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GB World Record Club S/5165 ダニエル・バレンボイム ベートーヴェン・ピアノソナタ

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《華麗ではないが、多様をきわめるテクニック。 ― 崇高なまでの詩情と壮大な構築は、24歳という若い年輪をすっかり忘れさせてしまった。》シュナーベル記念のベートーヴェン・メダルを受けたというだけに、バレンボイムは、ベートーヴェンに特に自信を持っているのだろう。若いに似合わず、なかなかしゃれた味を出している(門馬直美) ― 近年は指揮活動が中心となっているバレンボイムが、ピアニストとして充実した活動をしていた時期に録音した1枚。「トリスタンを振らせたらダニエルが一番だよ」とズービン・メータが賞賛しているが、東洋人である日本人もうねる色気を感じるはずだろう。だが、どうも日本人がクラシック音楽を聞く時にはドイツ的な演奏への純血主義的観念と偏見が邪魔をしているように思える。ベートーヴェンは固定的な印象を譜面に残していない。同じ譜面を演奏して個性の出る曲こそ、クラシック音楽を楽しむ魅力だ。ベートーヴェンの恋愛を追想できる、チャーミングな3曲が並んでいる。初期、中期、後期の扉を開く意気込みも感じる。第4番は、「作品2」として第1番~第3番が出版されたベートーヴェンの、ピアニストとして、作曲家としての、より大きな意気込みが感じられる楽曲。彼のピアノの弟子でもあったケグレビッチ伯爵令嬢バルバラに献呈され、その充実した響きと色彩感に魅了された人々は、この曲を『愛する女 Die Verliebte 』と呼んでいたそうです。ベートーヴェンとバルバラ嬢が恋愛関係にあったという説もありますが、正確な根拠はありません。アルバムの中核は第28番。1816年に作曲。まさに孤高の境地に達するベートーヴェン後期のスタイルを持った最初のピアノ・ソナタです。3楽章構成で、第1楽章のきわめて自由な形式の中で漂う夢のような美しい音楽が必見。第2楽章は三部形式の行進曲風幻想曲、第3楽章は弱音ペダルによる寂寥感をたたえた序奏を経て堂々としたソナタ形式で展開します。最後の第25番は、『テレーゼ』と同時期に作曲された小さなソナタ。ピアノ学習者は比較的初期の段階で必ず通る楽曲で、第1楽章にカッコーの鳴き声が聞こえることから『カッコー・ソナタ』とも呼ばれています。3楽章を通しても10分以内。洗練された美しさをたたえた佳曲です。ベートーヴェンの創作活動において、ピアノ・ソナタは最も重要なジャンルの一つ。19世紀前半におけるピアノという楽器の発展の中で、彼はピアノ音楽の新しい表現方法を追求しました。“ピアノの新約聖書”と称される32曲のピアノ・ソナタは、ピアニストのみならず、ピアノに関わる全ての人間にとって避けて通ることができない、今なお燦然と輝く存在です。この作曲家が新たな音楽世界をどんどん切り開いていく様子が伝わってきます。それは、まさにロマン派への扉です。さらに、改めて認識するのは、ベートーヴェンが優れたメロディーメーカーであったこと。全曲、美しい旋律と豊かなハーモニーが堪能できます。バレンボイムはアルゼンチンというスペイン語圏から出て、コスモポリタンとなり、大ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタインからも強い影響を受けたピアニストです。1942年、ブエノスアイレスでロシア系ユダヤ人の家系に生まれる。ビートルズと同世代で、フルトヴェングラーのシューベルト《グレート交響曲》の各楽章が片面に収まったレコードが登場して話題になっている。彼こそロックとLPレコード時代の演奏家だ。7歳でピアニストとしてデビューしたバレンボイムの演奏を聴いた指揮者、マルケヴィッチは『ピアノの腕は素晴らしいが、弾き方は指揮者の素質を示している』と看破。52年、一家はイスラエルへ移住するが、その途上ザルツブルクに滞在しフルトヴェングラーから紹介状“バレンボイムの登場は事件だ”をもらう。エドウィン・フィッシャーのモーツァルト弾き振りに感銘し、オーケストラを掌握するため指揮を学ぶようアドヴァイスされた。65年、イギリス室内管弦楽団とのモーツァルトの弾き振りのモーツァルト全曲演奏で評価を確立。若き日のバレンボイムの情感豊かでメリハリとパンチの効いたピアノ、透明感のある響きが美しく、すっきりとした仕上がりとなっている。ジャクリーヌ・デュ・プレ、その天才的チェリストとの出会いは66年12月、フー・ツォン宅にて。夜通し室内楽演奏に興じて意気投合、数カ月後には結婚を決意していた。ユダヤ教への改宗は“偉大な音楽家の多くはユダヤ人”との事実から彼女が望んだことだった。1966年から1969年にかけてという時期をジャクリーヌ・デュ・プレと共に、苦悩したものがベートーヴェンの後期の作品の録音とシンクロするものがあったのでしょう。『近年の教育と作曲からはハーモニーの概念が欠落し、テンポについての誤解が蔓延している。スコア上のメトロノーム指示はアイディアであり演奏速度を命じるものではない。』と警鐘し、『スピノザ、アリストテレスなど、音楽以外の書物は思考を深めてくれる』と奨めている。バレンボイムの演奏の特色として顕著なのはテンポだ。アンダンテがアダージョに思えるほど引き伸ばされる。悪く言えば間延びしている。そのドイツ的重厚さが、単調で愚鈍な印象に映るのだ。その反動のように終楽章の破綻を恐れないおもいっきりの良さ。血の気の多さ、緊迫感のようなものが伝わってくる背筋にぞっとくるような迫力があります。この、若い時のレコードでも変わらないところで、このロマンティックな演奏にこそバレンボイムを聴く面白さがあるのです。
GB WRC S/5165 ダニエル・バレンボイム ベートーヴェン・…
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