34-22321

商品番号 34-22321

通販レコード→英ピンク黒文字盤

最後には花火の打ち上げ音が入っている ― レコーディングの時にはオーケストラの前にはダミーの指揮者を置いて行った強者。1940年公開の米アニメーション『ファンタジア』では準備に3年間かけて、9チャンネルのマルチ・ステレオ録音という恐るべきことをやった、SPレコード時代から革新的だったレオポルト・ストコフスキの演奏だが、派手であり、楽しくあり、音の洪水である。《王宮の花火の音楽》は1748年にオーストリア継承戦争終結のために開かれたアーヘンの和議を祝う祝典のための曲。ヘンデル自身は弦楽器を使うことを強く主張したので、現在では本意を汲んでの演奏も広くされているが、初演では、当時のイギリス国王ジョージ2世の意向により、勇壮な響きを出すため管楽器と打楽器のみが使われた。《水上の音楽》は、1714年にハノーファー選帝侯がイギリス王ジョージ1世として迎えられることになり、テムズ川での王の舟遊びの際にこの曲を演奏した。後、1736年にプリンス・オブ・ウェールズの妃に決まったオーガスタを迎えるための舟遊びが催され、その度に作曲、演奏された《水上の音楽》が3つの組曲にまとめられて新ヘンデル作品全集に収められている。オリジナルの管弦楽曲は一旦遺失したが、1723年ごろに11曲のパート譜が出版され、1743年には26曲チェンバロ編曲版が出版されていたので、これらを元に管弦楽に復元したものが今日演奏されている。この曲のイベントらしさを、より一層演出したのか、小太鼓がどれよりも活躍し、色彩が豊かで、テムズ川の水の藍、そして空の青がオーケストラのカラフルな音色に映えるようだ。新ヘンデル作品全集で第1組曲の後半に置かれている《メヌエット》ではじめて、第2組曲からの《アラ・ホーンパイプ》を選んで終曲に持ってきている独創的なストコフスキー版。そして、《水上の音楽》の顔と言える「序曲」は選んでいない。それに併せて緩急も原典版にこだわらず自在だ。同時期にデッカで発売されたチャイコフスキーの『くるみ割り人形組曲』との組み合わせだった、カラヤン独自のバージョンとなったグリーグの『ペール・ギュント組曲』だったり、『カルメン組曲』でも指揮者が独自にチョイスした曲でLPレコード向けにプログラムすることが多い時期の事だった。現代ではなかなか聴くことのできない、大編成による豪華なヘンデル。楽譜にない楽器を加えたり、音を盛ったりたいそうな〝音の魔術師ストコフスキー〟の偉大にして華麗な異業。ニューヨーク・フィルハーモニックを振ったモノラル盤は、ハーティ編を使っているようですが、新たにステレオ録音を行うに際して、ストコフスキーはその効果が発揮されるためにこのストコフスキー版を編んだのだと思います。《王宮の花火の音楽》の「序曲」ではじめて、「歓喜」でクライマックスを作り、華やかに花火が轟く。興奮冷めやらぬ祝福の中、水上では王の船遊びがスタートする映像が浮かぶようなレコードでの再現を演出しているよう。リズミックな響きと流麗なそれのバランスがよく取れたナンバー配置と、それに応じた演奏が、初期のステレオ・サウンドの楽しさを充分に伝えてくれます。形式にこだわらずに音楽の輝きを大胆に表現する指揮ぶりは実にユニークな存在感を現在でも放っています。近頃は放送されていないようですが、一時期NHKの深夜の放送休止中の映像と音楽で、ヘンデルの2曲からの数曲を聞かせながらテムズ川の風物と思われる映像を見せ、花火が打ち上げられてそれをいい笑顔で見上げている少年が印象深かったもので、誰の演奏かわからず聴き漁っていた時に巡りあったのが本盤。《王宮の花火の音楽》の最後には花火の打ち上げ音が入っているなど、ストコフスキー節全開ですが、モダン楽器の大編成によるゴージャスな演奏が楽しめます。元来は野外演奏用の大編成を前提とした曲ですから、ヘンデルの意思をくみ取ったものとも言え、理屈抜きに楽しい一枚です。《水上の音楽》をメインに入れ替えられた再発盤や、花火の打ち上げ音がないバージョンがありますが、初版は「LIVING STEREO」(LSC-2612)として1962年発売されている。余談ながら、フィラデルフィア管弦楽団であっても〝ストコフスキーの交響楽団〟と表記されることがありますが、RCAビクター交響楽団の実態は本盤ではシカゴ交響楽団の演奏だということです。「LIVING STEREO」でシカゴ響を明記するのに大人の事情があったのでしょうか。
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さて、戦前の日本におけるストコフスキーの代表盤と言えば、ドヴォルザークの交響曲「新世界」とリストの「ハンガリアン・ラプソディ」でしょう。1937年に製作された映画「オーケストラの少女」でも使われました。この映画の大ヒットのおかげで、それまでクラシック音楽に縁のなかった多くの大衆が、その楽しさに開眼したそうです。当時の日本のレコード店には、それまで流行歌しか聞かなかったような半纏姿の丁稚さんが、このレコードを買いに押しかけて来たそうです。レオポルド・ストコフスキー(Leopold Stokowski)は老いを知らない、まるで逆に年をとっているのではないかと思われるほど、いつまでも若さを失わない指揮者である。