占領下のベルギーで室内楽の演奏旅行を行なった。戦争でデビューは戦後になったが、その美しい音色と華やかで流麗な芸風は“ジャック・ティボーの再来”と言われ、戦後になってからソリストとしての名声がうなぎ上りとなり、とりわけピアニストのクララ・ハスキルをパートナーに迎えて行なった演奏活動は「黄金のデュオ」と評された。実演に、LPレコードに活躍しましたが1960年にハスキルが急死してからは、一個人としても演奏家としても虚脱感に見舞われている。ハスキルの没後、約20年間モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを録音することはなかった。1961年には来日も果たしています。グリュミオーは音楽界への貢献が認められ、1973年に国王ボードゥアン1世により男爵に叙爵された。その後も持病の糖尿病に苦しめられながらヴァイオリンの指導を続けたが、1986年に心臓発作によりブリュッセルにて他界した。愛用したヴァイオリンは、グァルネリ・デル・ジェス:1744年製「Rose」。ストラディヴァリウス:1715年製「ティティアン(”Titian”)」、1727年製の「エクス=ジェネラル・デュポン(“Ex-General Dupont”)」も所有。ジャン=バティスト・ヴィヨーム:1866年製は「エクス=グリュミオー」として知られ、現在はジェニファー・コウが所有している。肩当ては、ドイツのGEWA社のModell ll を使用していた。
ヨーロッパ屈指の家電&オーディオメーカーであり、名門王立コンセルトヘボウ管弦楽団の名演をはじめ、多くの優秀録音で知られる、フィリップス・レーベルにはクララ・ハスキルやアルテュール・グリュミオー、パブロ・カザルスそして、いまだクラシック音楽ファン以外でもファンの多い、「四季」であまりにも有名なイタリアのイ・ムジチ合奏団らの日本人にとってクラシック音楽のレコードで聴く名演奏家が犇めき合っている。英グラモフォンや英DECCAより創設は1950年と後発だが、オランダの巨大企業フィリップスが後ろ盾にある音楽部門です。ミュージック・カセットやCDを開発普及させた業績は偉大、1950年代はアメリカのコロムビア・レコードのイギリス支社が供給した。そこで1950年から1960年にかけてのレコードには、米COLUMBIAの録音も多い。1957年5月27~28日に初のステレオ録音をアムステルダムにて行い、それが発売されると評価を決定づけた。英DECCAの華やかな印象に対して蘭フィリップスは上品なイメージがあった。
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、ロマンス第1番・第2番
グリュミオー(アルテュール)
ユニバーサル ミュージック クラシック
2011-11-02

1967年7月ロンドンでのステレオ録音。
NL  PHIL  SAL3616 アルテュール・グリュミオー ベー…
NL  PHIL  SAL3616 アルテュール・グリュミオー ベー…