あの見事な銀髪、ギリシャ彫刻を思わせるような、彫りの深い芸術的な顔。指揮棒をすて、しなやかな10本の指から創りだされる表情豊かな音楽。彼は言葉では表現できないふしぎな魅力をもった指揮者である。1882年、ポーランド人を父に、アイルランドの移民を母としてロンドンに生れた彼は、オルガニストとして音楽の第一歩を踏みだした。13歳で王立音楽大学に入学。1902年、ピカデリーの聖ジェームズ教会のオルガニスト、聖歌隊指揮者となり、1903年にはオックスフォード大学クイーンズ・カレッジで音楽学士号を取得。1905年アメリカに渡りニューヨークの聖バーソロミュー教会でオルガンを弾いていたが、夏の間はヨーロッパで研究を続けていた。1909年、パリで急病の指揮者の代わりに指揮をしてデビュー。その成功がきっかけで、シンシナティ交響楽団の常任指揮者に就任。ごく短期間のうちにその実力を相当な高みにまで引き上げた。そしてその腕が買われ、1913年、弱冠31歳でフィラデルフィア管弦楽団の常任に迎えられた。それから24年間 ― 1912年から1940年まで常任指揮者として同楽団を世界最高水準のオーケストラに育て上げたのである。その後、ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団、ヒューストン交響楽団の指揮者をつとめ、その後みずから、全米青少年管弦楽団(1940年)、ニューヨーク市交響楽団(1944年)、ハリウッドボール交響楽団(1945年)、アメリカ交響楽団(1962年)を次々に結成し、その育成に心血をそそぐことでアメリカの交響楽運動の第一線にたち続けた。ストコフスキーは20世紀における個性的な指揮者の一人で、主にアメリカで活動した。SP時代に初めてブラームス全集を出したり、映画音楽を数多く録音したり、とにかく自由奔放に活動した。レパートリーは格段に広い。20世紀のアメリカの、いや世界の大衆にバッハ音楽を紹介した最大の功労者と言ってよい。1941年、フィラデルフィア管との戦前最後の演奏会がヨハン・ゼバスチャン・バッハの《マタイ受難曲》であったということが示すように、ストコフスキーにとってバッハの音楽は常に大切なよりどころでもあった。オルガニスト、音楽学者として活躍した20世紀初頭に、ロンドンとオックスフォードでイギリスのバッハ復興運動の第一線にいた経験が、まさに彼のルーツであり、大管弦楽のための数多くのバッハ編曲も、そうした背景から理解できる。一方で1971年までに指揮した7,000回の演奏会のうち、新作の初演はじつに2,000回に及ぶなど、現代音楽の紹介者としての功績も忘れてはならない。その音楽に対する情熱とスケールの大きさには驚かされる。どんな曲でも新鮮な刺戟的な演奏をし、たとえばホルンに強烈なビブラートをかけるのも特徴的で、さらに弦に関しては耽美的、神秘的な響きである。〝ストコフスキー・サウンド〟とか、〝音の魔術師〟と呼ばれた、それはまったく「怪物」という印象であった。
  • Record Karte
  • Leopold Stokowski Conducting The RCA Victor Symphony ‎– Handel, Royal Fireworks Musick / Water Musick
    • Side-A Royal Fireworks Music (20:58)
      1. Overture: Grave, Andante Allegro Lentement, Andante Allegro
      2. Bouree: Allegro
      3. La Paix: Largo All Siciliana
      4. La Rejouissance: Allegro
      5. Menuet 1 And 2: Andante
    • Side-B Water Music (22:50)
      1. Menuet ‎– 第1組曲 ヘ長調 HWV 348 第6曲
      2. Andante ‎– 第1組曲 ヘ長調 HWV 348 第4曲
      3. Allegro ‎– 第1組曲 ヘ長調 HWV 348 第3曲
      4. Adagio E Staccato ‎– 第1組曲 ヘ長調 HWV 348 第2曲
      5. Bourree ‎– 第1組曲 ヘ長調 HWV 348 第7曲
      6. Hornpipe ‎– 第1組曲 ヘ長調 HWV 348 第8曲
      7. Air ‎– 第1組曲 ヘ長調 HWV 348 第5曲
      8. Alla Hornpipe ‎– 第2組曲 ニ長調 HWV 349 第2曲
    1961年4月17日録音、Engineer – Robert Simpson, Producer – Peter Dellheim
  • GB RCA VICS1513 ストコフスキー ヘンデル・王宮の花火…
  • GB RCA VICS1513 ストコフスキー ヘンデル・王宮の花火…
ヘンデル/水上の音楽&王宮の花火の音楽
RCAビクター交響楽団
BMGメディアジャパン
1998-12-16